ゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」を作った理由 後編
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- 記事タイトル
- ゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」を作った理由 後編
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- 公開日
- 2019年12月20日
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- 記事番号
- 2441
目次
ゲーセン女子・おくむらがゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」を2016年から年1回ペースで発行することになった理由について、マーケティングの観点から書きはじめた前編。
後編の今回も引き続き、“共通の趣味・興味・関心・価値観”に文脈(コンテクスト)をかけ合わせるマーケティング手法でゲーセンのマーケティングを考えつつ、12月発行する新刊「ゲーセンさんぽ4」にまで繋げていきたいと思います。
ゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」を作った理由 後編は、こちら。
ゲーセンのコンテクスト
前編でまとめてきたように、わたしたち生活者(ユーザー)の、普段の生活では、もはや“共通の趣味・興味・関心・価値観(トライブ)”×文脈(コンテクスト)での訴求が当たり前になりました。
しかし、共通の趣味・嗜好が当たり前のはずの“ゲームセンター”では、そのことが圧倒的にできていません。
それは何故でしょうか。
下記はゲームセンターでできていない理由を考えてみたものなのですが、みなさまもいくつか思い当たることがないでしょうか。
●ゲームタイトルというコンテンツ力が強力(だった)で、熱狂的なユーザーが多い(多かった)。結果「ゲームメーカーが作ったゲーム=コンテンツ」こそが、ゲーセンという場において、絶対的なものである(あった)
●ゲームタイトル(コンテンツ)自体にはメーカーが考えた文脈があるが、コンテンツを集めて置く場でしかないゲーセンは、ゲーセン自体のそれを考えた経験が、圧倒的に少ない(コンテンツに乗っかっていればユーザーは勝手に来てくれたから、マーケティングなど深く考える必要が少なかったり、そういう焦点がゲーセン自体に当たった経験がそもそも少ない)
●熱狂的なアーケードゲームユーザーにとって「コンテンツに関する正しい情報」「自分がゲームによって得られる報酬」以外は興味があまりないことも多かった(=ゲーセン営業に直結するインカムにコンテクストなどが影響を及ぼさなかった)←わたし自身がガチ勢でそういうところありまして(笑)。
でも、現状は、現在ゲーセンに来てくれているアーケードゲームユーザー「以外」を取り込めないと厳しくなっています。
ゲームタイトル間や店舗間で、現在ゲーセンに来てお金を入れてくれているユーザーを取り合っても、いちユーザーの、アーケードゲームに使える上限金額や上限時間はもちろん決まっています。だから「beatmaniaⅡDXとmaimaiとCHUNITHMと太鼓の達人とで既存ユーザーを取り合う」のではなく、新規ゲーセンユーザーを作らないとダメだ、と言われています。
当然ながら、
●ゲームタイトル(機能、機械)頼み
●いい機能(タイトル)を持ついい機械を置いているのに人が来ないのは、タイトルの問題
●ブランド(メーカー)がターゲティングした生活者に、機能を訴求していく
これらにはもはや限界が見えています(ファンマーケティングから考える、ゲーセンのマーケティング 前編を参照)。
なにせ、わたしたち生活者は、賢くなっています。
ゲーセン以外では“トライブとコンテクストで良いものを訴えるようになってきた世界”で当たり前に生活し、当たり前にそういう経験・体験を積んでおり、SNSでナマの声を拾う方法を知っていて、しかもそれらを「飲む情報」(新聞のような文字数を読む「噛む」情報ではなく、ソーシャルニュースのような大量のデータの中から欲しい情報を取り出す)として大量に浴び、自分にとって欲しい情報を取り込むことができるようになっています。
そこに、昔の当たり前だった「機能訴求」のマーケティングを当てても、生活者はピンとこないし、欲しい情報として選びません。
特に、若い世代ほど、昔ながらの、ターゲット別機能訴求広告、は経験していません。
いきなり“●●の機能が搭載された、良いアーケードゲームのタイトルがあります! さあプレイしてください!”と言われても、理解がしづらくなってきているのではないでしょうか。
ゲーセンのコンテクスト(文脈)って何だろう?
