餅月あんこのゲーセンに行きたい!
第31回「STG大座談会をしたい!③ ~カシオ松下さん編~」
『コットン リブート!』プロデューサーのBEEP丸山満さん、開発担当ロケットエンジン代表取締役・近藤勇さん、そしてエムツー・プランナー松下佳靖(カシオ松下)さん、『GダライアスHD』(発売はタイトーから!)ディレクター辛島由紀子さんという、話題のシューティング作品のキーパーソンの皆さまによるSTG大座談会、その3はカシオ松下さんのお話を中心に聞かせていただきまーす!
名作『ティンクルスタースプライツ』の制作秘話も!
第29回「STG大座談会 その1」は、こちら。
第30回「STG大座談会 その2」は、こちら。
* 対談にご参加いただいた皆さま *
BEEP 丸山満さん
ロケットエンジン 近藤勇さん
エムツー 松下佳靖さん
エムツー 辛島由紀子さん
餅月
カシオ松下さんの絵に対する思い
松下さんにとって憧れの絵師さんは、やはり田村さんなんでしょうか。
そうですね、絵は絶対マネはできないんですけど、ある程度似せることはできると思います! 『私とコットン』でも書きましたけど、アーケードゲームに贅沢な絵がついてることってまだ当時はあまりなかったんですよね。『出たな!!ツインビー』で驚いて、『フェリオス』とかで、おお、と思って、そして『コットン』を見たときは、すごい絵描きさんがいるなぁ~とビックリしました。絵がきれいだったので、ゲームがリッチに感じられました。ゲーメストさんでも『コットン』を紹介してたので、スクラップして集めていました。それくらい私にとって特別だったので、今でも田村さんは素晴らしいかただなと尊敬していますし、ゲーム業界に与えた影響もすごく大きいと思います。
個人的に、松下さんの、田村さんの他に好きな絵、絵師さんもいらっしゃるのか知りたいです。
やっぱり『ドルアーガの塔』の篠崎雄一郎先生はすごいと思います。冨士宏先生もすごいかたで、ナムコさんのファミコンのパッケージをたくさん描かれてるというのを知ったときはビックリしました。他にも好きな絵師さんはたくさんいますが……あと衝撃的だったのは、『スターソルジャー』のパッケージに描かれてる謎の男がカッコいいな、と思ってたら、それも田村さんが描かれていたという。たぶんシューティングゲームの世界一有名なキャラクターなんじゃないでしょうか(笑)。
えーっ!
『スターソルジャー』のパッケージに描かれてる人は、ゲーム中には出て来ないんですよ(笑)。田村さんがちょうどアニメの『北斗の拳』の原画を描かれてた後なので、ちょっと『北斗の拳』っぽいテイストが感じられますよね。『スーパーリアル麻雀』の田中良さんも『北斗の拳』に携わられてたので、やはりキャラクターが肉感的になったっておっしゃってました。じつは『北斗の拳』がいろんなゲームに影響を与えているという(笑)。『スターソルジャー』の謎の人は、「パッケージに色気がないから、人間を描いてください」と言われて描いたとおっしゃってました。あとはパソコンゲームの『夢幻戦士ヴァリス』や『イース』、『イースII』のリリアとか、他にもいろいろ好きですね。
松下さんはすごくかわいくてきれいな感じの絵がお好きなんだな、と思いましたが、松下さんご自身の絵は、今教えていただいたいろんな先生がたの絵の影響をそんなに感じないというか、ひと目でわかる、すごく松下さんらしい絵柄ですよね。
そうですか? 私はゲームに合ったデザインをしたいといつも思っていて、『ティンクルスタースプライツ』の絵を描いてるときは、少女漫画風にしようと思って勉強したんですよ。デザインの学校に行ってたので、わりとそれまではリアルな絵も描いていたんですが。当時のNEOGEOのゲームは格闘ゲームが多かったんですが、予算がそんなになかったので、インパクトで勝負するしかないんですよね。選択筐体なので、ひとつの筐体に4本のゲームが入っていて選べるんですよ。そこで選ばれないと1円もお金が入ってこないんですよ。
