「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十五回 トレーニング Part2

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十五回 トレーニング Part2
  • 公開日
    2026年05月01日
  • 記事番号
    14257
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第六十五回のテーマは「トレーニングPart2」です。

今回は、第五十一回では紹介し切れなかった、ぜひ皆さんに知っていただきたい「トレーニング」の導入タイトルをご覧いただきます。

プレイヤーの実力向上に役立つ「トレーニング」は、「ゲームニクス理論」で言えば「原則4:段階的な学習効果」を目的として実装するものです。ですが、その中には「トレーニング」自体が楽しい、つまり「原則3:はまる演出」にも通じる要素が含まれている例も少なくありません。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、優れたアイデアを盛り込んだ「トレーニング」の導入例をご紹介したいと思います。どうぞ最後までご一読ください!
 

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!
 

 

ゲームの世界観、ストーリーに組み込まれた「トレーニング」

第十三回の「ヘルプキャラクター」で採り上げた『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(任天堂/1998年)などの作品では、ゲーム内の世界観やストーリーに矛盾しない形で、対象のキャラクターがプレイヤーに対して「チュートリアル」を行う場面が登場します。

これと同様に、作中にプレイヤーに向けた「トレーニング」施設を登場させるタイトルもいくつかあります。

一例を挙げますと、『ファイナルファンジーVIII』(スクウェア/1998年)では、主人公のスコールたちが籍を置くSeeD(傭兵)の養成学校「バラムガーデン」内には、敵のモンスターを放し飼いにした訓練施設があり、プレイヤーはいつでもバトルの「トレーニング」が可能です。

また本作では、初回プレイ時に味方パーティのひとりでもあるガーデンの女性教官、キスティスが「ヘルプキャラクター」の役割を果たし、バトルの基本をレクチャーする「チュートリアル」も用意されています。
 

最近のタイトルでは『ゼルダ無双 封印戦記』(コーエーテクモゲームス/2025年)にも、ストーリーの一環に組み込まれた「トレーニング」施設が登場します。

本作では、特定のストーリーミッションをクリアすると、全体マップに「修練広場」などの「トレーニング」専用ステージが数か所出現します。本作はストーリーを進めていくと、味方に加わるキャラクターがどんどん増えるので、新キャラクターの操作に慣れるための「トレーニング」施設があるととても便利です。
 

快適な「トレーニング」環境を実現する工夫の数々

ゲームの本編で出現する、敵のキャラクターや障害物をすべて消し去り、プレイヤーが「トレーニング」に専念できる機能、演出などを導入した例も古くからたくさんあります。

その最もわかりやすい例が、レースゲームでマイカー以外の車が一切出現せず、フリー走行ができる「トレーニング」モードの導入ではないかと思われます。「トレーニング」モードがないレースゲームの場合は、走行時間だけを競うタイムアタックモードが、その役割を果たしていると言えるでしょう。
 

対戦格闘ゲームに導入された、さまざまな「トレーニング」モードの便利機能も、第五十一回で採り上げました。

プレイヤーが対戦格闘ゲームを楽しむためには、各キャラクターが繰り出す、技の威力やリーチの長さ、飛び道具の軌道などを覚える必要があります。そこで、プレイヤーがひと目で技のリーチなどを把握できるよう、「トレーニング」中に背景に格子模様を表示するタイトルが、近年では数多く登場している感があります。

ところで、「トレーニング」中に格子模様を表示するアイデアを最初に導入した対戦格闘ゲームは、いったい何だったのでしょうか? 筆者が確認できた古い導入例のひとつが、ドリームキャスト版『マーヴルVSカプコン2』(カプコン/2000年)でした。

もっと古い作品では、プレイステーション版『ストリートファイターEX plus α』(カプコン/1997年)で、床面に格子模様が描かれた例があります。ですが、本作の床面は上記のような意図でデザインされたかどうかまでは、たいへん申し訳ないのですが確認することはできませんでした。格子模様を導入した「元祖」を、もしご存知のかたがいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!

