バンダイミュージアム探訪記~アーケードゲームも移植されたLSIゲームの魅力(前編)

バンダイミュージアム探訪記~アーケードゲームも移植されたLSIゲームの魅力(前編)  IGCC

ファミリーコンピュータ(任天堂)がまだ誕生していなかった時代、LSIゲームはビデオゲームの雰囲気を味わえる唯一のガジェットだった。LEDやFL管の発光、液晶パネルを利用したゲーム画面はビデオゲームのような自由度はなかったものの、多くの玩具メーカーはその制限の中でさまざまなアイデアを形にし、僕らを夢中にさせてくれた。

その中でも、バンダイのLSIゲームは当時の人気アーケードゲームの雰囲気を感じさせるものや、個性的なオリジナルタイトルで圧倒的な人気となっていた。読者にも同社のLSIゲームで遊んでいたという人は多いのではないだろうか。

そんなLSIゲームを玩具の歴史として数多く展示しているのが、バンダイが運営する「おもちゃのまち バンダイミュージアム」だ。

今回、ゲーム文化保存研究所はバンダイミュージアムを訪問し、同館の金井正雄館長に当時のLSIゲームを巡るエピソードを伺ってきた。ヒット商品の『ミサイルベーダー』(1978年)や『LSIベースボール』(同)などの興味深いエピソードとともに、アーケードゲームから移植LSIゲームの魅力と、そのノウハウで進化を遂げていくガジェット玩具について迫る。

バンダイミュージアム探訪記~アーケードゲームも移植されたLSIゲームの魅力(前編)  IGCC
▲オリジナルタイトルだけではなくアーケードからも積極的に移植が行われたLSIゲーム

玩具業界最大手バンダイが運営するおもちゃのミュージアム

バンダイミュージアム探訪記~アーケードゲームも移植されたLSIゲームの魅力(前編)  IGCC
▲ヒーローたちが出迎えてくれるエントランス ©テレビ朝日・東映AG・東映 ©石森プロ・東映 ©東映

「おもちゃのまち バンダイミュージアム」は栃木県壬生町にある、バンダイ直営のおもちゃ博物館だ。
最寄り駅は東武宇都宮線おもちゃのまち駅。駅からは少々離れているが、駅前にあるレンタサイクルを利用するといいだろう。車での来館には、敷地内の大型駐車場が無料で利用できる。

ミュージアムに到着してまず目に飛び込んでくるのは、建物正面でポーズをきめる特撮ヒーロー3人の銅像だ。『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003~2004年)の「アバレッド」、『仮面ライダー』1号(1971~1973年)、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977年)の「アカレンジャー」の勇姿が、かつての少年の胸を熱くする。

銅像の足元にある説明文に目を通すと、キャラクターロボット玩具発祥の地であるとのこと。かつてここにはバンダイグループの玩具メーカーのポピーの栃木工場があって超合金シリーズを製造していたようだ。

取材当日は天候の関係で見学はしなかったのだが、建物を挟んで反対側にはミュージアムガーデンと呼ばれる3,000平方メートルの庭があり、芝生の上でボール遊びをしたりピクニック気分でお弁当を食べたりして過ごせるそうだ。

入館した瞬間から楽しいひとときが始まるエントランスホール

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▲圧倒的存在感のガンダム胸像 ©創通・サンライズ

エントランスでは『機動戦士ガンダム』(1979~1980年)の等身大胸像が出迎えてくれる。この時点でほかの玩具系展示施設では体感できないオーラが伝わってくる。この『ガンダム』胸像をバックに記念撮影するのが来館時の作法といえるだろう。記念撮影用に連邦軍やシャアの制服を無料で貸し出してくれ、ミュージアム側の「分わかっている」感が伝わってくる。ただし、サイズはMしかないようなので、体の大きな人は民間人として写真に写ろう(笑)。