うわあ、きびしいですね。
で、その頃、迫力のあるドギャーン! っていう音と共に、真っ黒い画面に炎が燃えてるタイトル画面のゲームが多かったんです。そこで逆にタイトル画面が真っ白い背景だったら、「あれ、このゲーム、何か白いな」って、気になって選んでくれるユーザーさんがいるかもしれないなと。わりと戦略的に……でもインカムが取れないといけないので。あと、ADK時代に上司だった牛澤さんというかたが、『クロススウォードII』っていうゲームを作ったときに、ダークな世界にすごい背景を描き込んでいらっしゃったらしいんです。でもゲームセンターで動かしてみたら、何年も使っていたブラウン管の筐体で画面が暗くなってしまっていて、何も見えなかったと(笑)。
【一同】 (笑)
「俺の『クロススウォードII』を見ろ!!」って、筐体では何も見えないっていう(笑)。で、「松下、お前はデザイナーなんだから、次に作る作品は明るい絵にしろ」って言われたんです。
ははぁ~。なるほど、そういう経緯が。
それは単に「色を明るくしろ」という意味だったらしいんですが、私は「明るい世界観」と思ってしまって。それまでは暗い世界観の設定もいいなと考えてたんですけど、勘違いもあって。で、普通に作っては、開発費が何億円もかかってる格闘ゲームに勝てないので、インパクトを与えなければいけないなと、正攻法ではない、カウンターのような作りにしました。私が在籍していた頃のADKは格闘ゲームを作っていて、『ティンクルスタースプライツ』はいろんなプロジェクトが立ち上がっているうちの1本だったんですが、格闘ゲームほど稼がなくてもいいよ、と言われたんです。じゃあ、トンカツを食べたらちょっとそうめんやアイスを食べたくなるような、そんな存在のゲームを作れたらいいかなと。
なるほど、格闘ゲームの対極のような感じで、あのかわいくてポップなゲームが作られたんですね。
(笑)とにかく『コットン』で学んだ、田村さんが教えてくれたことは、今でもすごく参考になっています。
『ティンクルスタースプライツ』キャラクターデザインのひみつ
私たちも『ティンクルスタースプライツ』、すごく遊ばせていただいたんですが、キャラクターが9人ぐらいいますよね。あれは全部松下さんが考えられたんですか?
ほぼ、そうです。もともとADKには有名な先生がいらっしゃって、私は心の中でお願いできないかと思ったんですが、企画が通って、上司に「じゃあビジュアルを先生にお願いしてきます!」って言ったら、「お前何言ってるんだ」と。「彼は広報で忙しいんだぞ。お前はデザイナーだろ!」って言われてしまって。
【一同】 (笑)
私は企画者になったつもりでいたんですけど(笑)。それで仕方なく「じゃあ、やります」と。それで、キャラクターもその時点ではまだそんなにたくさん考えてなかったので……黒歴史ノートってあるじゃないですか(笑)。それを引っ張り出してきたり、新しく作ったり。「ラビキャット」というのは、私が小学生の頃に考えたキャラクターなんです(笑)。ホントは愛着のあるキャラクターだったので会社に提供するのは引っかかったんですが……(笑)。
逆に!
「自分の考えたキャラクターがゲームに出て、いいね」って思うかたもいるんですが、ゲームが出なかったり、好評でなかったら、大事なキャラクターも不幸になりますので嫌だったんです。結果は好評だったので良かったんですが(笑)。
意外なお気持ちだったんですね……今度からラビキャット、そんな覚悟で出されたんだな~と思ってプレイしてみます!
『ティンクルスタースプライツ』はアケアカNEOGEOからNintendoSwitch、PS4、XBOXで発売中です!
次回はSTG大座談会最終回、辛島由紀子さんにお話を聞くはずが……?
どうぞお楽しみに~!