「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第七十一回 オープニングPart2

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第七十一回 オープニングPart2
  • 公開日
    2026年11月06日
  • 記事番号
    14997
  • ライター
    鴫原盛之

 
当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第七十一回のテーマは「オープニングPart2」です。

筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著、『ビジネスを変える「ゲームニクス」』の「原則4-A-①:スタート時のつかみ」の項ではプレイヤーに対し、「ゲームの目的やストーリーを最初に伝えることが重要である」、すなわち「オープニング」時にプレイヤーに対し、没入感やモチベーションを高めることが大事なポイントであると解説しています。

第二十一回では、主にヒロインが敵にさらわれる、プレイヤーが操作する機体が発進する、「チュートリアル」を盛り込むなど、ジャンルを問わず定番の演出を中心に採り上げましたが、ほかにもおもしろい「オープニング」の例はまだまだあります。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、古いタイトルを中心にシンプルながらも「スタート時のつかみ」を巧みに演出した、「オープニング」のアイデアの導入例をご覧いただきましょう。どうぞ最後までご一読ください!

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

 

黎明期の「オープニング」演出再考

前回は『ムーンクレスタ』(日本物産/1980年)をはじめ、アニメーションを採り入れた最初期の「オープニング」の例をご紹介しました。では、アニメーションが導入される以前の時代には、どんな「オープニング」の演出があったのでしょうか?

その代表例が『ギャラクシアン』(ナムコ/1979年)のように、スタートボタンを押すと独特のハイテンポなジングルが流れてからゲームが始まる「オープニング」ではないかと思われます。

「オープニング」専用のジングルを用意したタイトルは、実は本作が最初ではありません。例えば『スティープルチェイス』(Atari/1975年)には、ゲームスタート時にフォスター作曲の『草競馬』をモチーフにしたジングルが流れる、素晴らしいアイデアが導入されていました。

本作は競馬を題材にしたゲームなので、『草競馬』の一節が流れるのと流れないのとでは、プレイヤーのテンションがまったく違ってくることは明らかでしょう。

『ザ・ブラックオニキス』(BPS/1984年)や『ドラゴンクエスト』(エニックス/1986年)シリーズなどのRPGでは、主人公の名前をプレイヤーが自由に付けられ、なおかつ登場人物たちが主人公を名前で呼ぶことで没入感が高まることは、皆さんもよくご存知かと思います。

実は、主人公の名前をプレイヤーが入力できる機能はRPGに限らず、古い時代からアーケード用のアクション系のタイトルにも導入例がいろいろあります。

例えば、スポーツゲームの『ハイパーオリンピック』(コナミ/1983年)は、「オープニング」の場面でプレイヤーが入力した名前が、各競技で記録した成績とともに表示されます。競技を終えるたびに名前が表示されることで、特にプレイヤーが世界記録、あるいはハイスコアを更新したときの快感がいっそう高まります。

『出世大相撲』(テクノスジャパン/1984年)には、プレイヤーが操作する力士のしこ名を入力する「オープニング」があります。しこ名は「山」「川」など、当時としては非常に珍しかった漢字も含めた日本語での入力が可能で、なおかつ入力中は太鼓の音色が流れることもあり、プレイヤーは大相撲を題材にした本作の世界観に自然と入り込むことができます。

同じく、スポーツゲームの『ザ・高校野球』(アルファ電子/1985年)には、「オープニング」時に地区大会に参加する都道府県を選択後、学校名を自由に入力できる演出があります。なので、例えばプレイヤーの母校や、好きな甲子園の常連校の名前などを入力することで本作への没入感がぐっと高まります。

現在のアーケードゲームは、ICカードを利用したプレイデータの「セーブ」が可能となっており、タイトルごとにキャラクターやプレイヤー自身の名前を登録できるシステムも当たり前のように搭載されています。ですが、黎明期のアーケードゲームは、上記のような「オープニング」で名前が入力できるタイトルはほとんどありませんでした。

古い時代のアーケードゲームにおいて、プレイヤーが名前を入力できるのは「ネームレジスト」時、つまりゲームオーバー時に上位のハイスコアを記録していた場合に限られていました。今の若い皆さんにはなかなかピンとこないかもしれませんが、当時は名前を入力したうえでプレイできる演出があっただけでも、プレイヤーは大いにワクワクさせられたのです。

ほかにもPC用ゲームでは、例えば『スーパー大戦略68K』(システムソフト/1988年)のように、本編が始まる前にプレイヤーが指揮する国名を変更できる機能を搭載したシミュレーションゲームがいろいろあります。

主にRPGにおいて、シリーズ作品間でストーリーがつながっている場合は、ゲーム起動時に流れる「オープニング」デモ、または初回プレイの「オープニング」で、前作あるいは過去作のストーリーに触れるシーンがよく登場します。

他方、アーケードゲームではオペレーター(ゲームセンター)が儲かるようにするため、家庭用のRPGのように長尺の「オープニング」を盛り込むことは非現実的です。なので、例えば『グラディウスII』(コナミ/1988年)のようにプレイヤーが遊んでいる最中ではなく、「デモ画面」で過去のシリーズ作品に触れる演出がしばしば導入されます。