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▲いにしえのゲームセンターに思いを馳せる

エントランスにはレトロアーケードも展示されており、プレイも可能。レトロアーケードといっても、当サイトが扱っている懐かしのビデオゲームではなく、ペニーアーケードと呼ばれる骨董品の部類に入る遊技台のことだ。さしずめ、今ならエレメカ系といった遊具になるのだろうか。アーケードゲームの遠いご先祖様として、体験しながら古き時代の遊技場の姿を思い浮かべてみてはいかがだろうか。

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▲自由に遊べるプレイエリア

エントランスの奥はプレイエリアと呼ばれる遊戯スペースになっている。このエリアはブロック遊びができる専用テーブルや、クッションマットが敷かれており、たくさんのおもちゃで遊んだり、読書したりできる。小さな子供にとっては天国のようなエリアだ。しかしこのエリア、大人だって楽しめるものがある。かつてのナムコやバンダイのファミコンソフトを借りてプレイできるのだ。懐かしさに浸りながらプレイしてもいいだろうし、子連れで訪れた人は、腕前を披露するいい機会かもしれない。

LSIゲームはおもちゃが電子化するターニングポイント

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▲ おもちゃの電子化を推し進めたLSIゲーム

1970年代後半から1980年代前半にかけての時期、家庭用テレビゲームは存在していたが、スペック的にはまだ簡素なもので、1983年にファミリーコンピュータが登場するまで、黎明期のアーケードビデオゲームですら再現できる性能を持つハードはなかった。

そんな時代において、アーケードビデオゲームの魅力を家庭で体感させてくれたのは、玩具メーカーが販売していたLSIゲームだけだったといえるだろう。なかでも、バンダイLSIゲームのトップメーカーとして、オリジナルタイトルからアーケードビデオゲームの移植タイトルまでバリエーション豊かな商品を展開していた
そんなLSIゲームについて、当時の状況をよく知る金井館長にお話を伺った。

――それでは早速ですが、LSIゲームについてお話を聞かせていただきたいと思います。 バンダイミュージアムではLSIゲームや電子ゲームも展示されていますが、金井館長から見てLSIゲームはどのような存在でしょうか。少々大げさな表現かもしれませんが、展示する意義についてお聞かせください。

金井 「ミュージアムにとってのLSIゲームを展示する意義」と言われても非常に難しいのですが(笑)、やはり、おもちゃの歴史の一部ということですね。展示室の広さは限られているので、展示スペースは狭くなっていますが、おもちゃ史を学ぶ上で外すことはできないジャンルですよ。

かつて、おもちゃは紙やブリキで作られ、ギミックだけで遊ばせるものでしたが、やがて電子部品を使って遊ぶ時代になりました。その入口にあたるものが「LSI・電子ゲーム」で、ターニングポイント的なものとして必ず記録しておかなければならないという思いがあります。電子ゲーム・LSIゲームのコーナーでは「最初はこういうもので遊んでいたんだ」と感じていただいて、だんだんと今のビデオゲームに続いていくことが分かるように展示しています。

――展示スペースは小さいとおっしゃいましたが、それでも十分に多数のゲームが展示されていると思います。現在はどれくらいの数を展示しているのでしょうか。

金井 電子ゲーム、LSIゲーム関連は約60点展示しています。公開していない所蔵品は200点くらいありますよ。バンダイの製品だけではなく、他社製品についても歴史的に重要なゲーム機は抑えるようにしています。

――これらのゲームはまだ作動するのでしょうか?

金井 今回のような取材があると、作動するかなとLSIゲームに電池を入れてチェックするんですが、そのときについ遊んじゃいますね。昔のゲームはいいなと思いますよ。当館のプレイエリアにあるファミコンも、楽しんでいる来館者がいっぱいいる。現在売られているようなゲームとは全然違う単純な内容なんだけど、味のある玩具として、皆さん楽しんでいます。デジタルなんだけど、アナログ的な優しさがそこには存在していると思いますよ。