「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 特別編

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 特別編
  • 公開日
    2022年02月25日
  • 記事番号
    7133
  • ライター
    鴫原盛之

Nintendo Switch用ソフト『タイトーマイルストーン』に収録された、タイトー往年の名作10タイトルの魅力を「ゲームニクス理論」で読み解く

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

今回は特別編として、2月24日にタイトーが発売するNintendo Switch用ソフト『タイトーマイルストーン』に収録された、1981~87年にかけて登場した同社の歴代アーケードゲーム10タイトルの魅力を、「ゲームニクス理論」を元に一挙ご紹介します。ぜひ最後までご一読ください!
※IGCCでは通常、各タイトルについて「発売年」を付記しておりますが、本記事では株式会社タイトーからの要望により「発表年」で統一しております。ご了承ください。
  

「ゲームニクス」とは?

現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!
  

『スペースシーカー』(1981年)

惑星を占領しようと目論む敵機を倒していくシューティングゲーム。疑似3D視点と、2D横スクロールの2種類のシューティングが遊べるのが特徴で、発売から実に41年目にして初めての移植が実現しました。

ゲームがスタートしたらマップ画面でカーソルを動かし、マップ内を動き回る小さなマークに合わせると敵の空軍との戦闘(疑似3D視点のシューティング)となり、機動要塞のマークに合わせると横スクロールシューティングに移行します。

空軍との戦闘中は、敵キャラの表示サイズを切り替えることで立体感を表現したビジュアルの美しさに加え、BGMが徐々にテンポアップすることで、プレイヤーの緊張感を高める工夫を施している点が注目ポイントです。筆者とサイトウ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」では、「原則3:はまる演出」の一種として、「原則3-A-⑥:音楽でテンポを調整」を解説しているのですが、まだビデオゲームにBGMが流れること自体が珍しかった時代にあって、音楽を利用して緊張感を高める演出をすでに実装していたのは驚きに値します。

機動要塞内では自機を操作して、正面に撃つショットと、放物線状に投下するミサイルの2種類の武器を駆使して敵機と戦い、マップの終盤にある「EXIT」と表示された狭い通路に入ってからゴール地点に到達するとクリアとなります。

「EXIT」の通路に入ると、「1000」と数字が表示されてカウントダウンが始まり、ゴール地点に到達した時点で残った数字が得点として加算されます。つまり、ゴールに早く着くほど高得点が稼げる仕組みなのですが、慌ててゴールに向かうと通路が狭いため壁にぶつかりミスをするリスクが高まります。つまり、「ゲームニクス理論」の「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」にあたる、リスクの高いプレイを成功させるほど報酬もアップするシステムを実装しているというワケですね。

すべての機動要塞をクリアするとジングルが流れ、「GOOD LUCK」のメッセージ表示とともに、次の惑星へと舞台が切り替わります。「原則3-B-④:快感要素の基本事項」では、「コンテンツにハマってもらうための基本となるのは『褒め要素』である」と解説していますが、惑星を守り抜いたプレイヤーを祝福する本作の演出は、まさにこれに当てはまります。
  

『QIX(クイックス)』(1981年)

自機にあたるマーカーを、4方向レバーと高速前進ボタン、低速前進ボタンで操作して、敵のクイックス(※ステージ内を流れるように動く棒状のキャラ)やスパークを避けながらフィールド内を直線で囲んで占領し、規定の占領率(※単位はパーセント)以上のエリアを占領するとクリアとなる陣取りアクションゲームです。

占領したエリアが増えるにつれて、クイックスの行動範囲がどんどん狭まり、同時にサイズも少しずつ小さくなることで、プレイヤーの達成感、あるいは快感が高まるところに本作ならではの楽しさがあります。また、現時点での占領率を常時表示することで、プレイヤーにモチベーションを喚起し、目標を明確にする「原則3-D-②:達成率の表示」の演出も導入しています。

