『キャメルトライ』は、こうして作られた 海道賢仁氏インタビューPart3

  • 記事タイトル
    『キャメルトライ』は、こうして作られた 海道賢仁氏インタビューPart3
  • 公開日
    2022年07月15日
  • 記事番号
    8034
  • ライター
    福地健太郎

『キャメルトライ』がどのようにして作られたのか、ゲームデザイナーの海道賢仁氏にインタビューするこの企画。
今回は、前回同様に各ステージにこめられた工夫や意図についてを、じっくりと解説していただきました。
イーグレットツー ミニでプレイしながらお読みくださると幸いです。
なお、使用しているマップ画像は、X68000版を使わせていただいております。ご了承ください。

『キャメルトライ』は、こうして作られた 海道賢仁氏インタビューPart1は、こちら
『キャメルトライ』は、こうして作られた 海道賢仁氏インタビューPart2は、こちら

このインタビューは、明治大学 総合数理学部 教授の福地健太郎先生のご発案、IGCCの協力で行われたものです。
メインのインタビュアーは、福地先生にお願いいたしました。

【聞き手】
福地健太郎(明治大学 総合数理学部 教授)
大堀康祐(ゲーム文化保存研究所 所長)
奥野博之(ゲーム文化保存研究所)

エキスパート-4「Heart of Diamond」

海道 ここは、ここまでちょっと難しい面が多かったので、スタートからコロンと落ちて、あとはわりとイージーに進める面になってます。ただ、それだけだと平板になっちゃうんで、最後だけ、「えっ」ていうぐらいの難しい面になってます。気持ち良く進んでいくと、右下のトラップに引っ掛かって、うそーん、っていう。ここ、ミスったなと思うのは、正解ルートのところに、矢印を1個入れてあげてもよかったかなと、最近自分でもプレイして思うんですけど。多分当時にそれやってるはずなんですけど、何かの思いがあって、あえてなくしたんだと思うんですよね。トラップに気が付いてほしいとか。その後、赤い矢印のところは、ほわんほわんほわんって流されるやつなんで、気持ち良く。ふんふんと気持ち良く地獄ルートに流されて、送り込まれるっていう、そういう面になってます。ここも最後は、ゴール地点は、ゴールが見えてるんだけど、なかなかゴールに入れないっていう。

―― 狭いですよね。

海道 見えてるんだけど行けないっていう、そのイライラをさせようと思って、ダイヤモンドの形のゴール地点になってます。

―― 当時、ここでゲームオーバーになってる人をよく見ましたね。

海道 ここは最後、タイマーが削られて、で、スッとゴールに入れればいいんだけど、その「スッ」がほんと、ものすごい修練しないとできない感じになってます。だから、そこは1ブロック幅だから難しいエントリーっていうことになってます。

―― それは、全体としても8ステージ中の5ステージ目なんで、殺しにいくとは言わないまでもちょっと生半可じゃないぞっていうところを見せよう、っていう意図ですかね。

海道 ここで結構削られて、(ゴール)直前にゲームオーバーになったり、ここはクリアできるんだけど、次の面は厳しくなってきて、だんだん、持ちタイムが減ってきて、追い詰められる感じになってますね。

―― この面だと、どこら辺からデザインを始めてるんですか。

海道 忘れたなー。でも、この面は多分、スタート地点の、ぐるっと、落ちたら回されてっていうところから始めて、あとゴール地点の形はあって、スタートとゴールがあったら、あとはその中間部分を。

―― つないでみたいな。

海道 どう作ろうか、みたいな感じですかね。

―― あのゴールはやりたかったんですね。

海道 あのゴールの形がやりたかった。

―― ステージ名が、「Heart of Diamond」ですから。でもせめて、ダイヤモンド形の天井のところに、くぼみを1つ付けといていただければ、そこでいったん心を落ち着けるとかできたんですけど。

