「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十三回 ヘルプキャラクター

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十三回 ヘルプキャラクター
  • 公開日
    2021年04月30日
  • 記事番号
    5158
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第十三回目のテーマは、プレイヤーがゲームルールや操作方法がわからない、または先のステージへ進めずに困ったときに、救いの手を差し伸べる「ヘルプキャラクター」です。

プレイヤーが分厚いマニュアルをいちいち読まなくても、ストレスフリーで不快感を与えることなくゲームに没頭させる、「ゲームニクス理論」における「マニュアル不要のユーザビリティ」を実現するうえでも、「ヘルプキャラクター」の存在は欠かせません。

以下、筆者が思い付く限りではありますが、「ヘルプキャラクター」が活躍した例を、古今東西のあらゆるゲームからいろいろとご紹介していきましょう。

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

  

RPG、シミュレーションゲームには欠かせない「ヘルプキャラクター」

多くの登場人物やアイテム、入力コマンドが登場するアクションRPG、またはアドベンチャー系のタイトルでは、プレイヤーが次に何をしたらいいのか困ってしまわないよう、古くから「ヘルプキャラクター」の存在は欠かせないように思います。

その中でもとりわけ有名、かつ秀逸なのはおそらく、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(任天堂/1998年)に登場する妖精のナビィでしょう。本作では、オープニングのシーンからナビィが主人公のリンクと行動をともにし、直近の目的をリンクに話し掛けることでプレイヤーに教えてくれます。また、しばらくストーリーを進めずに同じエリアをウロウロしていると、ナビィのほうから「ヘーイ!」と声を掛けるとともに、画面上部にヘルプコマンドが表示され、コマンドを実行するとナビィがさまざまなアドバイスをしてくれます。

しかもナビィは、ゲームの世界観から逸脱せず、ストーリー内に登場するキャラクターの1人として、一切矛盾することなく機能しているのも見逃せないポイントです
  

一方、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と同じ年に第1作が発売された『メタルギアソリッド』(コナミ/1998年)シリーズでは、主人公スネークが無線などを使用して仲間を呼び出すと、応答した仲間たちがストーリーに沿って謎解きのヒントや武器の使用法など、さまざまなアドバイスをしゃべる「ヘルプキャラクター」の役割を果たしてくれます。

さらに、本シリーズでもナビィと同様に、場面によっては仲間のほうからコールしてアドバイスをくれる場合もあるので、プレイヤーは目標を見失うことがなく快適に遊ぶことができます。
  

RPGにおいては味方パーティ、場合によっては主人公自身が「ヘルプキャラクター」の役割を果たすタイトルが多く見られるのも大きな特徴と言えるでしょう。

最近のタイトルから一例を挙げますと、『ドラゴンクエストXI』(スクウェア・エニックス/2017年)では「なかま」コマンドを実行、または味方パーティの誰かに直接話し掛けると、主人公と仲間たちとの会話から次の目標や冒険のヒントを得ることができます。

ちなみに『ドラクエ』シリーズでは、上記のように味方パーティを「ヘルプキャラクター」としても機能させるアイデアは『ドラゴンクエストVII』(エニックス/2000年)で初めて導入され、『ドラゴンクエストVIII』(スクウェア・エニックス/2004年)からは専用コマンドの「なかま」コマンドが初めて実装されました。

古いところでは、プレイステーション版の『テイルズ オブ ファンタジア』(ナムコ/1998年)にも同様のアイデアが盛り込まれています。本作では、フィールド上でしばらく何もせずに放置していると、主人公のクレス、ミントや仲間たちとの会話シーン(通称「掛け合い」)が流れ、「ベネツィアへ行こう!」などと話す様子をプレイヤーが見たり聞いたりすることで、冒険の目標を確認したり、ヒントを知ることができるアイデアが盛り込まれていました。
  

また『ファイナルファンタジーVII』(スクウェア/1997年)では、初心者の館と上級者の館にいる人物たちに話し掛けると元ソルジャー、すなわち戦いのプロであるクラウドが、彼らにバトルシステムや攻略のコツなどをテーマごとに説明してくれるので、プレイヤーはこれを読むことで実戦に役立つテクニックを学ぶことができます。

