優しさと易しさが魅力の『ぶたさん』は当時のゲーセンで癒やしの存在だった

優しさと易しさが魅力の『ぶたさん』は当時のゲーセンで癒やしの存在だった  IGCC

1987年に、当時のアーケードゲームとしてはなんとも異質なゲームがジャレコ※1ジャレコ : 1980~90年代にかけて、業務用や家庭用ゲームで活躍していたゲームメーカー。からリリースされた。この頃といえば、ゲーム基盤の高性能化がすでに始まっており、各社とも多色表示で細かく描いたグラフィックや画面を埋め尽くすスプライトの描画、サンプリング音を多用した派手な楽曲を競っていた。ところが、それの真逆を行くようなシンプルなグラフィックと楽曲がむしろ目を引いたゲームが、今回紹介する『ぶたさん』だ。

本作を開発したのも、当時ジャレコ製ゲームを多く手掛けていたNMK※2NMK : 開発会社としてジャレコブランドのゲームを数多く手掛けた。1990年代は自社ブランドでもゲームをリリース。。当時のジャレコは社長の方針で、超高難易度のゲームばかりをリリースしていたのだが、本作は「ジャレコ、一体何があった?」と思ってしまうほどの優しさと易しさに溢れたゲームだった。筆者も、さまざまなゲームでの戦闘に身も心も疲れてきたときは本作にコインを投入して、ホッと一息ついたものだった。
ここではそんな癒やし系アクションゲーム『ぶたさん』について紹介しようと思う。

ライバル100匹をやっつけて、ぶたの世界の頂点を目指すのだ

優しさと易しさが魅力の『ぶたさん』は当時のゲーセンで癒やしの存在だった  IGCC
▲爆弾を投げあって生き残ればOKというシンプルなルール

『ぶたさん』は固定画面のアクションゲームだ。ゲームの目的は100匹のライバルぶたさんたちを制してトップになること。全12ラウンドでエンディングとなる。

操作はいたって簡単で、レバーで主人公のぶたさんを8方向に動かし、2つのボタンでアクションを行う。「投げ&叩きボタン」は、爆弾を持っていれば爆弾を投げ、持っていないときはライバルを叩いて足止めさせる。爆弾投げでは、ボタンを押す長さで飛距離をある程度コントロールすることができる。「伏せボタン」は飛んできた爆弾を伏せて避けることに使用する。爆弾を持っている状態で伏せると、その場で爆弾を手放すことになるので、任意の場所に爆弾を設置するということも可能だ。

地面の爆弾は触れると自動的に拾うことができる。爆弾には数字が表示されているのだが、これは爆発するまでの残り時間を表している。拾った瞬間からカウントダウンが始まり、0になると爆発する時限式爆弾だ。ゲームに慣れないうちは運任せで爆弾を投げがちだが、慣れてくると残り時間を計算しながら投げたり置いたりすることで、効率的にライバルをやっつけられるようになるだろう

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▲制限時間内に高得点のライバルぶたさんをどれだけ叩けるかが重要なボーナスゲーム

3ラウンドをクリアするごとに挑戦できるボーナスゲームの「ぶたたたきげーむ」も、ちょっとした息抜きになってよかった。「ぶたたたきげーむ」とは要するにもぐら叩きで、地面に空いた穴から出てくるぶたさんを時間内にどれだけ叩けるかを競う。何匹叩いたかだけでなく、ぶたさんの種類によっても加点が変わってくる。欲張って得点の大きい「ごおるどぶたさん」などばかり狙おうとした揚げ句、逃げられてばかりであまり得点できなかった、なんてこともよくあった。

なくても何とかなっちゃう、ゆる~い存在のアイテム

優しさと易しさが魅力の『ぶたさん』は当時のゲーセンで癒やしの存在だった  IGCC
▲アイテムのほとんどはプレイが便利になる程度のゆるい効果だった

もちろん、ゲームを有利に進めるための強化アイテム、サポートアイテムも登場する。これらのアイテムは、ラウンド開始時に赤く点滅している爆弾の中に入っている。その爆弾が爆発すると画面上にアイテムが現れるので、接触すれば入手できる。中にどのアイテムが入っているかは決まっていない。ラウンド中のぶたさんたちが投げた爆弾の総数で中身が決定されるようだが、プレイヤーがこれをコントロールすることはできないため実質的にランダムだと思っていい。また、各ラウンドで3つまで出現するが、同時には1つしか現れないという特徴もあった。

そのせいか、入手できなければ全ステージクリアはほぼ不可能といった重要アイテムは存在しない。極端に言えば、アイテムなしでも攻略できるゲームデザインとなっていたし、それが本作の敷居の低さにもつながっていたのだと思う