海道 そうなんですけどね。でも、それだとダイヤモンドの形が崩れちゃうんで、そこは、ちょっと譲れなかった。

―― 譲らなかったんですね。ここはみんなほんと苦労したんですよ。

海道 ここはね、ほんとうまくなってくださいっていう、僕の気持ちが込められている感じですかね。なのでゴール部分はハート型。

エキスパート-5「Moulin Rouge」

―― 次見てみましょうか。

海道 「Moulin Rouge」ですね。この面は、ハイパーペースゾーンとゴー・ストップ・パネルを使ったギミックをやりたかった。ちょっと上級の役物で、こんな楽しい感じ、あるいは嫌な感じになるぞっていうのを。ここもスタート地点は、こういう、ちょっと印象に残る形でスタートする。ボタンを押してジャンプして、ぐーっと大回りして行ってもいいし、でもその途中のプラス3秒ブロック(①)を狙って、うまくそこだけにパーンと当てられればいいんですけど、ちょっとタイミングが早過ぎると、逆にマイナスブロックに当たったりとかする、そういうチャレンジング要素もちょっと入れてみて。こういうのは僕、自分であんまり考えずに自然と、サービス精神でついつい入れちゃう感じなんですけれども、全体としては、そういう上級者向けのチャレンジング要素みたいな。

―― なるほど。

海道 最初は上から下りてくると上向きの赤い矢印(ハイパーペースゾーン)(②)にほわーんと入って、何だこりゃっていう感じになります。で、助けられたなってなって、その後も基本的には追い風が吹いてくる中で、ブロックを壊して進む。ただし、そのまんま真っすぐ進んでいくと今度は逆風で、勢いよく突っ込んでいってうまく回せば、これ突っ切れるんですけれども、普通にふわふわ下りてきただけだと跳ね返されちゃって、どうしても抜けられないってなったら横のバイパスコース(③)で、取りあえず抜けてくださいと。その後、ゴーストップを幾つか体験してもらいます、と。一番最初と最後とかでは、やっぱ閉じ込められます、みたいな。「助けて」ってなったりする。あとは、途中の空間は気持ち良く、どっち行けばいいんだと思いながらも、どこ行ってもいいんだよっていう感じで抜けていってます。ただ、ここも気持ち良く抜けるには、多少テクニカルな操作が必要です。

―― その後は……。

海道 その後は普通に抜けてって、最後ゴールのところは、赤い風車でぐるぐる回されると。これ、そのまま放っとくと、ほんとにゴールの周りを風車に回されてる状態になります。ほんとは正解は、右回りに突っ込むと、ちょうどいい感じで減速されて、ゴールにすぽっと入れるんですけれども、普通に左回りに行っちゃうと、もう、どんどんぐるぐる回される。でも、最後にゴールのところに1個ピンがあるので(④)、何かの拍子にあそこに引っ掛かるんですよね。それでゴールできることがあって、今までピンにはいろいろ邪魔されてきたのに、今回だけは助かった、みたいな。救済用のピンです。

―― あれは、意識して置いたもんなんですか。

海道 そうです、このままじゃやっぱ難しいかなっていうのもあって。あそこに1本ピンを置けるのは、やっぱ才能なんですね。自画自賛ですけど。

―― 時計回りに入ったとき、そのピンが邪魔になるってことはないですか?

海道 邪魔になることもあります。ただ、あそこに当たる前に抜けられる感じなんです。

―― それまで、道に沿って黄色い矢印で、こっち行ってくださいっていうのが付いてるんですけど、ここの風車入ったときに、風車の周りには矢印付いてないんで、右でも左でも行けるんですよっていうことなのかな。

海道 そうです、どっちでも行けます。基本的には、反時計回りに回されて、どうにもならなくなることが多いんです。そこを、上級者だと逆に時計回りにインから入っていくと、ちょうど逆風の風の羽根で減速されて、すぽっとゴールに入りやすく。

―― それに気付くのも上級者の証っていうところですね。

海道 逆から行けばいいんじゃね、ぐらいの。そのときに、あのピンは、ものすごいインベタにあるんです。ここをそこまでインで回れることはないので、時計回りアプローチの場合は、ほぼ邪魔になることはないっていう、そういう配置なんです。ただ、当たることもあるにはあるんですけど、当たりに行くのは、逆に難しい感じですね。ここも、ゴールが見えているのに入れなくて、最後、「助けて」っていう、焦る状況に。