なお、同じシリーズの『ファイナルファンタジーIX』(スクウェア/2000年)では、ク族の沼に住んでいるモーグリのモグタローとモグジローの兄弟が登場。物知りの兄が弟に向けて、さまざまな冒険に役立つ知識を説明する形で「ヘルプキャラクター」の役割を果たしています。

このように、ヘルプメニュー専用のキャラクターを別途用意せず、時には主人公自身を「ヘルプキャラクター」として活用し、なおかつゲームの世界観やストーリーに矛盾なく組み込むアイデアは本当に素晴らしいですよね。
  

シミュレーション、アドベンチャーゲームも「ヘルプキャラクター」のおかげで快適に

コマンド入力方式で遊ぶシミュレーション、あるいはシミュレーションRPGやアドベンチャーゲームにおいても、「ヘルプキャラクター」がしばしば登場します。

有名どころから例を挙げますと、『信長の野望』(光栄/1983年)や『三國志』(光栄/1985年)シリーズでは、配下の武将、あるいは軍師が「ヘルプキャラクター」の役割を果たしているのは、プレイ経験のある人ならばよくご存知のことでしょう。
(※筆者補足:初期の『信長の野望』シリーズには配下の武将は存在しません)

これらのシリーズでは、プレイヤーが「開墾」「訓練」などの各メニューを選択すると武将や軍師が出現し、そのメニューを今実行するのは効果的なのか、それとも役に立たないのかを前もってアドバイスしてくれます。特に、数多くのメニューの中からどれを選べばいいのかよくわからない、初心者にはとっては実にありがたい存在です。

また、同じく歴史シミュレーションゲームの『独眼竜政宗』(ナムコ/1988年)では、Aボタンを押して各コマンドを実行すると、配下の武将の片倉小十郎が「訓練度は50になりました」などと結果をしゃべってくれますが、Bボタンを押すと「軍事に関するコマンドです。出兵や移動や兵を集めたりします」などというように、小十郎が各コマンドの用途を解説する「ヘルプキャラクター」の役割も果たしてくれます。
  

シミュレーションRPGの『タクティクスオウガ』(クエスト/1995年)では、「ウォーレン・レポート」を選択すると味方の1人である占星術師ウォーレンが登場し、バトルシステムや各キャラクターの経歴、これまでの戦歴などあらゆる情報を丁寧に解説してくれます。

実はこのウォーレン、本作ではまったく実戦には参加せず(※瀕死の重傷を負っている設定のためです)、ほぼ純粋な「ヘルプキャラクター」の役回りなのですが、バトル間のストーリーデモでは主人公たちと会話をするシーンが数回登場し、場面によっては重要な証言をしますので、やはりゲームの世界観を構成する1人としてきちんと機能しています。
  

スポーツと経営シミュレーションが同時に楽しめる、『J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!』(セガ/1996年)をはじめとする『サカつく』シリーズでは、クラブに所属する秘書や監督、コーチが、チケットの価格設定やチームの戦力分析、練習メニューの作成など、ありとあらゆる場面でプレイヤーに適宜アドバイスをする「ヘルプキャラクター」としても機能しています。
  

シミュレーションゲームにおいて数ある「ヘルプキャラクター」の中でも、とりわけ優れているのがスーパーファミコン版の『シムシティ』(任天堂/1991年)に登場する秘書ではないでしょうか。

本作では、市長となったプレイヤーをサポートする秘書が、「ヘルプキャラクター」としてゲームの進行に合わせて出現し、新たに登場したイベントの活用法や、プレイ中の問題点を指摘するなど、的確なアドバイスをしてくれます。秘書はメニューアイコンから任意のタイミングで呼び出すことも可能なので、困ったときにはいつでも相談相手となってくれます。

筆者も本作をプレイする前は、分厚いマニュアルを読みつつ「難しそうだけど、ちゃんと遊べるようになるのかなあ……」と不安があったのですが、いざ遊んでみたら秘書が手取り足取り教えてくれたおかげで、とても楽しく遊べた記憶があります。
  

