「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十七回 褒め要素

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十七回 褒め要素
  • 公開日
    2026年06月26日
  • 記事番号
    14474
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第六十七回のテーマは「褒め要素」です。

筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」では、「ゲームニクス理論」の「原則3:はまる演出」に該当する事例を多数掲載しています。

そのうち「原則3-B-④:快感要素の基本事項」では、プレイヤーにゲームにはまってもらうためには「褒め要素」が大事であり、「映像の美しいデモや派手なエフェクト、称えるボイスやサウンドなど、褒めすぎてやりすぎということは絶対にない」と解説しています。

例えばRPGのエンディングなど、プレイヤーが大きな目標を達成したときには必ず祝福する演出が用意されています。ですが、いざ調べてみるとエンディングの場面以外にも、ありとあらゆる場面で「褒め要素」が盛り込まれていることがわかります。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、「これでもか!」とばかりにプレイヤーの実力を称え、達成感を演出する「褒め要素」の数々をご覧いただきましょう。どうぞ最後までご一読ください!
 

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

 

何回褒められても嬉しい、シンプルかつ至極の演出

古くからアクション系のゲームには、プレイヤーが1ステージをクリアするごとに祝福のメッセージを表示したり、主人公キャラが歓喜のパフォーマンスを披露したりする「褒め要素」が、必ずと言っていいほど用意されています。

さらにステージクリア時だけでなく、途中で特定のミッションを達成する、あるいは高度なテクニックを披露したときなど、プレイヤーのナイスプレイをその都度称える「褒め要素」を盛り込んだタイトルもたくさんあります。

例えば『NewスーパーマリオブラザーズWii』(任天堂/2009年)では、各ステージに3枚ずつ配置されたスターコインをすべて取ると、「パチパチパチ……」と拍手が沸き起こります。いたってシンプルなアイデアですが、コインの獲得に成功したプレイヤーの達成感をさらに高める、サウンドを利用した素晴らしい「褒め要素」ですね。
 

対戦格闘ゲームの『スーパーストリートファイターIIX』(カプコン/1994年)は、ゲージが満タンになったときに1回だけ、相手に大ダメージを与えられるスーパーコンボ(超必殺技)が使用できます。

どのキャラクターのスーパーコンボも、通常の技や必殺技よりもアクションが派手なこともあり、相手にヒットさせると実に快感です。さらにスーパーコンボで相手をKOすると、画面全体がフラッシュしてとびきり派手な演出に変わることで、勝利したプレイヤーの快感をますます高めてくれます。
 

高い集中力でノーミスを続ける、スゴ腕プレイヤーに贈る「褒め要素」

前回の「デモ画面Part2」では、対戦格闘ゲーム『龍虎の拳2』(SNK/1994年)で、ダメージをまったく受けずに相手をKOすると、キャラクターが特殊な勝利パフォーマンスを披露する例をご紹介しました。

本作に限らず、ゲーム開始から終了までの長い時間を、集中力を切らさずにノーミス、あるいは連勝を続けることは、どんなジャンルのタイトルでもけっして簡単ではありません。ゆえに、あらゆる障害をノーミスで切り抜けたプレイヤーに対し、その腕を称える特別な「褒め要素」を用意することで、成功時の充実感がますます高まります。

同じく、昔から対戦格闘ゲームで導入されている「褒め要素」のひとつに、すべての対戦相手に一度も負けず、全試合ストレート勝ちでCPU戦をクリアすると、特殊な演出を追加したエンディングを流すアイデアがあります。

以下の写真は『ストリートファイターII’ターボ』(カプコン/1992年)で、全試合ストレート勝ちでクリアすると見られるエンディングです。ほかにも『サムライスピリッツ』(SNK/1993年)などの作品にも、同様のアイデアが導入されています。
 

『ぷよぷよ通』(セガ、開発:コンパイル/1994年)などのアクションパズルゲームでは、ブロックなどを連続で消した際に連鎖が続いた数を、『クイズ殿様の野望2』(カプコン/1995年)などのクイズゲームでは、クイズに連続で正解した数を表示することで、プレイヤーを称える「褒め要素」がよく導入されています。

また『エメラルディア』(ナムコ/1993年)などのアクションパズルゲームには、1回のアクションで大量のブロックをまとめて消した直後、ゲームの進行が一瞬止まり、その数に応じて「Wonderful!」「Marvelous!」などと祝福のメッセージを大きく表示する例もあります。ちなみに『クイズ殿様の野望2』には、上記の連続正解数に加え「お見事!」「神業!」などとメッセージが表示される「褒め要素」もあります。