―― 2連続で仕掛けるのも、なかなか意地が悪いような感じがしますけどね。

海道 そうね。じゃあ、次にいってみましょう。

エキスパート-6「Ancient Battleship」

海道 これは「エンシェントバトルシップ」。ほんとはピンの配置をやりたかったんです。で、やってるうちに、なんか「ソルバルウ」(*01)みたいな形になってきたぞと思ったので、そういうタイトルにして、気付く人は気付いて、みたいな。ここもスタート地点は、ピンで床張ってありますけど、これはもう完全に意匠で、ただのおしゃれですね。その後は基本的には難しいところはなくて、ピンのところでパチンコ状態になって。

―― 外れがあるんですね、ちゃんと。

海道 そうです。あと途中まではそこそこの難易度で進んでいくんですけど、最後、すげービビらせようと思って作りました。ただし、このタイマーダウンに当たるかどうかは、確率2分の1ぐらいな感じでレンガを置いて。ところどころタイムプラスレンガを配置したので、それを狙っていくといいよと。でも、狙うと差し引きで損する結果になったりとかするんですけれども。だから、ここはすごいビビるんですけど、落ち着いて行くと、結構広いので、素直にゴールできるところです。なので、ちょっとビビらせるけれども、ビビらなければ勝ちっていう。ここは最後に邪魔ピンはありません。またあるやろうと思わせといてないっていう、そういう感じです。

―― タイムボーナスレンガなんですけれども、エキスパートぐらいから、トータルをプラスで取ろうとすると結構難しいところが増えてきていて、さて、どっちを狙うべきかっていうのを迷いながらプレーするんですけど、あれも製作者側としてはやっぱり悩ませるつもりで。

海道 悩ましいところに置くっていうのが。今の考えだと、もうちょっと簡単なところに、悩まないところに置けばよかったかなと思うんですけども、当時の僕としては、タイマーのプラスってインカムに直結するので、タダでは取らせないぞって。だから、ものすごくうまい人が取っていく分にはいいと。そういう人が取ったらタイマーボーナススコアになるだけで、プレイ時間の延びにはあんまり関係ないよねっていう。あとは、行くか行かないか、考えるぐらいだったら無視して抜けたほうがいいぐらいの、そういう判断をさせるところです。これ絶対取るだろうっていうのはあんまり、それだと何かおもしろくないかなっていうのが当時の僕の考えです。今の僕の考えかたは、やっぱりプレイヤーを喜ばせてあげたほうがいいなと。最近のゲーム、あんまり考えなくてもいいものが現代的なトレンドで、頭使うゲームが逆に嫌われるみたいな空気感があるので。当時としては、駆け引きをさせるっていう配置です。リスクとリターンが見合ってるぐらい、ローリスクでハイリターンっていうのはないよ、ぐらいの感じでやっています。

エキスパート-7「China Garden」

海道 これは、にぎやかな面っていうか、ここもゴーストップとハイパーペースゾーンを使ったギミックにしようと思って作りました。なので、スタート地点は最初からふわふわと上に吹き上げられて、くるっと回っていくと、ストップって止められたりとか、そういうのを狙いました。最初は素直で、奥の引っ込んだ、赤いマイナス5秒のやつ(①)も全然危険じゃなくて、こういうのもあったから思い出してねぐらいの。あと、右上のところは、別に意地悪でも何でもなく、ちょっと予測不能な動きをする楽しいところで、千鳥足になって進んでくださいぐらいの。その後は壊れるブロックとゴーストップ・ゴーストップの組み合わせ(②)で、組み合わせることによって、新しい役物になるっていう。上から突っ込んで、1個壊したところにハマった後に、ストップ状態になったら、もうボタンを連打すると全部壊せます、みたいな楽しい仕掛けで、閉じ込められてもちょっとうれしいみたいな。次は、また絶妙の位置にピンがあったり(③)とか、あのピンに蹴られて、バンパーで戻されて、何だよって。その後もゴーストップ・パネルがあって、左右から真ん中に誘導されるんですね。そうすると、たまたまあそこがストップになってたりすると、気持ち良く行けるはずなのに行けませんでしたという、引っ掛けでやられた、みたいになるのを狙ってます。これも、組み合わせることで、1個の新しい仕掛けみたいな印象になるかなという感じです。その次も、ゴーのときには抜けられるし、ストップのときはブロック壊して抜けてもいいんですけど、全部ゴーのときに真ん中だけを通っていけば、ものすごい速いタイムでするっと抜けられるっていう形になってます(④)。最後のほうもふわふわで壁に押し付けられたりとか、行きたくないコースに行かされたりとかはするんですけど、ここは安全に問題なく抜けられて、最後、ちょっとイラっとするトラップとか、ゴール前の一番右端のくぼみは、ゴーのときに引っ掛かれば何ともないんですけど、ストップのときだと抜けるのがちょっと難しくなったりとか、また微妙なピンがあったりとか。ここ、最後はもうこれ、取ってください的なプラスタイムのレンガがあります(⑤)。

