不思議な魅力にあふれていた高難易度シューティング『アーガス』
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『アーガス』のリリースは1986年。シューティングゲームに多大なる影響を与えた『ゼビウス』(1983年/ナムコ)の登場から3年が経過し、ようやくその影響も影を潜めつつあった時期に、ジャレコ(*01)から発売された。開発はNMK(*02)。対空と対地が分かれている攻撃武器、浮遊する巨大なボス要塞を対地攻撃で攻略するなど、『 ゼビウス』の影響を濃厚に感じとれたゲームである。
筆者もリリース当時、予備校をサボっては「ゲームブティック 高田馬場店」でよくプレイしていた。鬼のように難しい難易度ながら、なぜか嫌になるということもなく、定期的にプレイしてしまう不思議な魅力のある作品だった。ここではそんな『アーガス』を紹介しようと思う。
グラフィックやBGMが何気によかったシューティングゲーム
『アーガス』は全16ステージ縦スクロールのシューティングゲームで、横方向にもマップがループする形でつながっている特徴があった。次々と襲い来る敵を画面外に出してしまおうと横方向に逃げると、スクロールアウトした敵が反対側から現れるという罠に何度引っかかったことか。空中に浮かぶ障害物も憎らしい存在だった。
空中障害物は破壊可能なブロック状のものと、破壊不可能な金属パイプ状のものがある。ともに自機の弾は受け止めてしまうくせに、敵キャラや敵弾はすり抜けてくるという極悪なもの。そのため、縦横無尽に攻撃してくる敵を限られた移動範囲で応戦するテクニックが要求された。
グラフィックは当時のアーケード基板では標準的ともいえる多色表示で、美しく描かれたキャラクターや背景が目を引いた。ステージ開始時のディストーションが利いたようなギターサウンドや、ボス戦、ボーナスステージの重く響くベース音など、印象に残る楽曲も魅力的だった。今思えば、あのベースのリズムを聴きたかったのも、筆者がプレイしていた理由の一つかもしれない。
ステージごとに変化する武器装備が楽しくも悩みのタネだった
攻撃は対空と対地に分かれ、それぞれ別のボタンで撃ち分ける必要がある『ゼビウス』スタイルだった。対地攻撃は、これも『ゼビウス』同様に、発射時に照準が合っていた位置に着弾する(ただし、ボス戦では照準の移動を追うように着弾地点が変化する)。
対空攻撃は5種類、対地攻撃は3種類の武器が存在したが、これはほかのゲームのようにアイテムや任意操作で切り替えられるものではなく、ステージごとに自動で切り替わるという独自性の強いシステムになっていた。
【対空攻撃】
ビーム | 単発の弾を連続で発射する攻撃。パワーアップすることで横に2連の弾に変化し、その幅の分だけ当たり判定が大きくなる。 |
ラピッドビーム | ビームの連射力が上がったもの。 |
レーザー | ライン状のレーザー。パワーアップでリングレーザーに変化し、当たり判定が大きくなる。 |
2WAY | 斜め方向の左右に単発の弾を発射。パワーアップ時はビーム同様に2連の弾に変化して当たり判定が大きくなる。 |
ツインビーム | 横に2連の弾を発射。パワーアップで4連に変化して当たり判定が大きくなる。 |
【対地攻撃】
レーザー | 発射と同時に地上物を破壊できる。ボタンを押したまま連続攻撃できるので便利な半面、使いすぎると一定時間使用不能になる欠点もある。 |
ビーム | 2連のビーム弾を発射。連射が可能で弾の速度が速く、レーザーのように弾切れすることもないので、もっとも頼りになる対地攻撃といえる。 |
ミサイル | 弾の速度が遅く連射力も弱いので、装備されたときに苦労する。 |
正直言って、同時期に稼働していたほかのシューティングゲームと比較しても地味な攻撃ばかりで、迫り来る敵を広範囲になぎ倒すというような爽快感は皆無だった。基本的には自機正面の狭い範囲。唯一、ワイドに攻撃できる2WAYが存在したが、これも左右45度方向に弾が発射されるだけで、正面方向への攻撃ができなくなる厳しいものだった。
とはいうものの、自機の攻撃特性に対応した敵キャラをしっかり登場させるなど、気の利いたゲームデザインはしっかり行われていた。例を挙げると、ステージ2で自機の対空武器はレーザーになるのだが、そのレーザーを反射する敵がここで現れる。その敵の唯一反射しない部分を狙って破壊しなければならないのは、なかなか心憎い演出だったと思う。
アイテムは4種類!有利にゲームを進めるには獲得タイミングも重要だった
アイテムは4種類。アルファベットが描かれたパネルが地上にあるので、それを対地攻撃することで入手する。
Pパネル | 対空攻撃のパワーアップに必要。実際にパワーアップさせるには3つ集めなければならない。武器がパワーアップすると同時に自機の移動速度も上がる。 |