古いタイトルばかりでなく、ここで最新作のお話もしておきましょう。

対戦格闘ゲームの人気作『ストリートファイター6』(カプコン/2023年)と『鉄拳8』(バンダイナムコエンターテインメント/2024年)は、さらに「トレーニング」システムが進化しています。

前者には、あらかじめ記録しておいた対戦相手の動きを再生して「トレーニング」ができる、その名も「レコード設定」機能が搭載されています。本機能を利用して、うまく対応できなかった相手の動きを再現させることで、自身の弱点に絞った「トレーニング」ができます。

後者では、プレイヤーの行動パターンを元に学習した「AIゴースト」が生成されます。プレイヤーの腕が上達するほどゴーストもどんどん強化され、自身のゴーストだけでなく、ほかのプレイヤーから生成されたゴーストと対戦できる機能も搭載されています。

これらのタイトルは、その時々のプレイヤーの腕に合わせた「トレーニング」ができることから、「ゲームニクス理論」の「原則4:段階的な学習効果」も実践していると言えるでしょう。
 

今も昔もありがたい存在「トレーニング」専用ステージ

PCやスマホも含めた各プラットフォームで、今から30年も40年も前に発売された懐かしの作品が、昨今では数多く移植されています。

古いタイトルを移植するにあたり、かつて高難易度で名を馳せた作品であっても快適に遊べるよう、元々は存在しなかった「コンティニュー」や「セーブ」「ロード」機能を新たに追加した上で発売することが、今ではごく当たり前になった感があります。

以下の写真は、Nintendo Switch版『SEGA AGESスペースハリアー』(セガ/2019年)です。本作では、元のアーケード版には存在しなかった、任意のステージから遊べる機能が搭載されているので、プレイヤーは苦手なステージだけを選んで「トレーニング」ができます。
 

実は、本作のように特定のステージに絞って「トレーニング」ができるタイトルも古くから存在し、ゲームボーイ用シューティングゲーム『ネメシス』(コナミ/1990年)と、その続編の『ネメシスII』(コナミ/1991年)などがこれに該当します。

以下の写真は『ネメシスII』で、タイトル画面で「PRACTICE」を選択すると、最終ステージを除く1~4の各ステージを自由に選んでプレイすることができます。
 

将棋や囲碁、麻雀などのアナログ(※ボード、テーブルなどと呼ぶこともあります)ゲームを題材にした多くのビデオゲームは、基本ルールを知らないプレイヤーでも楽しめるように、「トレーニング」モードが充実したタイトルが昔からたくさん出ているように思われます。

例えば『最強東大将棋2004』(毎日コミュニケーションズ/2004年)などの将棋ゲームには、さまざまな戦法が学べる「定跡対局」のほか、「詰将棋」「次の一手」などの棋力向上を助ける多彩なモードが用意されています。

麻雀ゲームの『ぎゅわんぶらあ自己中心派 片山まさゆきの麻雀道場』(ゲームアーツ/1990年)では、クイズ形式による「トレーニング」専用モードの「麻雀道場」があり、プレイヤーは麻雀の基本ルールや打ち筋などを楽しみながら学ぶことができます。

これらのアナログゲームは、本来はプレイヤー自身が盤や駒を用意したうえで、書店で売っている入門書を読んだり、親や友人に教わったりしながらルールを覚えるのが普通でしょう。ですが「トレーニング」モードを搭載したビデオゲームであれば、プレイヤーが1人で遊びながらルールを学べるのも、大きなメリットであると言えるかもしれません。

実は筆者も、麻雀の基本ルールを覚えたのは、いくつかの麻雀ゲームを遊んだおかげでした。最初はアガリ点の符計算がまったくできなかったのですが、コンピューターが点数を計算してくれるおかげで、基本となる役の形を覚えただけで対局ができたのです。

ちなみに、符の計算方法が学べる「トレーニング」や「チュートリアル」が導入されたマージャンゲームは、本作のほかにも『桜井章一の雀鬼流麻雀必勝法』(サミー/1995年)などがあります。
 

以上、今回は「トレーニングPart2」をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?

冒頭でも触れましたが、本稿の執筆を通じ、ことビデオゲームの「トレーニング」に関しては、楽しみながら腕を磨けるよう、さまざまな工夫が施されていることを改めて実感した次第です。

今後は前述の『ストリートファイター6』や『鉄拳8』のように、ジャンルを問わず「ゲームAI」を利用した「トレーニング」手法がどんどん誕生することでしょう。こちらも当コラムの大きな研究課題になりそうですね。

なお「トレーニング」に関するくわしい解説は「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則4:段階的な学習効果」などの項で解説していますので、興味のあるかたは本書をぜひご覧ください。

それでは、また次回!

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