1980年代アーケードゲームにおける映像環境の常識を覆した『ダライアス』

  • 記事タイトル
    1980年代アーケードゲームにおける映像環境の常識を覆した『ダライアス』
  • 公開日
    2019年07月16日
  • 記事番号
    1142
  • ライター
    稲元徹也

現在、テレビゲームをプレイする際に使用するモニターは、アスペクト比16:9のものが一般的となり、家庭用向けにも50V型(50インチ相当)以上の大画面テレビも登場。大画面で迫力あるゲーム映像を楽しめるようになりました。

2000年代以降、薄型液晶テレビの普及により、映像環境は業務用・家庭用問わず大幅な進化を遂げましたが、それ以前の1980~1990年代はブラウン管テレビが主流の時代。アスペクト比4:3のSD画質が標準で、テレビゲームもその環境に準じて作られていました。

そんなテレビゲームにおける映像環境の常識を覆した作品が、1987年にタイトーからリリースされた『ダライアス』です。

作品で培ったハーフミラーの技術で
つなぎ目のない3画面表示を実現

▲以前当サイトでも紹介したゲームセンター「Hey」で稼働中の『ダライアス』(画像:タイトー提供)

本作の舞台は、異星人「ベルサー」の攻撃を受け、死の星となった惑星「ダライアス」。わずかに生き残った人類の希望とともに旅立った戦闘機「シルバーホーク」のパイロット「プロコ」と「ティアット」の2人を主人公とする横スクロールタイプのパワーアップシューティングです。

ジャンル的には比較的オーソドックスな作品ですが、本作は汎用筐体ではなく、特別に設計された大型筐体にてリリースされました。それを象徴するのがこれまでの常識を覆す映像環境で、筐体には3つのモニターが横に並び、それが1つのゲーム画面になっているというものでした。

複数のモニターを使用したアーケードゲームは、『TX-1』(1983年/辰巳電子工業)や『スーパーデッドヒート』(1985年/タイトー)など、それまでもいくつか見られましたが、当時の主流だったブラウン管の構造上、モニターを隣り合わせるとその間に大きな隙間ができてしまいます。そのため、これらのタイトルにはそんな構造上の都合を許容したゲームデザインが施されていました。

ところがこの『ダライアス』は、タイトーが過去の作品で培ったハーフミラーの技術を応用して、横に並べたモニター同士の隙間を排除し、当時では考えられなかった超ワイドなゲーム画面を構築することに成功したのです

▲2019年2月に発売された『ダライアス コズミックコレクション』(2019年/タイトー)ではアーケード版の画面を忠実に再現

学生時代に『ダライアス』の筐体を、新宿駅東口にあった「新宿スポーツランド中央口店」(通称:蟹スポ)で初めて見たときは、その異様に長い画面に度肝を抜かれましたが、からくり自体はすぐに理解できました。ゲーム画面を少し上から眺めてみると、手前下側に2つのモニターがあることが分かり、モニターから直に映された映像はハーフミラー越しの中央の画面のみで、左右の画面はハーフミラーに反射させて合成した映像だったのです。

▲『Beep』1987年4月号P17の記事。3画面の仕組みをイラストで分かりやすく解説している(筆者所有『Beep復刻版』別冊付録『Beep Best』P59より引用)

画面が一般的な横スクロールシューティングの3倍(一部重なっている部分があるので、厳密に3倍ではありません)となったことで、背景をダイナミックに見せられるようになり、プレイフィールドもこれまでのシューティングにはないものとなりました。

背景や敵の登場が視認しやすく、戦略が立てやすくなった一方、シルバーホークのショットは画面内に撃てる数が決まっているので、連射のしすぎには注意が必要となります

▲連射したショットが画面右端に消えるまでの間は次のショットが撃てなくなる、いわゆる“弾切れ”には要注意
▲狭いゾーンも、画面が広ければ早めに通り抜けて進むことが可能となる

