「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第11回 *「オホーツクに消ゆ」の音楽を紹介するんダーッ! 捜査4日目*

  • 記事タイトル
    「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第11回 *「オホーツクに消ゆ」の音楽を紹介するんダーッ! 捜査4日目*
  • 公開日
    2020年12月04日
  • 記事番号
    4279
  • ライター
    イチハラ指揮者

元気ですか! 元気があればなんでもできる。元気があれば網走刑務所にも入れる!(ダメです)

突然ですが、皆さんはニポポ人形を見たことがありますか?
私はあります。
昔、遊びに行った友だちの家で見た気がします。
このゲームのことを知っていたので、何となく恐怖を感じたのを覚えています。
別に怖い人形じゃないのにごめんよ、ニポポ人形。

追跡(真相~追跡)

「真相」

で、で、で、ででででで出たーッ! オホーツク最恐曲!!!
できれば聴きたくないッ!!! 怖すぎるッ! 子供が泣くぞォッ!

これ確か、最初に流れるのが奥村の家なんですよ。
それも何の心構えもないうちに突然ですよ。

あっ、新しい行き先が出てきた! 行くぞーっ! うわっ、何だこれ怖すぎるだろ早く帰りたい。でも、こんな怖い曲が流れるんだから、ここは絶対重要な場所だ。
そう思って半泣きで色々調べました。
何度も足を運びました。
画面が暗い色調で、奥村のおばばと仏壇なものだから恐怖倍増。

ところがこの曲、後に浦田から真相を聞くときにも流れるのですが、そこではあまり怖く感じなかったのです。なぜなら場面に合っているから。

すなわち、音楽というものは使われる場面次第で印象が変わるということです。使い方は大事です。

奥村の家は脈絡がなさすぎてファミコン屈指の恐怖ポイントだと思います。
なぜこうなったのか、謎を解き明かしたいです。

ところで、あるサイトの方はこの曲を評して「とても寂しい感じ」と表現していました。
やはり音楽の捉え方は千差万別だなと思いました。

アレンジは……「このハゲー(うらた)!! ちーがーうだーろーっ! 違うだろーォッ!! 違うだろっ!!!」と某議員ばりに叫びたくなりました(辞職)。
心の底から怖いと思ったからこそ、強く印象に残っているわけで、断じてこんなヌルい曲であってはならないのです。アレンジに際して、絶対ゲームやってないだろと思ってしまいました。
やってたらごめんなさい。

恐怖の家

「追跡」

これはもうどう考えても名曲でしょう。
ファミコン音楽全体を見渡しても上位にランクインしておかしくない曲だと私は思います。

とても疾走感のある曲で、捜査も終盤、ラストに向けてスパートしていく感じが見事に表現されています。
ずっと聴いていても聴き飽きのしない曲で、耳に心地よいです。

ターン(*01)後打音(*02)、グリッサンド(*03)といった装飾が随所に使われている曲で、そういった細かい部分が名曲足らしめている要素の一つだと思います。
もしそれらがなければ、もう少し単調な曲になっていたのかもしれませんね。
後日、装飾なしバージョンを打ち込んでみて検証してみたいです。

アレンジは素直で良いです。ただし、装飾音を削っている箇所があり、それが残念。
上記のように、本曲において装飾音は大切な要素であると私は感じます。
装飾音がないとどうなるのかという疑問については、アレンジ版を聴いてみるとある程度わかります。
とても味気ないです。全部ないわけではないのが救い。

ファイティングシュンスケ(炭坑~真紀子さん救出~ファイティングシュンスケ)

「炭坑」

さらわれて夕張炭坑に監禁された真紀子を救出に行く3D迷路で流れる曲です。
何といっても変拍子が印象的です。4+3で進行していきます。

基本的にはメロディラインが忙しく動き回っているのですが、ドラムとベースの用法が絶妙で、特にループ前あたりが白眉です。
イントロ2小節、およびループ直前の2小節だけ変拍子ではなくなるのもポイント。つまり4小節間だけ変拍子が解除されます。

真紀子を早く助けなければというシュンスケの焦りと熱い思いが表現されており、プレイヤーもコントローラーを持つ手に自然と熱が入りますね。

アレンジは比較的素直で良いと思います。
一点残念なのは、ループ前の展開が原曲に及ばないところでしょうか。
しかもループ前の1音が間違っています(わざと変えたのかもしれませんけども)。
音上がるんですよ、そこは! 素直に下がったらダメなんですよ!

このように違うわけです(解説のために調は揃えてあります)。さらに言うと、原曲では「ファ」に下がるべきところがアレンジでは「ド」に上っているのです。

「真紀子さん救出」

炭坑内で真紀子を見つけた瞬間に、上記曲から切り替わります。
その後、炭坑を抜けるまでしか流れない贅沢な曲です。
ここで音楽を変えようという発想がすごいですよね。
そのままでも問題なかっただろうとは思います。ですが、変化をつけることで大変ドラマチックな流れが生み出されており、プレイヤーの気持ちを高揚させます。音楽の効果たるや絶大です。
何となく「オープニング」に似ているのは気のせいでしょうか。
気になりますね。後で検証してみようと思います。

アレンジは良いです!
ですが、主旋律を担当しているのはサックスの音色(後半からフルートがハモリ)だと思うのですが、音の高さによってアタックの強さがバラバラで、ある音は引っ込んで聴こえたり、ある音ははっきり聴こえたり、かなり聴きづらいです。
メロディとして破綻している部分が残念です。
  

「ファイティングシュンスケ」

物語もほぼ終わりです。駅でファイティングする場面で流れます。
荒事はシュンスケに任せ、ボス(プレイヤー)は見ているだけです。シュンスケ強いのね。

本曲も変拍子が採用されています。
不協和音バリバリのむず痒くなるような曲でありながら、しっかりファイティングしてますよね。

ライナーノーツを見ると、どうやら原曲の作曲者である上野さんはプログレがお好きということで、その影響で変拍子になったとのこと。
なるほど、まさしくです!

アレンジは主旋律以外は良いと思います。
主旋律については音と音の間隔を開けてハモり方を変えてしまったり、不協和音を放棄してしまっている部分があるため、割と落ち着いた感じになってしまっています。
平和的というか。もっとこう、捻じくれた曲であった方がよさそうだと私は感じます。

バカのいる風景(ファイティング中)

今回で終えるつもりだったのですが、思いのほか長くなってしまったので、次回完結とさせていただきます。

ではまた次回!
読めばわかるさ、ありがとーっ!

脚注

脚注
01 記譜の音の二度上下を回って戻ってくる装飾音。度数については前回の注釈を参照。本曲では曲の導入部分で使用されている。厳密にはターンではないと思うが、装飾音でまとめてみた次第。もし自分で楽譜を書くなら、ターンとしては書かないと思う。
02 次の音に向かう直前に短く入れる音。先に入れる場合は「前打音」。
03 ある音からある音へ、連続的に滑らせるように演奏すること。ピアノの鍵盤を撫でるように一気に弾くのをイメージするとわかりやすい。

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