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Bパネル | 3つ集めることで自機にバリアが発生し、10秒間無敵状態となる。 |
Eパネル | 3つ集めることで画面中央にエナジーボールと呼ばれる玉が出現。エナジーボールに自機が接触することで、画面上の敵と敵弾が消滅。消滅した敵の数×1,000点がボーナス点として加算される。 |
Lパネル | ステージクリア後のボーナスゲーム成功時に、ボーナス残時間×獲得した数が得点として加算される(例:残時間3.58秒で成功した場合、3,580×獲得Lパネル数がボーナス点となる)。 |
アイテムは、Lパネルを除き、3つ集めることで効果が発動するルールになっていた。自機の攻撃力はパワーアップ後も決して強力とは言えないゲームであったが、それでもノーマル状態よりはマシということで、Pパネルは積極的に獲得したいアイテムだ。パワーアップは1段階のみだったが、Pパネルはパワーアップ後も2つまではストックできたので、ミスや着陸ボーナス失敗によるパワーアップ喪失のリカバリーを容易にするためにも常に獲得したいアイテムだった。
Eパネルによるエナジーボールも、使用しなければ画面中央にキープでき、その状態でEパネルを2つまでストックすることができた。そのため、ボス戦など敵攻撃が激しいシーンで、エナジーボールを使用した直後に3つめのEパネルを獲得し、エナジーボールを2連続で使うということも理論的には可能だ。もっとも、ゲームの難易度が高すぎてそのような余裕はないと思うが、果たして、当時そのようなプレイができたプレイヤーは存在したのだろうか。
得点を得るかパワーアップを失うか!?緊張感走る着陸ボーナス
ステージ間の着陸ボーナスは、『アーガス』をプレイした誰もが印象に残っている演出ではないだろうか。
ボス戦が終わってホッとしたのもつかの間、目の前に滑走路が現れ、着陸を指示される。『アーガス』ではこの着陸がボーナスゲームとなっており、着陸に成功すれば直前のステージで破壊したLパネルの数だけボーナスポイントが加算される。反対に、着陸に失敗すると残機を失うことはないものの、パワーアップした武器が初期状態に戻されてしまうというリスクを抱えたシステムだった。
方向レバーの上下で上昇下降を操作するのだが、一定速度ではなく、加速が伴う動きになっているのでコツがなかなかつかめない。
しかも、ステージが進むにつれて上昇下降の加速度が増していく。時間制限もあり、時間内に着陸できなければ強制的に墜落、失敗となってしまうので放棄することはできない。とにかく成功すればラッキーで、パワーアップは失うものと割り切って挑戦するボーナスゲームだった。
実質的な移植版は簡略化された内容のファミリーコンピュータ版だけ
現在『アーガス』をプレイしようと思ったら、方法は2種類ある。実機をプレイするか、家庭用ゲーム機の移植版をプレイするかだ。
移植版はファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)向けのものとなる。ほかにプレイステーション、Windows向けにもリリースされたが、これらはいずれもファミコン版をエミュレートしたものである。ただ、残念ながらファミコン版はオリジナル基盤との性能差が激しいため、著しく簡略化された内容になってしまっている。
自機の攻撃が2種類のみで、敵の種類も大幅にカット。空中の障害物が地上と一体化し、ボスは1種類のみでサイズも小型化しているなど、本来の『アーガス』がどのようなものかを知るにはかなり厳しい。筆者は『アーガス』をプレイするならオリジナル版だと思っている。ぜひ、実機が稼働しているレトロゲームセンターを探してプレイしてほしい。
難易度が高すぎたゆえ短命に終わった惜しまれるゲーム
『アーガス』というシューティングゲームは、ゲームデザインを破壊してしまうほど難易度が高かったため短命に終わってしまった不遇の作品だと思っている。ゲーム内でさりげなく使われている半透明処理、美しく描かれたグラフィック、ステージごとに変化する自機の攻撃方法、ステージ間の着陸ボーナスなど、着目すべき要素が数多くあったのに残念である。
個人的には『アーガス』がリリースされた1986年当時のアーケードゲームは、絶妙の難易度に調整されたものが多かったように思うのだが、ジャレコのゲームだけはむやみに高難易度だったように記憶している。集客を狙った企業戦略の一つだったのかもしれないが、もう少し万人向けに難易度を調整して世に出ていたなら、『アーガス』はゲーム史に残る名作になっていたかもしれない。
とはいえ、いまだに古参のゲーマーなら『アーガス』を覚えている方も多いだろう。それだけ記憶に残る秀作であったことは揺るぎない事実である。
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