シューティングゲームの『首領蜂』(アトラス、開発:ケイブ/1995年)には、対戦格闘ゲームのコンボ(技の連続ヒット)と同様に、敵機を連続で破壊すると画面にヒット数が表示され、高得点が加算される「GP(ゲットポイント)システム」が導入されています。

本作では、ヒット数が10を超えると画面にヒット数が表示され、さらに30ヒットを超えるとヒット数の表示サイズが大きくかつ派手になります。ほんのちょっとしたことかもしれませんが、プレイヤーの敵を倒しまくる快感をより高める、非常に優れたアイデアであると筆者は思います。
 

ノーミスを続けるプレイヤーに対し、実に凝った「褒め要素」を導入していたのが『バトルガレッガ』(エイブル、開発:ライジング/1996年)です。

本作に出現する得点アイテムの勲章は、1個も画面外に逃さず連続で取り続けると、その形状が徐々に大きくなるとともに、獲得時の得点がどんどん上がります。最初に取った勲章は100点で、以後200点、300点…と100点ずつ上がり、1000点以降は2000点、3000点…と1000点ずつ上がり、最高で1万点までアップします。

実は本作には、勲章を取ったときのSE(効果音)が100~900点、1000~9000点、1万点の勲章獲得時の合計3種類あり、特に1万点獲得時はひと際甲高い音が鳴ります。つまり本作では、プレイヤーに対して視覚だけでなく、聴覚でも得点稼ぎの快感を生み出しているわけですね。
 

プレイヤーの成績に応じて栄誉を称える「褒め演出」の数々

『ビジネスを変える「ゲームニクス」』の「原則3-D-②:達成率の表示」の項では、プレイヤーに対しゲームの達成率を随時示すことで目標設定が容易になり、モチベーションが喚起されることを解説しています。

本書でも採り上げた『スーパードンキーコング』(任天堂/1994年)は、全ステージを隠し部屋も発見たうえでクリアすると達成率が101パーセントになり、セーブデータに特殊なマークが表示される、実にユニークなアイデアが盛り込まれています。

『大乱闘スマッシュブラザーズX』(任天堂/2007年)では、アドベンチャーモードで全ステージをクリアすると、セーブデータに王冠のマークが表示されます。ただし、本作で達成率を100パーセントにするためには、ただクリアするだけではダメで、各ステージで規定のアイテムを獲得するなどの諸条件をすべて満たす必要があります。

ゲームを隅々まで遊び尽くし、完全制覇したプレイヤーの腕を称賛するこれらのアイデアも、実に優れた「褒め要素」ですね。

また達成率の集計機能はありませんが、古くは『スーパーマリオブラザーズ2』(任天堂/1986年)のように、最終ステージ(ワールド8-4)をクリアするたびに、タイトル画面に「★」マークが1個ずつ増える「褒め要素」を導入した例もあります。
 

当コラムの第一回のテーマでもあった「ネームレジスト」は、上位の得点を獲得したプレイヤーが自身の名前を書き込むことができる、アーケードゲームにおける古典的な演出のひとつです。

以前にも解説しましたが、「ネームレジスト」にも素晴らしい「褒め要素」がたくさんありますので、この機会に再度ご紹介したいと思います。

「ネームレジスト」中はプレイヤーの腕を称える、いかにも勇壮な曲が流れる演出が定番ですが、第一回でも触れたように『ゼビウス』(ナムコ/1983年)や『ギャラガ』(ナムコ/1981年)などのタイトルでは、1位の場合と2位以下の場合とでそれぞれ異なる曲を用意することで、1位のプレミアム感を高めるアイデアを盛り込んでいます。

順位によって「ネームレジスト」時の演出が変化するタイトルはいろいろありますが、その中でも特筆に値するのが『エグゼドエグゼス』(カプコン/1985年)です。

本作には、1位と2~5位の曲のほかにも、実は1000万点を達成時にだけ流れる、特別な「ネームレジスト」曲もあります。加えて本作には、1000万点に到達すると画面に「おめでとう」と表示され、ファンファーレが鳴る演出も用意されています。

もう40年以上も前に発売された古い作品ですが、これほどまでに細かい工夫を施した「褒め演出」が当時からあったという事実には本当に驚かされますね。
 

以上、今回は「褒め要素」をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?

プレイヤーがより楽しく、気持ちよく遊べるようにと、メッセージ表示やビジュアル、サウンドなどにさまざまな工夫を凝らした開発者のみなさんは、まさにエンターティナーですね。そのお仕事ぶりには改めて敬服したいと、筆者は率直に思いました。

繰り返しになりますが、「褒め要素」に関するくわしい解説は、「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3-B-④:快感要素の基本事項」で解説していますので、興味のあるかたは本書をぜひご覧ください。

それでは、また次回!

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