いっぺんに広いエリアを占領すればするほど高得点が獲得できますが、ラインを引いている最中に敵に触れると当然ながらミスとなり、またグズグズしていると新たな敵、ヒューズが出現してマーカーを追い掛けてくるので、欲張るとミスの可能性が必然的に高まります。つまり、この得点システムも「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」にあたります。

また、占領に成功したときの得点は高速前進よりも低速前線を使ったほうが高くなります。ここでもクイックスやスパークに捕まるリスクの高い低速前進のほうが高得点になる、リスクとリターンを見事に調整した得点システムになっていますね。さらに占領したエリアは、高速前進を使用時と低速前進の場合で別々の色に塗りつぶされますので、周囲で見ているギャラリーに対し、プレイヤーの腕がひと目でわかるのも見事なアイデアと言えるでしょう。

画面上部に表示されたエネルギーライン(赤い線)が消滅するとスパークの数が増え、さらに2度目の消滅後には警告音が鳴り、スパークの色が変化してマーカーを追撃するようになります。こちらもプレイヤーにさらなるスリルを与える、おもしろいアイデアですね。
  

『アルペンスキー』(1981年)

主人公のスキーヤーを操作して、他のスキーヤーや障害物を避けながらコース上を滑り、制限時間内にゴール地点に到達するとステージクリアとなる縦スクロールアクションゲーム。ボタンを押してスキーヤーを加速させたときのスピード感と、ゲームを盛り上げる軽快なBGMも魅力です。

まず注目したいのはオープニングの場面。スキーヤーがリフトに乗ってコースに向かうアニメーションとともに、軽快なジングルが流れてプレイヤーを白銀の世界に引き込む、シンプルながらもワクワクさせてくれる演出になっています。これはまさに、「原則4-A-①:スタート時のつかみ」における「ストーリーの導入」の一例ですね。

本作の一番のキモとなるのが、特定の地点を通過するとボーナス得点が入る仕掛けです。得点が高い場所ほど高度な操作テクニックが要求され、少しでも操作を誤るとミスしてしまう、「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」の典型的なデザインになっています。

例えば、コースのほぼ中央に出現し、比較的簡単に通れる木と木の間を抜けた場合のボーナスは100点なのに対し、大きくスリップする凍った池と大きな木に囲まれ、操作するのが非常に難しい場所をピンポイントで通過すると1000点、あるいは1500点の高得点ボーナスが獲得できるといった具合です。

スキーヤーは、一度滑り始めたら途中で静止することができず、当然ながらスピードが速くなるほど急に曲がれない、すなわち障害物を避けにくくなります。だからといって、ゆっくり滑っているとタイムがどんどん減ってゴールできなくなるリスクが生じますので、リスクとリターンのバランスをどう取りながらプレイするのかが、プレイヤーに常に問われることになります。

いざ遊んでみると、特に1000点以上のボーナスを獲得するのは、見た目以上に難しいと感じることでしょう。どこまでスコアを伸ばせるか、自身の限界までぜひチャレンジしてみてください。
  

『ワイルドウエスタン』(1982年)

馬に乗った主人公のシェリフを操り、同じく馬に乗った敵のギャングをガンで倒して全滅させるとステージクリアとなる、縦スクロールアクションゲーム。西部劇を彷彿とさせる世界観と、ダイヤルスイッチを回してガンの向きを変え、スイッチを押し込むと弾丸を発射するユニークな操作システムが特徴です。

本作は、「原則4-B:段階的に難易度を上げる」の仕組みに注目しながらプレイしたいところです。本作ではステージが進むにつれて、ギャングの人数やサボテンなどの障害物が増えたり、途中で分かれ道が登場して狭い通路を進まざるを得ない場面が登場したりすることで、難易度を徐々に上げているように思われます。

ギャングは時折、画面中央を走る列車の屋根に飛び乗ることがあります。屋根の上にいるギャングは、馬上からの攻撃では倒せないので、シェリフも屋根の上に移動させてから攻撃する必要があります。列車の屋根に乗るためには、敵の攻撃をかわしつつ接近してジャンプすることが必要で、さらに屋根に乗った後も障害物の給水パイプをタイミングよく伏せてかわすテクニックが求められます。

