ゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」を作った理由 前編

2019年のアケ活も締めくくり!……といっても、ゲーセンさんの年末年始は営業時間延長も含めてずっと営業です(し、わたしも先日サービスリリースした「アケシェア」の仕込みで稼働します♪)が、今回は一応2019年締めくくりとして書かせていただきたいと思います。
2019年に書かせていただいてきた「ゲーセンマーケティング」の考え方をベースにした活動の一つが、ゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」の発行。今回は、おくむらがこの「ゲーセンさんぽ」を2016年から年1回ペースで発行することになった理由について、マーケティングの観点から書いていきたいと思います。

趣味嗜好でのターゲティング

広告代理店がクライアント企業であるブランド担当者に行う初回ミーティングの場で、よく出る質問の一つが、「ターゲット(ユーザー)は誰ですか?」です。回答としては、「30代の独身男性ですね」みたいなところからスタートします。皆さまもテレビなどでF1層F2層、というような言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか(FはFemale(女性)のこと。男性はM(Male)、子どもmはC(Child)で表されます。F1層とは20~34歳の女性、F2層とは35~49歳の女性を指します)。

最近は、企業がターゲットユーザーを設定する際、こういった年齢別のような縦型の分け方(ターゲティング)よりも、「趣味嗜好でのターゲティング」を考えることが、当たり前になってきました。
共通の年齢、共通の性別のような縦の割り方ではなく、“共通の趣味・興味・関心・価値観(トライブ)”で割っていくというやり方です。

ユーザーからすると「何をいまさら」と思うことですが(笑)、マーケティングの世界ではすごく大きな変化でした。何故なら、“共通の趣味・興味・関心・価値観”で割ると、縦割りでいう世代や性別などは超えてしまうからです。

さらに、このトライブとトライブを掛け合わせるという方法も出てきました。“共通の趣味・興味・関心・価値観”同士をかけ合わせると、ターゲティングが広がったりそのトライブの“強度”があがったりするのです。

例えば、ブラタモリというテレビ番組で考えてみましょう。この番組の持つトライブには「タモリさん」「街歩き」「観光」「地形」「地図」「歴史」「大河ドラマ」「都市伝説」「怪談」などなどが考えられます。“共通の趣味・興味・関心・価値観”が複数あり、しかも隣同士の言葉の持つイメージが近い、ということがわかります。

年齢や性別で切るよりも、「歴史」だけで番組を作るよりも、ターゲットユーザーが横に広がり、また近い“趣味・興味・関心・価値観”を持つ人同士がつながって、「強度」が出るわけです。

この項の写真は、おくむらなつこさん提供。

コンテクスト

この強度を高めるものが、文脈(物語性)です。
例えば日経新聞と東スポは同じ「新聞」です。ですが、「なんとなく日経新聞と東スポは“違う”」と思う人が多いと思います。そのとおり、それぞれの新聞への掲載基準はもちろん違うでしょうし、両新聞でまったく同じニュースを報じたとしても記事タイトルの付け方や取材の角度、結果、書き方(報じ方)は違うものになるでしょう。わたしたち読者からの受け止められ方も違いますし、そのニュースの拡散のされ方も違います。

また、まったく同じ企業のプレスリリースが各SNSで拡散される際、twitterとFacebookとInstagramでは、拡散のされ方やユーザーの求めるものが違います。これは各SNSの持つ文脈がそれぞれ違う、ということを指しており、そこに明確な“メディアコンテクスト”が存在していることを表しています。

このように文脈(コンテクスト)というのは昔からあるもので、見渡すといくらでも見つかるものです。そして、こういったコンテクストの違いは、ブランド・メディア・エンタメコンテンツなどがそれぞれ持っています。

これらの違いを活かすには、縦割りのマーケティングではなく、オンライン×イベント×PR×広告×メディアというように、連携させた横串のコミュニケーションデザインを考えることが必要です。
“共通の趣味・興味・関心・価値観”に文脈(コンテクスト)をかけ合わせ、強度を上げるのです。

趣味嗜好×コンテクスト

では “趣味嗜好ターゲティング”דコンテクスト”へのマーケティングの変化が、消費者にはどういう変化として伝わっているのでしょうか?