まだまだあります! 歴史に残したい「ヘルプキャラクター」のアイデア

ここからは上記のジャンル以外、またはちょっと変わった「ヘルプキャラクター」が登場する例をご紹介します。

アクションゲームで、近年(と、言いつつだいぶ時間が経っていますが……)とりわけ画期的な「ヘルプキャラクター」を登場させたタイトルのひとつが、『NewスーパーマリオブラザーズWii』(任天堂/2009年)でしょう。本作は、プレイヤーが同じステージ内で8回ミスをすると、リスタート時に「!」マークのボックスが登場し、これを叩くとルイージが出現して、各ステージをクリアするまでの模範演技、その名も「おてほんプレイ」を見せてくれます。

プレイヤーは「おてほんプレイ」を参考に、攻略のポイントを知ることができるのはもちろん、途中から任意のタイミングで継続して遊ぶことも可能なので、例えば苦手な場所だけルイージに任せて、あとは自力でクリアを目指す、などという遊びかたも可能にした素晴らしいアイデアですね。
  

スポーツゲームにおいては、特にゴルフゲームでは古くから「ヘルプキャラクター」が活躍している感があります。

例えば、ファミコン用ソフト『ジャンボ尾崎のホールインワン』(HAL研究所/1988年)では、ラウンド中にセレクトボタンを押すと「ジャンボ尾崎のワンポイントアドバイス」画面に切り替わり、尾崎プロが各ホールの攻略ポイントや、カップまでの距離に応じた最適なクラブを教えてくれます。

ほかにも、『ナムコクラシック』(ナムコ/1988年)シリーズでは、「アドバイス」のコマンドを選択すると、キャディがカップまでの距離や攻略ポイントをくわしく教えてくれる「ヘルプキャラクター」として登場し、リアルのゴルフと同じようにプレイヤーをサポートしてくれます。

昨今のゴルフゲームではクラブごとの飛距離や、ボールからカップまでの距離はたいてい画面内に表示されるのですが、昔はマニュアルを読まなければわからないケースもありました。ですから、ゲーム中に「ヘルプキャラクター」が登場することで、プレイヤーはいちいちマニュアルを読まなくても快適に遊べるというわけですね。
  

ちょっと変わっているのが、アクションアドベンチャーゲームの『スーパーメトロイド』(1994年/任天堂)。本作では、特定の場所にダチョラとエテコーンという一切しゃべらないキャラクターが出現するのですが、しばらく見ていると前者は助走をつけてから垂直に大ジャンプするシャインスパークを、後者は壁を連続でキックして一気に高い所へ移動するキッククライムという、それぞれ特殊なアクションを披露してくれます。

実は、これらと同じアクションを主人公のサムスもできるのですが、マニュアルには載っていない隠し技となっています。また、ダチョラはかなり深く作られた落とし穴付近に出現し、エテコーンも一見するとこれ以上は上方向に進めない、言わばハマリ場所に出現します。つまり、どちらもプレイヤーに脱出のヒントをジェスチャーで示す「ヘルプキャラクター」の役割を果たしているわけです。

ちなみに本作は、クライマックスの場面でダチョラとエテコーンの救出に成功するとエンディングが変化します。彼らも単なるチョイ役ではなく、ゲームのストーリーにしっかりと溶け込んだ存在になっているのも、これまた素晴らしいですよね!
  

以上、今回は筆者が思い付くままに、さまざまな「ヘルプキャラクター」をご紹介しましたが、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?

繰り返しになりますが、ゲームの世界観を損ねることなく、遊びながら自然とルールや次の目標を覚えて夢中になってしまう「ヘルプキャラクター」を導入するアイデアは、先人たちが編み出した素晴らしい知恵の結晶と言っても過言ではないでしょう。困ったときには分厚いマニュアルをめくらなければいけない、電化製品のヘルプメニューなどと比べると、その利便性は比較にならないほど違いますよね。

ところで、本稿を執筆するにあたって「ヘルプキャラクター」が最初に登場したタイトルはいったいどれで、どんなキャラクターが出てきたのかを調べてみたのですが、たいへん申し訳ないのですがハッキリわかりませんでした。いったいどこの誰なのかは、今後の研究課題ですね……。(※もしご存知のかたがいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!)

なお、「ヘルプキャラクター」に関するくわしい内容は、サイトウ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「2-B-⑤ ヘルプキャラクターの活用」に掲載されています。ここは本書の第2章「マニュアル不要のユーザビリティ」の大きなポイントとなる項目でもありますので、ぜひご一読をおすすめします。

それでは、また次回!

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