機能を訴求しても効果が得られにくい、では“共通の趣味・興味・関心・価値観”に文脈(コンテクスト)をかけ合わせる場合、ゲーセンに当てはめるとそれはどうなるでしょうか。
ゲームは、趣味・嗜好でのターゲティングが得意です。“共通の趣味・興味・関心・価値観”を持つ人達への訴求は、アーケードゲームでも得意なことです。
では、もうひとつの軸「コンテクスト」は何でしょうか。
新規ユーザーを取り込むための、生活者が一般的に思いつくレベルの、「ゲーセンの文脈」とは何でしょうか。
「コンテクストから考えてみる、ゲーセンのマーケティング(ゲーセン女子)後編」の振り返りになりますが、非常に狭い文脈しかもっていない、と感じています。
そしてその中にはネガティブワードが多いです。
暗い・汚い・うるさい・タバコ臭い、というようなものです。
ポジティブなゲーセン文脈は、本当に細く、数も少ないのではないでしょうか。
何より、ゲーセンのコンテクストは、昔から増えてはいないのではないでしょうか。
レトロゲームといわれるゲームたちが現役だった時代から、2019年のゲーセンは随分進化をしていますが、未だに、一般的な生活者(新規ユーザーとして取り込んで行きたいひとたち)の思うゲーセンの文脈は「暗い・汚い・うるさい・タバコ臭い」というような昔のゲーセンのイメージのままで止まっているのではないでしょうか。
そして、現役のゲーセンユーザーであっても、「ゲーセンのコンテクストは思いつかない」という方も多いのではないかと思います。
ご自身がプレイされている、好きなゲームタイトルの文脈なら思いついても、ゲーセン各店そのものへの文脈を、生活者に伝えられる形で話せる、という方は多くないのではないでしょうか。
「ゲーセンさんぽ」を作った理由
世の中に、コンビニ・百貨店・書店など、“メーカーの良い商品を集めて売る場”は複数あります。
繰り返しになりますが、書店では、趣味嗜好×コンテクストをつくるため、文脈に変化を作ってきているところがあります。
“料理ジャンルの本であれば、新刊在庫関係なく、マンガも雑誌も評論本も関係なく、何ならグッズも一緒にした売り場にする”本屋
“コーヒーが飲める”本屋
“泊まれる”本屋
というような感じです。
「目的的」に買う人しか入らない、図書館のようにビシッと並列された整然とした売り場で、目的のものをまっすぐ見つけにいき、見つけたらまっすぐレジへ
というお店から
“ゆっくり”“趣味を広げられる”“待ち合わせする”場所へ。
これはあたらしい、趣味嗜好×コンテクストです。
本屋のもつコンテクストに、ポジティブワードのコンテクストがひとつ増え、ふたつ増え、そのうち社会全体から見たときの本屋へのイメージに、変化が起こります。
社会全体からの変化はやがて、来店者を増やす(※購買者ではない)ことができるようになります。
何故、ゲーセンでゲームをするのか。
ゲーセンでゲームをすることが与えてくれる体験価値とは、何なのか。
これらを、もっともっと、業界全体で考え、訴求し、コンテクストを増やしていきたい。
わたしは別にゲーセンの人でもなく(笑)、業界に発言力もまったくありませんが、自分なりに、ゲーセンのコンテクストを考えました。
そしてその勝手に妄想したコンテクストのうちいくつかを、社会(※業界ではない)に発信していくために、新たなゲーセンの文脈を増やしていくために、ゲーセン専門誌「ゲーセンさんぽ」の発行、という形をとりました。
20年来ゲーセンが大好きでい続けているいちユーザーから社会へ。ゲーセンにおける趣味・嗜好×コンテクストの、提案です。
これが正解だ!というわけではなく、できればこういった、「社会へのゲーセンのコンテクスト発信」がもっともっと増えれば良いなと思っています。
ゲーセンが、ゲーセンユーザーが、ひとつひとつは小さくとも、地道に口コミし続ける。
その結果、数十年後には新しいゲーセンのコンテクストが生まれて、暗い・汚い・タバコ臭いというイメージを上書きできるのではないでしょうか。
幸い、現代はSNSはじめ、「好き」な人が発信できる場があります。
ゲーセンという“場”を中心に、ゲーセンとユーザーが一体となって、生活者の変化・社会の進化に合わせた発信をしていき、ゲーセン文化の花開く2020年になれるように。
ゲーセンさんを応援しながら、わたしも頑張りたいと思います。
2019年のゲーセン女子活動
●2月 JAEPO 主催者ステージのお手伝い、
企業対抗ゲーム大会JAEPOステージ司会
「ゲーセンさんぽ」販売
ゲーセン女子主催WCCF店舗大会開催inPORT24浜松店
●8月 JOYLAND大和田店 周年祭 footistaイベント ゲスト
●11月 NAGANO eスポーツフェスティバル in 長野千石劇場 総合司会
アーケード「鉄拳7FR ROUND 2」プレイヤー交流イベント”NEXUS”in巣鴨namco店
1ヶ月1万円からのオフィス向けアーケードゲーム機シェアエコサービス「アケシェア」サービススタート
●12月「ゲーセンさんぽ」Vol.4発行
2020年もどうぞよろしくお願いいたします。
最後に。宣伝です。
「ゲーセンさんぽ」の新刊「ゲーセンさんぽVol.4」を、12月末に発行いたします!!
こちらはAmazonでの販売の他、12月29日(日)のコミックマーケット97「南地区|“ナ”ブロック|09b」にて販売いたします!
アケシェアの相談会や発行済「ゲーセンさんぽ」の販売もいたします。年の瀬ですが、ぜひ遊びに来てください!
おくむら なつこ / ゲーセン女子(Game Center Girl)
『「好き」がある人生は楽しい。「好き」を持つ人は強い。「好き」と言える毎日は嬉しい。』
ファンマーケティング支援会社の一員として研鑽を積む一方、「330日ゲーセンに通うOL」として、クローズアップ現代+、マツコの知らない世界、お願い!ランキング他多数に出演。
2015年、ゲームセンターを専門にマーケティング/PR支援するGCGを立ち上げ。アーケードゲームやゲーセン全般を紹介しながら文化としての「ゲーセン」を広めるべく活動、ゲーセン文化づくりに取り組んでいる。
注目されるファンコミュニティやe-Sportsシーンなどを背景とした需要の高まりを受け、2019年よりアーケードゲーム機シェアリングサービス「アケシェア」を開始。