例として自動車メーカーのCMを挙げてみましょう。
オーソドックスな昔ながらの手法だと
「●●機能、●●機能があります!」「スピードは何キロまで出ます!」「この機能がついた車、価格はいくら!」
というCMになります。が、
「家族全員でキャンプへ行こう!」「この車で行くと、こんな体験ができますよ!」
という訴求方法に変化してきていることにお気づきでしょうか。
これが、トライブ×コンテクストがかけ合わさったマーケティング手法です。

他にも、Appleファンの方の中には「単純に機能だけを比較した時、iPhoneよりも、とあるandroid製品の方が圧倒的に良かったとしても、iPhoneの最新機種が出たからiPhoneの最新機種を買いたいんだ」という方がおられます。これはプロダクト(コンテンツ)重視でその機能を買うのではなく、AppleのiPhoneという物語性を買われているということになります。

このように、買ってほしい“ターゲット”に向けて“ターゲットに簡潔に伝える”というマーケティングから、共通の嗜好・趣味・興味・関心・体験をコンテクストに乗せ、体感・共感を呼び込み、それらから得られる“体験”を想像してもらえるように伝えるマーケティングへ、伝える側も伝えられる側も変化をしています。

以前の記事にも掲載した、スターバックスコーヒーの“Starbucks eGift”。これもそうです。
オンライン上で、友だちに、メッセージにスターバックスのドリンクを添えて贈れるギフトサービスで(スタバのサイト上では、もっと簡単にLINEでも贈ることができます)、「“コーヒーというプロダクト”を●●円で買ってあげる」のではなく、「おつかれさま・今日はありがとうなどの気持ちを贈るときに、コーヒーを添える」という文脈になっています。

繰り返しになりますが、スタバは機能としてはコーヒーショップですが、スタバに行くという行動は、コーヒーを味わいに行くよりも上位に、“気持ち・気分をゆったりさせに行く”というスタバ“体験”を、プロダクト上で表現できているのです。

次回予告

ゲーセンの話が出る前に、前編が終わってしまいました……(すみません)。
次回は “共通の趣味・興味・関心・価値観”に文脈(コンテクスト)をかけ合わせるマーケティング手法で見たゲーセンマーケティングに、足りないものについて改めて振り返り、「ゲーセンさんぽ」発行のストーリーへと進ませていただければと思います。

おくむら なつこ / ゲーセン女子(Game Center Girl)

『「好き」がある人生は楽しい。「好き」を持つ人は強い。「好き」と言える毎日は嬉しい。』

ファンマーケティング支援会社の一員として研鑽を積む一方、「330日ゲーセンに通うOL」として、クローズアップ現代+、マツコの知らない世界、お願い!ランキング他多数に出演。

2015年、ゲームセンターを専門にマーケティング/PR支援するGCGを立ち上げ。アーケードゲームやゲーセン全般を紹介しながら文化としての「ゲーセン」を広めるべく活動、ゲーセン文化づくりに取り組んでいる。

注目されるファンコミュニティやe-Sportsシーンなどを背景とした需要の高まりを受け、2019年よりアーケードゲーム機シェアリングサービス「アケシェア」を開始。

こんな記事がよく読まれています

2019年09月27日

『ナイトストライカー』を作った男たち 前編

海道賢仁×津森康男 ダブルインタビュー 今からちょうど30年前の1989年、タイトーからリリースされた名作シューティングゲームが『ナイトストライカー』である。セガの体感ゲームの数々が人気を博していた当[…]

2019年10月18日

なかったはずの海外アーケードゲームを楽しむ男 前編

1980年代初頭から「ゲームブティック高田馬場」(すでに閉店した、高田馬場にあったナムコ直営のゲームセンター)を中心に、海外のアーケードゲームのおもしろさを多くのプレイヤーに広めた男がいた。自分の好き[…]