―― 珍しく「取ってください」なんですね。

海道 ゴール前にゴーストップで壁作ってあるんで、ストップのときに、そこにストンと行ったときには、逆に簡単に取れるチャンスになるという。そういう、持ち上げたり落としたりがすごく激しいというコンセプトの面になってます。

エキスパート-8「Iwai Special」

―― 先ほども(お話の中で)出た「Iwai Special」です。

海道 ここは、採用厳しいというか、使えるかなと思って組んでみたら、ちょっとはいい感じかなみたいになったので、採用となりました。狭いところが多いんですけど、ちょっと分岐を覚えると、簡単ルートみたいなところに行けたりとか。で、一番左下の構造(①)が、何で入ってたんだっけなっていうのが全然思い出せないんです。相当なトラップなんです。全然行く価値がないところで、ほんとだったらつぶしとかなきゃいけないようなとこなんですけれども、盲腸のように残ってしまっています。

―― ここはでもショートカットできそうなんですけど、行ったらハマっちゃうんですか。

海道 ここ、まず入り口と出口に壊すとマイナス5秒のブロックが置いてあるので、そこだけで10秒ロスします。でもそうか、10秒ロスしても、ここ行ったら相当速いってことですね。

―― かなりショートカットできますね。

海道 ものすごいショートカットできます。なるほど、じゃあそれを狙って、残してあるんだ。

―― ただ1マス幅の通路をスムーズに抜けるのは相当難しかった記憶があります。しかも、最後ゴーストップとレンガの組み合わせなんで、相当熟達しないとプラスにはならないでしょうね。

海道 次のルート分岐、ここは内側コースより、普通に大外回りで行ったほうが、安定して早く行けると思います。イン側のコースはかなり距離的には稼げますけど、大体マイナスブロックとかタイマーダウンに当たるんで。その後は危険な面のふりして割と広い安全なゴール前通路で、最後は気持ち良く行ってほしいんですけれども、ブロック当たるたびに止まるので、この気持ち良さともどかしさの、そのせめぎ合いが一緒に味わえるっていう。ここで残りタイムが10秒切ってたときのドキドキ感、さっと行けるのに、いちいち止まる。でも、止まるというほども止まらない、ヒットストップぐらいの感じなんで、この辺のドキドキ感を狙って作ってみました。しかも最後はいやらしくヘアピンカーブを。ここまで来たのに、っていうのを。これはちょっといやらしいですよね、意地悪でやってます。

―― エキスパートの最終面なんで、それぐらいは味わわせてやろうという。

海道 そうですね。

休憩中

IGCC奥野 『キャメルトライ』を作るに当たって、『うにょん』って何か影響あったりしますか。

海道 『うにょん』は影響あります。作者さんとも高校生のときに、会ったことある。

IGCC奥野 昔、キンコミ(*02)で、海道さんが『うにょん』やってる姿を見たことあって。

海道 僕『うにょん』見てるので、影響はあるとしか言えないんですけど、作ったときには全然『うにょん』のことは頭になかった。ただ潜在意識としては、何かあったはずなんです。だから、それですっと思い付いたんだと思います。

―― あれ、いつ頃でしたっけ。

海道 ログインのプログラムコンテストですね。

IGCC奥野 そこでグランプリ取ってたんですよね。うちの兄が北川広一さんの友人で、ゲンザブロウ(*03)を連れてうちに遊びに来たこととかあったので。

―― (『ゲーメスト』の記事を読みながら)これだけ取り上げてくれるとうれしいですよね。

海道 石井ぜんじさんには、ロケテストのときから見にきてもらって。すごい褒めてくださって。

デバッグ&サウンドトラック

海道 ステージ作ってるときとかデバッグしてるときとか、もうずっと、自分1人でタイムアタックを楽しんでて。

―― ストイックですね。

海道 ほんとね、0.1秒でもタイム縮まると、やっぱうれしいんです。1面とかはもう、9秒いくつとかで終わるんですけど、そこから先の0.1秒の削りとかはめっちゃ楽しくて、やっぱそういうゲームが好きなんですよね。