ゲームのステージはA~Zの全26ゾーンに分かれていて、「宇宙洞窟」「都市地帯」「バンアレンベルト(*01)」などを背景に、その構造はゾーンによって異なります。色が違う敵を倒すと3色の「パワーユニット」が出現し、これを取るとシルバーホークがパワーアップします。また、同じ色のユニットを8個取るとランクアップしてさらに強くなっていきます。

パワーユニットはゾーンによって出現数が異なり、ランクアップ前にミスをすると失ってしまうので、ゾーンごとの数と難易度の兼ね合いでルートを選び、進んでいくのが基本となる攻略法でした。

▲シルバーホークの右側に見える丸い物体がパワーユニット。ミサイル(赤)、ボム(緑)、アーム(青)の3種類。取った数は画面上側に表示

ゾーンの最後には、ベルサー軍の巨大戦艦がボスとして登場します。そのモチーフとなっているのはシーラカンスやイソギンチャク、タコ、マッコウクジラなどの水棲生物で、本作の画面比率だからこそ表示できた巨大戦艦は圧巻の一言。筐体内蔵のボディソニックの地響きのような音とともに登場する演出も、当時のゲームセンターでひときわ耳に残る環境音でした。

また、このボスの登場シーンは、ゲームを極めたプレイヤーにとってはスコアの稼ぎ時であり、ボスのパーツや壊すとスコアが入る敵弾、あるいは時間経過とともに登場する敵「ヤズカ・タカーミィ」を撃つことで、ハイスコアを競っていました。

▲ファンも多いゾーンAのボス「キングフォスル」(シーラカンス型)
▲ボス撃墜後はゾーンが分岐。このシステムは以降のシリーズにも継承されている

ちなみに当時の筆者が本作攻略の参考にした、ゲームサークルだった頃の「ゲームフリーク」(*02)が発行した同人誌には、全ゾーンで異なる26体のボスが登場予定だったことが記されていました。開発の事情により、製品版に登場するボスは全11体となりましたが、その一部は、続編の『ダライアスⅡ』(1989年/タイトー)や、PCエンジンで発売された『スーパーダライアス』(1990年/NECアベニュー)などに登場しています。

ヘッドホン端子が標準装備された理由が分かる
ハイクオリティなサウンド

『ダライアス』を語る上でもう1つ忘れてはいけないのが、サウンドです。小倉久佳(*03)を中心としたタイトーのサウンドチームが手がけた楽曲は傑作揃いで、筐体に標準装備だったヘッドホン端子のありがたみが大いに感じられました。それに加えて、ボスの登場時には前述のボディソニック機構が働きます。サウンドの低音域にシンクロして座席が振動するという演出に、プレイヤーは高揚感と緊張感をかき立てられたものです。

同1987年には、本作のサウンドを収録した『ダライアス タイトー・ゲーム・ミュージック VOL.2』が「ZUNTATA」の名義でアルファ・レコードより発売され、筆者も購入しました。このアルバムは独自の編集が施されていて、宇宙洞窟のBGM『CAPTAIN NEO(宇宙洞窟)』の原曲の収録時間が非常に短かったことが印象に残っています。

▲ボスのBGMは7曲。最終ゾーンのボスの楽曲でプレイヤーの高揚感は最高潮に達する(タイトー公式YouTubeチャンネルより、Nintendo Switch用ソフト『ダライアス コズミックコレクション』収録アーケード版『ダライアス』)

ゲーム全体の難易度を大幅に見直して調整された
「エキストラバージョン」が登場

この『ダライアス』は稼働後程なく、アップデートバージョンがリリースされました。1つはゲーム内容に微調整をかけた「ニューバージョン」、そしてもう1つはゲームバランスが変わるほどの調整が入った「エキストラバージョン」です。後者に関しては、長期稼働における上級者向けのアップデートといっても過言ではない内容で、全体的に難易度が上がったという印象を受けました。