登場アイテム

ぱわーあっぷどりんく 投げた爆弾の飛距離が伸びる。最高3段階までパワーアップし、ミスしてやられてしまっても効果が残機に引き継がれる。
ぱわーあっぷおむすび 主人公ぶたさんの移動速度がアップする。「ぱわーあっぷどりんく」同様に、最高3段階で速度アップ。ミスしても効果が残る特徴を持つ。
すりぃぴんがす 10秒間、画面上のライバルぶたさんを眠らせてしまう。2人プレイの時は相手のぶたさんも眠ってしまう。
よじげんりゅっく 爆弾を3つまで拾うことができるようになる。
はいぱーばくだん 爆発した時の誘爆範囲が広い爆弾。
でりぃしゃすなおいも 1000点が加算されるボーナスアイテム。
ごじさんすーつ 爆風によるミスを1回防いでくれる怪獣のきぐるみ。
ぶたぱーる 色違いで3種類あり、同色を3つ獲得すると効力を発揮する。
紫:取得アイテムの効果2倍
赤:取得アイテムの効果3倍
青:次に登場する青パールが「ちゃちゃちゃんにんぎょう」に変化
ちゃちゃちゃんにんぎょう 最強パワーアップ状態になる。
わんなっぷぶたさん 主人公ぶたさんの残数が1匹分増える。

豊富なアニメパターンで個性を見せてくれたぶたさんたち

優しさと易しさが魅力の『ぶたさん』は当時のゲーセンで癒やしの存在だった  IGCC
▲ラウンド開始前に各ぶたさんの性格が大まかに解説される

ライバルぶたさんは16種類存在し、「あかぶたさん」「あおぶたさん」のように色で名前がつけられている。それぞれに性格が設定されており、ゲーム中に「殴ると殴り返す」「伏せをしたまま昼寝をする」などのアクションを見せてくれる。

パターン豊富なアニメーションと、さまざまなアクションを見せるぶたさんの様子は、ギャラリーとして他人のプレイを見ている時も楽しめた。実戦において、序盤ステージのライバルぶたさんは個性豊かにアクションを見せるだけの存在に近いのだが、後半ステージに進むと、プレイヤーにとって嫌なアクションをしてくるようになる。飛んでくる爆弾を避けるためにプレイヤーが伏せると、真似をして伏せてしまう「みらぁぶたさん」はまだかわいいほうで、「めたるぶたさん」や「ごおるどぶたさん」の「プレイヤーを殴り始めたら死ぬまで殴り続ける」というアクションは本当に勘弁してほしかった。殴られている間は操作不能になってしまうので、まさに「ハマり」の状態になり、時間切れや爆弾の爆発に巻き込まれてミスるしか逃れる方法がなかったのだ。

移植版、リメイク版ともに入手可能なのでぜひプレイを!

優しさと易しさが魅力の『ぶたさん』は当時のゲーセンで癒やしの存在だった  IGCC
▲3D描画で現代風の要素を取り入れた『たたかえ ぶたさん』(メカニック・アームズ公式サイトより引用)

現在のところ、移植版はPlayStation 4のアーケードアーカイブスで入手可能だ。ほかにも、古くはシャープ製パソコンX68000向けに移植版が存在し、ドコモのガラケー対応のiアプリ版も配信されていたが、今となっては遊ぶことは困難だろう。
また、リメイク版としてニンテンドー3DS向けの『たたかえ ぶたさん』(甲南電機製作所)が2015年よりダウンロード販売されている。このリメイク版は4人対戦やネット対戦、オンラインランキングに対応し、マップや新アイテムも追加された、まさに「ぶたさん最新作」と言えるゲームだ。マニアックな要素としては、オリジナル版の開発資料がおまけとして収録されている。これはレトロアーケードゲームファンとしてはうれしい限り。もし、この記事でオリジナル版への興味が湧いた人は、より深く『ぶたさん』を知るためにもぜひ手に入れてほしい。

主人公ぶたさんはその後も人気キャラクターとして活躍

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▲愛らしさでジャレコの人気キャラクターへと成長したぶたさん

本作がリリースされた1987年当時のゲームは、グラフィックや楽曲がどんどんリッチになっていき、内容も複雑化していく過程にあった。攻略するためにはさまざまな情報を入手し、覚え、それらを実践するための高いテクニックが要求されるようになってきたのもこの頃からではないだろうか。
そんな中で本作は、初見でもとっつきやすいビジュアルと分かりやすい内容で「アーケードゲームはこんなに楽しいものなんだよ」とビギナーに語りかける作品だったと思う。

本作はコアファンに愛され続け、主人公のぶたさんはその後も『ゲーム天国』(1995年)やファミコン用ソフトの『落っことしパズル とんじゃん!?』(1989年)など、ジャレコ作品に登場する人気者となった。また、家庭用ゲーム機向けではあるが、先述したように最新作が今なおリリースされていることからも、結果的に息の長い作品になった良作であることが証明されたのではないだろうか。もちろん、オリジナル版もゲームセンターのレトロゲームコーナーで稼働していることが多いので、見かけたらぜひプレイしていただきたいと思う。

画像提供:株式会社シティコネクション
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脚注   [ + ]