―― 『キャメルトライ』の曲の話ですが、海道さんからはどういう指示があったんですか。

海道 特に何もなくて、基本お任せで。ゆっくりなやつと、あとちょっとせかせるような曲があったほうがいいねっていうのと、タイムアップが近づいてきたときにピンチのBGM出してって。そういう大まかな、こういうことをしたいんで、それに合った曲をお願いしますっていう指示書みたいなのを出しましたけど、細かくああしてこうしてみたいなものは全然なくて、ジャンルもフリーで。あ、でも今、思い出しました。そのとき言ったのは、何か運動会みたいにしたい、と。小学校でやってる運動会の競技のBGMみたいな。

―― 例えば駆けっこをやってるときの音であるとか。

海道 そうです。行進曲だったり、ハチャトリアンの『剣の舞』みたいな、そういう運動会的なBGMがいいかな、ぐらいのことは言ってました。

―― 背景はちょっとおかしな世界にしてやろうみたいなことでデザインされたとありましたけど、音のほうではそういうところは伝えてないのだとすると、何で「パーマディー」とか(不思議な感じの楽曲)が出てきたのかという疑問が……。

海道 一応、作ってる最中のゲーム画面は見てもらったんじゃないかな。その辺は全然記憶にないな。このゲームに関しては、音楽にはそれほどこだわりなかったので、もう好きにやってください、みたいな。どっちかっていうと、それよりもグラフィック部分とかのほうが、あとステージデザインとかに一生懸命だったんで。でも、効果音は、できてきたときに、バンパーに当たったときのオケヒットが鳴るじゃないですか。あの音を聴かされたときに、うん、このゲーム勝った、って瞬間思いました、これはおもしろいって。そういうとこが、割とノリとしては同人ゲーム作ってるみたいな。チームメンバーもすごい少ないですし。作りかたも適当ですね。この日本語フォントとかも、会社にいる総務のお姉さんに書いてもらったやつをそのまんま取り込んだんです。その当時流行ってた丸文字風のやつのオリジナルのフォントで。めちゃくちゃ手作りです。

スペシャル-1「In the Camel」

―― では、そろそろ続きを。

海道 スペシャルステージにいきましょうか。スペシャルの1面、どんなんだったかな。

―― ラクダ面です。

海道 これはラクダの形の面をちょっと作って、みんなに見せたかったから収録してみましたっていう。形優先なので、難易度はあまり気にしてなく、普通に取り回したら、こんな形になりました。ゴールのところは、今までとはちょっと趣の違う仕掛けを。

―― このステージ作ったのって、『キャメルトライ』っていうタイトルに決めた後なんですか。

海道 『キャメルトライ』っていう名前は、開発前の企画書の段階で、もうその名前。

―― じゃあ、タイトルのほうが先だったんですね。

海道 タイトルが一番先ですね。元々『キャメルトライ』ってどっかで思い付いて、ストックしておいた名前なんです。当時はシューティングゲームか何かに使えばいいかなみたいに思ってたんですけれども、このゲームを最初に考えたときに、これ『キャメルトライ』合うんじゃないのって思ってその名前にしたら、誰からも疑問視されずに、そのまま製品化されました(笑)。僕、当時タバコ吸ってたんですけど、このゲームを作った後にキャメルライトに銘柄変えましたもん(笑)。何か、キャメルでトライっていうのが、意味もありそうでなさそうな感じで。あと、ラクダがキュートな感じなんで。ついでにそのロゴデザインも、僕が自分でやりました。それも誰からも突っ込まれずに、みんなこれでいいと思ったらしくて、そのまま通ってしまいました。それで、ちょっとラクダの面を作ってみようかなと。ちなみに『キャメルトライ』に描かれるラクダの絵とかは結構適当で、ひとこぶラクダのやつもあれば、ふたこぶラクダの場合もある。この面はふたこぶでやらせていただいてます。これももう、ラクダをやりたいだけの、ネタだけの面だったので、全体的にはちょっと簡単めに作ってるんですけど、足のところとかはどうしても難しくならざるを得なくて、なのでスペシャルの1面に持ってきた感じになってます。

