「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第七回 ステージ表示の優れた演出

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第七回 ステージ表示の優れた演出
  • 公開日
    2020年07月31日
  • 記事番号
    3257
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。
この第七回目で取り上げるテーマは、初期のアーケードゲームで、さまざまな工夫が施されていた「ステージ表示」です。
主にアクションやシューティングゲームにおいては、敵を全滅させたり、ゴール地点に到達するとステージクリアとなり、次のステージへ進むというルールを採用しています。
このようなタイプの作品では、プレイヤーが今遊んでいるステージを「STAGE1」「ROUND2」などという形で表記していることは、皆さんもよくご存知のことでしょう。
  
  

「『ステージ数』の表示が、なぜ『ゲームニクス』につながるの?」と思われるかもしれません。実は、いざ調べてみるとプレイヤーを夢中にさせる仕組みがここにも盛り込まれているのです。
以前にご紹介した「ネームレジスト」と同様に、今や「消えた文化」に限りなく等しい演出ではありますが、ゲームの歴史・文化を語るうえでは欠かせない一要素であると筆者は確信しています。
それでは早速、「ステージ表示」における秀逸な工夫の数々をご紹介していきましょう。

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

カッコよくデザインされた「ステージ表示」はプレイヤーの「勲章」に

「ステージ表示」は、前述したように「STAGE1」「ROUND2」などと表示しておけば、プレイヤーに現在地点(到達度、または達成度)を示すという目的は十分に果たせています。ですが、単なる数字の表示にとどまらない、独創的なデザインを施した「ステージ表示」が古い時代からいろいろ登場しています。

例えば『ギャラクシアン』(ナムコ/1979年)では、「ステージ表示」をフラッグ(旗)の数で、『ディグダグ』(ナムコ/1982年)では数字とともに花の数で示しています。
  
  

そもそも、「ステージ表示」を凝ったデザインにすることにどんな意味があるのでしょうか? 見た目が華やかになることがまず考えられますが、プレイヤー目線で解釈すると、そこにはもっと大きなメリットがあります。
その答えはズバリ、「ステージ表示」そのものがプレイヤーにとっての勲章、すなわち実力を示すバロメーター、あるいはステータスシンボルとしての役割も果たすからです。

その最もわかりやすい例が、『ギャラガ』(ナムコ/1981年)の「ステージ表示」でしょう。
本作では、5角形のエンブレムのようなマークを使用して、1面は1個、2面は2個、3面では3個の同じマークを並べ、プレイヤーに現在地を示してくれます。
さらに、5面に進むと「5」と描かれた少し大きなマークが表示され、10面ではもっと大きい、まるで王家の紋章を想起させるカッコいいタイプのものが登場します。
ほかにも、20面に到達すると王冠、30面は鳥、そして50面では「V」と描かれた、実に凝ったデザインのマークへと変化していきます。

つまり『ギャラガ』のようなタイトルでは、先のステージに進むとカッコよくデザインされたマークがどんどん登場することによって、プレイヤーはまるで勲章をプレゼントされたかのような気分になり、大きな達成感を得ることができるのです

『ギャラガ』の「ステージ表示」について、本作のグラフィックデザインを手掛けた、元ナムコの「Mr.ドットマン」こと小野浩氏にお話を伺ったところ、「ステージ表示は『ギャラクシアン』からあったものですが、当然それよりも絵としてグレードアップしたものをということでデザインしました。企画サイドからは、特に絵柄の注文はなかったように思います」とのことでした。プレイヤーをより楽しませようと、デザインのプロが独自に編み出したこのアイデアは、まさにゲーム史に残る偉業ではないかと思います。
  
  

また、『ギャラガ』よりも先に登場した『パックマン』(ナムコ/1980年)でも、各ステージに出現するフルーツターゲット(ボーナス得点アイテム)を画面下部に並べ、ステージ数を示すアイデアがすでに導入されていました。
本作では、最も得点の高いフルーツターゲットはカギ(※取ると5,000点)ですが、カギが出現するのは13面からなので、ここまで到達するにはかなりの実力が求められます。

その結果、「僕は『カギ面』まで行ったことがあるぞ」といった言い方で、プレイヤー間でお互いの実力を比較することができるようになりました。本作ならではの「ステージ表示」が、一種のプレイヤーカルチャーを生み出したという点でも特筆に値するでしょう。

ちなみに、『戦場の狼』(カプコン/1985年)では1面クリアするごとに、画面下部にそのものズバリの勲章を1個ずつ表示するようになっていました。こちらもプレイヤーの腕を称える素晴らしいアイデアですね。
  
  

もうひとつ、『ギャラガ』などのタイトルでは、「ステージ表示」を利用した見事なアイデアがあります。
それは、デモ画面に切り替わった後も「ステージ表示」を消さずに残しておくことです。
あえて「ステージ表示」を消さないことで、ほかのプレイヤーに対し「前に遊んだ人は20面まで進んだのか。うまいなあ」と思わせたり、「アレ? こんなマークは今まで見たことないぞ。この人は何面まで進んだのかな? ヨシ、自分も同じところまで行けるようになってやる!」などと競争心を煽る効果もあると言えるでしょう。

また、『バブルボブル』(タイトー/1986年)では、その日に遊んだプレイヤーの最高到達ステージを教えてくれるデモ画面を用意し、プレイヤーに競争意欲を煽るアイデアが導入されています。

