「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第七十回 ポーズPart2

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第七十回 ポーズPart2
  • 公開日
    2026年09月25日
  • 記事番号
    14845
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第七十回のテーマは「ポーズPart2」です。

第四十回では、ゲームを中断または「リセット」したい、あるいはアイテム類をセットしたい場合などに使用する「ポーズ」メニューを中心にご紹介しましたが、いざ調べてみると、ほかにもさまざまな工夫を凝らした「ポーズ」を導入したタイトルがたくさんあることがわかります。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、ただゲームを中断するだけにとどまらない、「ポーズ」の導入例をご覧いただきましょう。どうぞ最後までご一読ください!
 

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっと
した息抜きにぜひご一読を!

 

ストレスフリーな「ポーズ」環境の実現

近年発売された家庭用ゲーム機のコントローラーには、いわゆるホームボタンが搭載されています。プレイヤーがゲームを中断、あるいは小休止したい場合は、ホームボタンを1回押すだけで、ほとんどのタイトルで「ポーズ」メニューが表示される仕組みになっています。

ゲーム機ごとに「ポーズ」または「ヘルプ」メニューの操作方法が統一されていれば、プレイヤーはタイトルごとに、その方法をいちいち覚える必要がなくなるので、とても便利であることは皆さんもよくご存知のことでしょう。

このようなホームボタンの設定は、筆者とサイトウ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則1-A-②:決定とキャンセルの統一」や「原則2-B-⑥:ヘルプメニューの種類と工夫」の項で解説した、直感的で快適なインターフェースと、マニュアル不要のユーザビリティにも相通じるように思われます。
 

主にアクション系のゲームでは、「ポーズ」ボタンと攻撃、ジャンプなどのボタンがそれぞれ異なる場合は、「ポーズ」を解除してから指を元の位置に戻すまでの間、ほんのわずかな時間でも敵キャラや敵弾が迫ってくるため、ついつい慌ててしまいがちです。

また「ポーズ」メニューが表示されるタイトルの場合は、「ポーズ」を解除して画面が切り替わった瞬間にいきなりゲームが再開すると、プレイヤーは周囲の状況を確認できないうちに敵キャラなどが動き出し、ミスを誘発する可能性が生じます。

そこで、「ポーズ」を解除した直後にカウントダウンが始まり、ゼロになったところでゲームが再開するアイデアを採り入れたタイトルが近年は増えている感があります。カウントダウンによって、プレイヤーは周囲の状況を把握しつつ、万全の態勢でゲームの再開を待つことができます。

ところで、「ポーズ」解除時にカウントダウンするアイデアを最初に導入したタイトルはいったい何だったのでしょうか? 筆者も調べてみたのですが、「これだ!」と断定するには至りませんでした。

もしご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!
 

心地よい「ゲームテンポ」を生み出す「ポーズ」の工夫

ここからは主にスポーツゲームで、より快適に遊べる「ポーズ」の工夫をご紹介しましょう。

野球ゲームで選手やポジションを交代する際はタイムを掛ける、つまり「ポーズ」メニューを起動する必要が往々にしてあります。もし「対戦プレイ」中に、攻撃側のプレイヤーが「『ポーズ」』をしたい」と前もってお願いしたのに、守備側のプレイヤーが「ポーズ」を掛ける前に誤ってピッチングを行うとトラブルの原因になる恐れがあります。

そんな失敗を未然に防ぐ、見事なアイデアを導入していたのが『実況パワフルプロ野球2』(コナミ/1994年)です。

本作のマニュアルには「投球前にSTARTボタンを押しっぱなしにすると、確実にタイムが取れます。」と書かれているように、どちらかのプレイヤーがスタートボタンを押し続けていると、プレイが止まって画面が切り替わった瞬間、必ず「ポーズ」が掛かる仕組みになっています。

このアイデアを発案した本作の開発スタッフには、まさに脱帽です!
 

サッカーゲームは、野球と違ってボールがピッチの外に出たり、ファウルなどの反則が発生したりしない限り、間断なくプレイが続きます。もしインプレイ中に、いつでも「ポーズ」メニューが起動できて、フォーメーションや戦術などを自由に変えられるサッカーゲームがあったとしたら、はたしてどうなるでしょうか?

1人プレイ時は特に問題はありませんが、「対戦プレイ時」は「ポーズ」を掛けたタイミングによって、相手のボタン入力を邪魔する可能性が生じるだけでなく、戦術やフォーメーションなどの決定までに長時間待たせた場合は「ストレス」を与えてしまいます。そして何より、肝心要のゲームの進行がブツ切り状態になり、せっかくの「ゲームテンポ」が失われてしまいます。

そこで、インプレイ中に「ポーズ」ボタン押しても「ポーズ」メニューが起動せず、プレイが途切れた直後に「ポーズ」メニューが起動するよう配慮したサッカーゲームが、現在ではごく当たり前に登場するようになりました。「ゲームテンポ」を損なわず、なおかつリアルのサッカーにより近いルールで遊べる、こちらも実に優れたアイデアですね。