アーケードゲームで「デモ画面」ではなく、「オープニング」の演出として過去のシリーズ作品とのつながりを盛り込んだ、おそらく最古の部類に入ると思われるのが『イシターの復活』(ナムコ/1986年)です。

本作は『ドルアーガの塔』(ナムコ/1984年)の続編にあたります。前作では、主人公のギルが敵に捕らわれていたカイを最終ステージで救出し、2人が横並びになったところでエンディングを迎えますが、本作の「オープニング」でも2人の主人公、すなわちカイとギルが前作と同じ並びで登場します。

さらに2人の間には、前作と同様に重要アイテムである「ブルークリスタルロッド」が置かれ、これをカイが引き抜いたところでゲームがスタートする仕掛けになっています。よって前作を知っているプレイヤーであれば、本作の「オープニング」を最初に見たときには「新たな冒険が始まるぞ!」とモチベーションが大いに上がったことでしょう。

本作のほか、『モンスターワールドII ドラゴンの罠』(セガ、開発:ウエストン/1992年)などのタイトルにも、前作のクライマックスの場面が「オープニング」に登場する演出が導入された例があります。

ワクワク感が止まらない、独創的なアイデアが光る「オープニング」

レースゲームに導入された「オープニング」の演出の中でも、特に有名なタイトルのひとつが『アウトラン』(セガ/1986年)になるでしょう。

本作は、スタートボタンを押してもすぐに本編のレースが始まらず、最初にBGMの選択画面に切り替わります。プレイヤーがBGMを選べるアイデアを導入しただけでも当時としては画期的でしたが、加えて本作はBGMの選択画面がカーステレオを操作する場面になっていることで、プレイヤーの「車に乗っている感」が大いに高まります。

プロレスゲームの『エキサイティングアワー』(テクノスジャパン/1985年)には、各ステージの開始時に実況アナウンサーがレスラーを紹介する「オープニング」の演出があります。

本作では、アナウンサーのセリフに「ボイス」はなく、画面下部にセリフが表示されるだけですが、いかにもプロレスの実況らしい、アナウンサーの派手なアクションと軽快なBGMとが相まって、プレイヤーのテンションを大いに高めてくれます。

さらに各ステージの「オープニング」で流れるBGMをよく聞いてみると、前半のフレーズは同じですが後半のフレーズはそれぞれ異なり、最終ステージにあたるタイトルマッチでは、特に派手なメロディが流れることがわかります。

ほんの短い間だけしか流れない、「オープニング」のBGMにもこだわった本作の演出は、今さらですが実に見事であると筆者は思います。

プレイヤーに感動と驚きを提供する「オープニング」の変わり種

「ボイス」を利用した、おもしろい「オープニング」の演出を用意していたのが、シューティングゲームの『沙羅曼蛇』(コナミ/1986年)です。

本作は、ステージ1の開始直後に「敵をせん滅せよ」を意味する「Destroy them all.」と英語でしゃべる「ボイス」が流れますが、2周目以降の「オープニング」では、「ボイス」が「Try again.」に変わります。

プレイヤーが英語のリスニングができるかどうか、あるいは周囲でさまざまな音が鳴り響く中でも、はっきりと「ボイス」が聞き取れる環境がなければ気付きにくい面はありますが、こちらも1周クリアしたプレイヤーを喜ばせる、シンプルながらも実にうれしい演出ですね。

最後に、とびきり変わった「オープニング」のシーンが登場するRPGをご紹介。

以下の写真は『ヘラクレスの栄光IV』(データイースト/1994年)の冒頭のシーンですが、プレイヤーが操作するのは何とイヌ! なぜかと言いますと、本作の主人公は体を持たない魂だけの存在で、その代わりに別の人間や動物に乗り移ることができる、特殊な能力を持っているからです。

他人に乗り移れるシステムをプレイヤーに教える、「チュートリアル」の意図があったからだとは思いますが、まさか冒頭からイヌを操作することになるとは……。筆者も初めてプレイしたときには、あまりにも意外過ぎる「オープニング」に驚かされたことを今でもよく覚えています。

以上、今回は「オープニングPart2」をテーマにお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?

昨今では、多くのタイトルに長尺のムービーや主題歌が流れる「オープニング」がごく当たり前に導入され、F2P(基本プレイ無料)のスマホ用アプリやPCゲームは、ほぼ「チュートリアル」に特化した「オープニング」を採り入れたタイトルが総じて多い感があります。

ですが、古い時代のシンプルな「オープニング」の演出にも、プレイヤーのハートをつかむためのさまざまなアイデアが詰まっていることを、筆者は本稿の執筆を通じて再認識しました。

繰り返しになりますが、「オープニング」に関するくわしい解説は、「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則4-A-①:スタート時のつかみ」の項などで解説していますので、興味のある人は本書をぜひご覧ください。

それでは、また次回!

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