私事にて恐縮ですが、筆者は小学生時代のある日、『ギャラガ』のデモ画面に目を向けたら、今まで見たことがないマークが表示されていたので、すごくビックリした思い出があります(※その正体は、下記の写真にも写っている30面のマークでした)。
デザインがあまりにもカッコよかったので、「今すぐ遊びたいけど、ゲームを始めたらこのマークが消えちゃうのは寂しいなあ……」と、その日はしばらくの間、ずっとマークだけを眺め続けていました。
  
  

ハイスコアランキングにおける「ステージ表示」の工夫

アーケードゲームのハイスコアランキングでは、得点とともに到達ステージを併記するタイトルが数多く存在します。
実はここでも、「ステージ表示」に独自の工夫を加え、プレイヤーを夢中にさせる仕掛けがいろいろと導入されています。

その典型的な例は、全面クリアした場合はステージ数の代わりに「ALL」と表示する演出でしょう。
これによって、全面クリアしたプレイヤーと最終ステージでゲームオーバーになったプレイヤーとが明確に差別化され、前者はさらなる優越感を得ることができます。
  
  

「ALL」を表示するアイデアをさらに発展させたのが、『メトロクロス』(ナムコ/1985年)や『バラデューク』(ナムコ/1985年)になるでしょう。
前者は全面クリア時に「SIR」という英語の敬称を、後者は王冠の絵を表示することで、プレイヤーにさらなる優越・達成感を与えてくれます。

また、『コズモギャング・ザ・ビデオ』(ナムコ/1992年)では、全33面をクリアしたプレイヤーのハイスコアランキングには、ステージ数が「34」と表示されるようになっていました。
つまり、「このプレイヤーは最終面でゲームオーバーになったのではなく、ちゃんとラスボスを倒してクリアしましたよ」と教えてくれているわけですね。
  
  

ハイスコアランキングで、ちょっと変わった「ステージ表示」のシステムを導入している例としては、東亜プランが開発した縦スクロールシューティングゲーム『究極タイガー』(タイトー/1987年)や『TATSUJIN(達人)』(タイトー/1988年)があります。

これらのタイトルでは、プレイヤーの最終到達地点を特定のステージごとに区切らず、どれだけ先のマップへ進んだのかを「AREA」という単位(数字)で表示します。プレイヤーはスコアとともに「AREA」の数字も覚えておけば、前回プレイ時よりもうまくなったのか、あるいは先のステージまで進むことができたのか、より比較がしやすくなると言えるでしょう。
  
  

まだまだあります! プレイヤーを夢中にさせる「ステージ表示」の工夫

これまでにご紹介したものとはまったく異なる方法で、「ステージ表示」に工夫を施し、プレイヤーを夢中にさせた例もあります。

以下の写真は、『1942』(カプコン/1984年)のステージ開始、およびリスタートの場面です。
本作は全32面ですが、1面では「LAST(残り)32 STAGE」、2面は「LAST 31 STAGE」というカウントダウン方式を採用しています。
このアイデアによって、プレイヤーにあと何面で最終ステージに到達するのかを明確に伝えることができます。

同じく、カプコンが発売した『ソンソン』(カプコン/1984年)でも、最終地点までどれだけの距離が残っているのか、画面上部にカウントダウン方式で示すアイデアが導入されています。

このようなカウントダウンのアイデアは、プレイヤーに最終目標を明示することによって、モチベーションを維持する優れた方法と言えます。
くわしくは、サイトウ・アキヒロ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則4-A-② 最終目標の設定」のところでも説明していますので、興味のある方はぜひご覧になってください。
  
  

   
   

ほかにも、「ステージ表示」を利用してゲーム開発者が粋な演出を盛り込んだタイトルがあります。

その一例が『ドラゴンバスター』(ナムコ/1985年)。
本作は全12ラウンド(ステージ)あり、12ラウンドクリア後はラウンド9~12の間を無限ループします(※2周目のラウンド9はラウンド13と表示されます)。
そして通算ラウンド99をクリアすると、ラウンド100以降は数字の代わりに「GIVE UP」と表示され、プレイヤーを称えてくれるのです。

また、『スターフォース』(テーカン/1984年)は各エリア(ステージ)をアルファ、ベータ、ガンマ……とギリシャ文字で表記しています。
ギリシャ文字は、最初のアルファから最後のオメガまで全部で24文字ありますが、もし25面に進んだ場合はどうなるのでしょうか?

実は、25面では「∞(インフィニティ)」と表示され、26面以降は「∞」に固定されるようになっています。
こちらも『ドラゴンバスター』と同様に、まるでゲームの全世界を制覇したかのような気分になれて、とてもうれしくなりますよね?
  
  

以上、今回は「ステージ表示」について考察してみましたが、いかがでしたでしょうか?

アーケードに限らず、近年はステージクリア方式のアクション、シューティングゲームがあまり登場しなくなったこともあり、かつてのアーケードゲームのような凝った「ステージ表示」のデザインというのは、「消えた文化」に限りなく等しいかもしれません。

しかし、ゲームセンターという多くの人が出入りする場において、少しでも人の目を引き、遊んでもらおう、コインを投入してもらおうとする数々のアイデアは、ビジネス、アート、カルチャーいずれの面においても、優れた知恵の結晶であると言えるでしょう。
先人たちの創意工夫には、改めて敬服するばかりです。

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