ほかにもサッカーゲームでは、「オフサイドトラップ」や「ゾーンプレス」などの戦術はインプレイ中にいつでも変更できるよう、あらかじめ設定したボタンやコマンドを入力することで、「ポーズ」メニュー画面に切り替えることなく、シームレスでゲームが進行するシステムを導入したタイトルも数多く見受けられます。
 

閑話休題。ちょっと変わった「ポーズ」の演出

第四十回では『アストロロボSASA』(アスキー/1985年)など、「ポーズ」中にカラオケ曲が流れる、ユニークな演出を採り入れた懐かしの作品をご紹介しました。ほかにも少数ではありますが、「ポーズ」中にBGMが変わるタイトルがいくつかあります。ファミコン用シューティングゲーム『スクーン』(アイレム/1986年)がその一例です。

あくまで筆者の私見ですが、本作は「ポーズ」中のBGMを変えることでプレイヤーを心身ともにリラックスさせる、つまり「コーヒーブレイク」的な意図があったのではないかと推察されます。

ちなみに、本作の曲が収録されたゲームミュージックアルバム「FAMICOM 20TH ANNIVERSARY ORIGINAL SOUND TRACKS VOL.2」によると、「ポーズ」中に流れるBGMのタイトルは、その名も「Posing BGM」。あらかじめ「ポーズ」専用曲が用意されていた本作のような例は、今も昔も極めて珍しいと思われます。

なお「ポーズ」メニューの範ちゅうには入らないかもしれませんが、『信長の野望・戦国群雄伝』(光栄/1988年)や『信長の野望・武将風雲録』(光栄/1990年)などのように、プレイデータを「セーブ」するためのコマンドを選択すると、いかにもプレイヤーを労うかのような穏やかなBGMに切り替わるタイトルもあります。

写真ではわからないのですが、『スクーン』はポーズ中に専用のBGMが流れる珍しい演出があります
©IREM SOFTWARE ENGINEERING INC.

スマホ版『実況パワフルプロ野球(パワプロアプリ)』(コナミ/2014年)のオンライン対戦モードではタイム、すなわち「ポーズ」メニューの使用回数は、イニングごとに最大5回までに設定され、「ポーズ」メニューの利用時間にも制限が設けられています。

つまり本作は、「ポーズ」メニューの使用回数を制限することで「ゲームテンポ」を損なわず、なおかつ相手プレイヤーに対して悪意のある遅延行為ができないようにしているわけですね。このような「ポーズ」メニューの制限は本作に限らず、オンライン対戦に対応した多くのタイトルに導入されています。
 

最後に、現在稼働中のアーケードゲームに導入されている、おもしろい「ポーズ」メニューをご紹介しましょう。

『麻雀格闘倶楽部』(コナミ/2002年)シリーズには、プレイヤーが対局終了後に「休憩」を選択すると、一定時間ゲームの進行が止まる、すなわち「コーヒーブレイク」を取れる機能が搭載されています。

「休憩」を実行中の筐体は、プレイヤーが所持しているICカードやパスワードによりロックされ、ほかのプレイヤーが新たにお金を入れてゲームを始めることができません。なので、プレイヤーは「休憩」中に離席した状態でも安心して一服できるというわけですね。

ところで、本シリーズなどのタイトルには、なぜ「休憩」が導入されたのでしょうか?

そのきっかけは、おそらく東京都では2019年から、神奈川県では2010年から段階的に施行された全面受動喫煙防止条例であったと思われます。加えて、2020年に施行された改正健康促進法により屋内施設が全面禁煙化され、ゲームセンターに限らず喫煙する際は原則、所定の喫煙スペースに移動する必要が生じました。

かつて、多くのゲームセンターでは筐体1台ごとに灰皿が置かれ、プレイヤーがゲームを遊びながら自由にタバコを吸うことができました。ところが法改正により、今まではごく当たり前に行っていたオペレーションが不可能となったため、愛煙家に配慮した「休憩」システムをゲーム内に実装する必要が生じたわけですね。

筆者が調べた限りでは、最初に「休憩」システムを導入したのは、2017年に発売された『麻雀格闘俱楽部 豪華絢爛』で、本シリーズと同様の「休憩」システムは、同じく麻雀ゲームの『MJ Arcade』(セガ/2017年)や『麻雀ファイトガール』(コナミ/2023年)などにも導入されています。
 

以上、今回は「ポーズPart2」をテーマにお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?

くり返しになりますが、「ポーズ」は単にゲームを中断するだけでなく、ゲームのおもしろさを損ねず、プレイヤーに余計な「ストレス」を与えないように工夫した上で実装されており、改めて奥の深い機能であることを筆者は再認識した次第です。

なお「ポーズ」に関するくわしい解説は、「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則2-A-⑥:ポーズ・セーブ・ロードの利用」の項で解説していますので、興味のある人は本書をぜひご覧ください。

それでは、また次回!

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