筆者は前述の同人誌を参考に、難易度が低めのルートを通ってエンディングを見るという楽しみ方をしていましたが、「エキストラバージョン」では、難易度の低い一部のゾーンが極端に難しくなり、パワーユニットの出現パターンやボスの攻略法も変わったため、それまでの攻略が通用しなくなってしまいました。

残念ながら、その後、自分がこの更新版のエンディングを攻略することはありませんでしたが、ハイスコアを競っていたプレイヤーにとってはチャレンジし甲斐のあるものだったようです。この更新版では、シルバーホークのレーザーやウェーブの攻撃力が上昇し、ゲームクリア後の残機数でボーナスが入るなど、遊びやすく改善された点もありました。近年発売された家庭用ゲーム機向け移植版にはそれぞれのバージョンが収録されているので、比較してみるのもおもしろいかもしれません。

▲エキストラバージョンは、タイトルロゴの右下にそれを表す表記がある
▲レーザーでの攻略が大変だったボス「ファッティグラトン」(ピラニア型)は、ニューバージョン以降レーザーに対する耐久力が下がり、エキストラバージョンではレーザーの威力も上がったため、より倒しやすくなった

ワイド画面が当たり前になった今だからこそ実現した完全移植

▲『ダライアス コズミックコレクション』の公式PV

2019年2月に、本作を含む『ダライアス』シリーズが収録されたNintendo Switchソフト『ダライアス コズミックコレクション』が発売されましたが、実は家庭用ゲーム機への「完全移植」と呼べるタイトルは、近年まで存在しませんでした。

例えば、PCエンジンのCD-ROM2にて発売された前述の『スーパーダライアス』は、オリジナルに近いグラフィックスやCD-DAで演奏されるサウンド、そしてボツとなったボスが登場するなど、当時としてはかなり満足度の高い内容でした。それでもやはり、画面比率の違いを踏まえた独自のゲームデザインが施されており、完全移植とは意味合いの異なる作品だったのです。

本当の意味での完全移植が実現したのは、2016年にハムスターからアーケードアーカイブスで発売されたPS4版の『ダライアス』で、あの画面を端から端まで収められるアスペクト比16:9の映像環境が普及した現代になってからのことでした。

▲『ダライアス コズミックコレクション』は、ゲームの各種情報を映す「ガジェット」を画面に表示できる

そんな現代に自宅でも遊べるようになった『ダライアス』ですが、アーケード版をオリジナルの筐体でプレイできる店舗も全国にはまだいくつか存在しているようです。タイトーの外山雄一氏が個人的に「『ダライアスシリーズ稼働/所有店マップ」をGoogleマップで公開していますので、そちらを参考に遊びに行ってみてはいかがでしょうか。

※本稿のゲーム画面は注釈のあるものを除き、筆者所有の『ダライアス コズミックコレクション(通常版)』から撮影したものです。

ⒸTAITO CORPORATION 1986 ALL RIGHTS RESERVED.

稲元徹也

脚注   [ + ]

01. バンアレンベルト : バンアレン帯。地球の周囲を取り巻く放射線帯。本作では地表のある宇宙空間で、当たり判定のある小惑星が背景に登場することも。
02. ゲームフリーク : ゲームライターを経てゲームクリエイターとなった田尻智氏が立ち上げたゲームサークルで、会員向けに会報やアーケードゲームの攻略同人誌を発行していた。のちにファミリーコンピュータ用ソフト『クインティ』(1989年/ナムコ)を開発し、ゲーム開発会社となる。この『ダライアス』の同人誌が、サークル活動においての最後の刊行物となった。
03. 小倉久佳 : 1959年生まれ。1983年タイトー入社。同社サウンドチーム「ZUNTATA」のサウンドクリエイターとして、この『ダライアス』以外にも『アウターゾーン』(1984年)、『影の伝説』(1985年)、『奇々怪界』(1986年)、『ニンジャウォーリアーズ』(1988年)、『ダライアスⅡ』(1989年)など名だたるタイトルにおいて名曲を手がけた。現在は「小倉久佳音画制作所」名義にて活躍中。

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