伝説のアーケードゲーム『クレイジー・クライマー』の開発者・藤原茂樹氏に聞く 第3回

伝説のアーケードゲーム『クレイジー・クライマー』の開発者・藤原茂樹氏に聞く 第3回  IGCC

「ニチブツの代表作でもある『クレイジー・クライマー』の開発者、藤原茂樹氏に聞く」

最終回となる今回は、アーケードゲームからファミコンへの移植、そして自身を「企画家」と自負する藤原氏の今後の活動についてお聞きしました。枯渇しない創造力、そして情熱はどこから生まれてくるのか、クリエイター藤原氏の原点を探ります。

本人も「使えるわけがない」と思ったファミコン版の専用コントローラー

伝説のアーケードゲーム『クレイジー・クライマー』の開発者・藤原茂樹氏に聞く 第3回  IGCC
▲十字ボタンにかぶせるタイプのファミコン版の専用コントローラ

編集部 アーケード版以外の『クレイジー・クライマー』には関われていないのでしょうか?

藤原氏 ファミコン版に関わっています。専用のスティックがありましたよね。あれを考えたのは私です。

大堀 ファミコンの2つのコントローラーの上に専用のスティックをかぶせて、左手に1コントローラー、右手に2コントローラーをしかも縦向きに持って操作するものですよね?

藤原氏 ファミコンのレバーは十字ボタンしかないのだから、2つのコントローラーを縦向きにして使うしかないと。でも、こんなものを誰がやるのかという話になって。私も正直、こんなものは操作できないと思っていました。( 笑)

編集部 考案したご本人ができないと思ったんですね。

藤原氏 当時、専用コントローラーは作ってみたけれど、これを出すべきか、出さないかということで、営業と議論をしていたんです。自分たちもうまく操作できないのに、こんなものを誰がやるのかって。でも、買うのは子どもだから、一度試してみようということになって、デパートのファミコンゲームの大会で展示してみました。そこで私たちの考えていたことが吹っ飛びましたね。

子どもが「ピッピッピッ」とやって「ポッポッポッ」と2つのコントローラーを操りながら上手にビルを上がっていくんです。

大堀 それで発売にゴーサインが出たわけですね。

藤原氏 そうです。2つのコントローラーを左右別々の手に握っているので、人間の意識はどちらの手だけにいってしまうだろうから絶対に操作できないって思っていたけど、子どもの対応力はやっぱりすごいとなって感服しましたね。

ゼロから物を生み出す活動を今後も続けていく

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▲これからの活動について語る藤原氏

編集部 最後に、藤原さんの現在のお話を少し聞かせていただいてもよろしいでしょうか?

藤原氏 私はいまだに現役で企画書も仕様書も書いています。ただ、最近はゲーム以外のコンテンツをやることが多くなっていて、ゲームは卒業気味ですね。

またゲームの方をやろうとすると、どうしても自分の終わりを考えたときに、あと何本作ることができるのかというのが問題になってきます。今のゲームはボリュームが大きいので、もし私があと4~5年で終わると考えた場合、せいぜい1本、2本できるかなという気持ちになってしまうではないですか。

でも、根幹のコンセプトだけを自分が担当するとすれば、年間12本ぐらい作る自信はあるので、だったらそちらにしようかと思っています。根幹コンセプトの制作を望む人も多かったので、会社名をゼロイチに変えたのです。ゼロから物を生み出すという意味でね。

私が担当した『アイカツ!』もそうです。根幹のコンセプトを担当したんですが、当時、すでにタカラトミーから 『プリティーリズム』というものが出ていて、確固たる市場を築いていました。

『プリキュア』を卒業した人たちが全員あちらに持っていかれます。それで「うちには『プリキュア』はあるけれども、『プリキュア』 の上の世代向けがないので、あれに勝ちたい」と話を持ってこられたのです。あれ(『プリティーリズム』)を倒せばいいのだというほうが燃えます。

過去を振り返らない、その先にあるものだけを見つめる

大堀 そのような情熱はどこから生まれてくるのでしょうか?
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▲大堀所長(左)と藤原氏(右)

 

藤原氏 それこそアーケードで培った部分だと思っています。「自分が新しい機械を作ったら、店にある6台のうち1台をどかさないと自分の機械の居場所はない」と言われ続けてきました。そこには、勝つことしかなかったのです。

アーケードが面白かったのは、宣伝でも何でもなくて、切った張ったの世界だったということです。相手が1万円入っていたら、こちらは2万円入っていたら「勝ち」となるわけです。それがコンシューマーとの違いです。だから、私にとって「やった、やられた」というほうがよく分かるんです。どのゲームに負けたということもはっきり覚えています。

大堀 アーケードゲームの制作経験がある開発者にはそういう強みがありますね。

藤原氏 今日は皆さんに、過去の思い出話をしていますが、正直にいうとクリエイターとしては先のことしか考えてなくて、過去のことはどうでもいいんです。やっていた当時は熱かったけれども、もう僕にとっては終わったことです。でも、それがあるからこそ今の自分があるのもまた事実ですけどね。


伝説のアーケードゲーム『クレイジー・クライマー』の開発者・藤原茂樹氏に聞く 第3回  IGCC
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名作『クレイジー・クライマー』が生まれたきっかけや製作者しか知りえない面白エピソードまで、開発者・藤原氏が明かす『クレイジー・クライマー』の制作秘話は、電子書籍『ビデオゲーム・アーカイブス VOL 1 クレイジー・クライマー』で詳しくご覧いただけます。一般には公開されていなかったオペレーター用の設定資料や海外向けの販促資料も掲載しています。Amazonより定価500円(Kindle Unlimited対象)で好評発売中。

子供時代に『クレイジー・クライマー』にどっぷりとハマったファンの方や、ファンでなくともこの記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひご一読ください!

 

紹介したゲーム:クレイジー・クライマー

1980年に日本物産から発売されたアーケードゲーム。ツインレバーで右手と左手を操作し、様々な障害を乗り越え超高層ビルの屋上を目指して登っていくゲームで、当時としては斬新なツインレバーと縦スクロールで人気を博した。

©HAMSTER Co.

伝説のアーケードゲーム『クレイジー・クライマー』の開発者・藤原茂樹氏に聞く 第3回  IGCC

インタビューした方:(株)ゼロイチ代表取締役 藤原茂樹氏

日本物産株式会社でデザイナーとして『ムーンクレスタ』『クレイジー・クライマー』に、企画兼デザイナーとして『マグマックス』『テラクレスタ』『コスモポリスギャリバン』をはじめ数々のヒット作に携わる。ハドソンに移籍後『ボンバーマン』シリーズ等にかかわる。その後、『ビーダマン』『ベイブレード』の企画開発、『アイカツ!』『マジンボーン』の企画原案協力等。藤子・F・不二雄のアシスタント経験者という顔も持つ。現・株式会社ゼロイチ代表取締役。