スペシャル-2「Dolphin Passage」

海道 じゃあ、次いってみましょうか。スペシャルは、意地悪な面いっぱいですから。これは2面ぐらいに、ちょうどいいぐらいの難しさですかね。今までとは少し違って、スタート地点から脱出するぐらいの感じになってます。これも当時何考えて作ったのかなってわかんないのが一番下の部分で、これ、左右ループしてるんですけど、全然ショートカットにも何にもなってなくて。一応、左下の赤い矢印で囲まれてる4つのブロック(①)は全部ボーナスブロックで、全部壊すとひょっとしたら得するかもしれない感じにはなってるのかなと。ただ、くわしいことは忘れちゃいました。スタートのところは、任天堂のピンボールっぽくやりたかったんだなと思うんですけれども、途中で断念して、シンプルな形になってます。それから木のエリアに入って(②)、狭いんだけれども引っ掛からないところを気持ちよく抜けたら、今度はずっとヘアピンカーブを行かなければならない。最後、でっかいゴールに、どこでもいいから飛び込んでっていう構成になってます。

―― 右上のところは、慣れると気持ち良い感じでごろごろ転がせますよね。

海道 そうです、そうです。ひゃっほーって。最後のゴール前のセクション(③)は、左右にあるバンパーをうまく使って、当たって跳ね返って、またバンパーに当たって跳ね返って抜けていくと、気持ち良く、しかも早く抜けられて点も稼げるっていう構成になってます。なので、わざわざバンパーに当たりにいくために無駄な動きになっちゃう人もいたりとかして。ただ、スムーズに当たると、ほんと気持ち良くいけるように作ってます。気持ち良くプレーするには練習が必要で、その練習中はすっげーイライラするんです。ただ、それができるようになるとすげー気持ち良くて、ギャラリーが見てても、すげー、何このハイテク、みたいな感じになる見せ場でもあります。

スペシャル-3「Techno Cave」

―― 次は3面で、「Techno Cave」っていう名前です。

海道 これは、ちょっといやらしめの面です。スタート地点から下に壊しながら進んでいく。全体的には、ここもちょっとピンボールっぽいイメージの洞窟を目指した感じ、って何だそれは(笑)。ちょっと覚えてると得ができるゾーンみたいなのが少しずつ挟まってる感じですね。いやらしいのが真ん中の一番上で、これは多分、ちょっと珍しい張り出しかたのタイマーダウンブロックがあると思うんですけど(①)、3方向どっからでも当たってしまう、みたいな。

―― タイマーダウン、全体的にいやらしいですよね。

海道 アーケードゲームなんで、タイム削らないと商売にならないので、ちょっといやらしくやらせていただいております(笑)。
 そこを抜けると、意味はないんですけど、見た目にはちょっと新しい構造をやろうということで、ピンで囲まれた部屋を抜けていくと、このバンパーを利用してブロックを壊してください、みたいな引っ掛けが(②)。でも、うまい人はほんとにきれいに当たって跳ね返して一発で行けるんですけど。それに固執するとハマってしまったりとか。素直に上からぶつかったほうが早く抜けられたり、こだわると損をするよ、みたいな。その後は、またゴーストップに悩まされながらも、最後は素直にゴールしてください、いう感じになってます。これは、ゴール前の赤矢印ゾーンが追い風になるので、うまく吸い込まれて、あとはもう、ゴールしてくださいよ、みたいな形になってます。全体的に結構、テクニカルな面です。危ないところはないんだけど、ちょっといろいろ引っ掛かっちゃうみたいな。
     

今回は、ここまで。
次回も、どうぞお楽しみに。

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『イーグレットツー ミニ』は、1996年に登場したアーケード筐体を卓上サイズで再現し、1978年発売の『スペースインベーダー』から1997年までの間にゲームセンターで活躍した40タイトルのゲームを内蔵したゲーム機です。本体だけでゲームを楽しむことができます。
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今回ご紹介した『キャメルトライ』は、この拡張セットに収録されています。ご興味のあるかたは、ぜひ!

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※その他、記載されている会社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。

脚注

脚注
01 ナムコの『ゼビウス』の自機の名称
02 金沢コミックマーケットのこと
03 北川さんの愛機MSXにそういった名前がつけられていた

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