ちなみに本作は、シェリフのストックがゼロになるともちろんゲームオーバーとなりますが、実はギャングが3人同時に列車に乗った場合にもゲームオーバーになります。つまり、敵のギャングは列車強盗であり、シェリフは列車を守る使命を負っていたというワケですね。

ステージクリア後には、馬が空中に投げ上げたコインに向かってガンを発射し、命中するとクリアボーナス得点が2倍になるミニゲームが登場します。撃てる弾丸は1発だけですが、たとえミスをしてもペナルティは一切ありません。また、ミニゲーム中は実にのんびりとしたBGMが流れることもあり、プレイヤーに高得点のチャンスを与えるのと同時に、緊張を一時的に和らげる「原則3-A-⑧:ブレイクを準備する」の役割も果たしているように思われます。
  

『フロントライン』(1982年)

主人公の兵士を操作して、ピストルと手榴弾で敵を倒していくアクションゲーム。時折出現する戦車に乗り込むと、戦車砲を撃って敵を倒すことも可能で、最終地点に出現する敵軍の要塞(砲台)を破壊するとステージクリアとなります。元祖アーケード版は『ワイルドウエスタン』と同じく、ダイヤルスイッチで攻撃の方向を決める操作システムを導入していました。

本作の特徴のひとつは、2種類の武器を状況に応じて使い分ける戦略性です。ピストルは画面内に2連射まで発射できますが、茂みなどの障害物に当たると弾丸は消滅してしまいます。一方、手榴弾は単発でしか投げることができませんが、放物線状に飛ぶので障害物の向こう側にいる敵を攻撃できるメリットがあります。また、敵の戦車は手榴弾でしか倒すことができません。

「ゲームニクス理論」では、「原則1:直感的で快適なインターフェース」を提唱しており、「原則1-B」の項目では「入力デバイスの特性に対応したUI設計」にすべきであることを説明していますが、本作はダイヤルスイッチという変わった入力デバイスを利用した独特のおもしろさを見事に創出しています。

敵軍の要塞にたどり着くには、画面の上へ上へとひたすら進む必要がありますが、本作では進行方向ではなく背後、すなわち画面下部からも敵がひんぱんに出現します。普通のボタンを使用したアクションゲームであれば、背後の敵を攻撃するときはいったん止まって向きを変える必要が生じますが、本作はダイヤルスイッチをあらかじめ下に向けておけば、前方に進みながら背後の敵を攻撃することが可能です。

要塞の破壊に成功すると、敵が白旗を掲げて降参してジングルが流れ、戦車が祝砲を放つとともにクリアボーナス得点が加算されます。本作の演出も『スペースシーカー』と同様、「原則3-B-④:快感要素の基本事項」における「褒め要素」を見事に演出し、プレイヤーにこの上ない快感をもたらしてくれます。
  

『エレベーターアクション』(1983年)

主人公のスパイを操作して、次々に出現する敵をピストルなどで倒しながら、エレベーターやエスカレーターを利用してビルの屋上から下のフロアへと進み、すべての機密書類を盗み出して最下層(地下1階)から脱出するとステージクリアとなるアクションゲームです。

最初の注目ポイントは、オープニングの演出の素晴らしさです。本作は、主人公がビルの最上階(のエレベーター)に向かってロープを投げ、内部に侵入するアニメーションをプレイヤーに見せることで、「これからスパイ活動が始まるんだな」という気分にさせてくれます。『アルペンスキー』と同様、「原則4-A-①:スタート時のつかみ」の好例ですね。

さらに本作は、ゲームの開始地点をビルの内部ではなく最上階に設定することで、プレイヤーは「あ、このゲームは下に向かって進めばいいんだな」と自然と基本ルールを理解することができる、「原則2:マニュアル不要のユーザビリティ」を見事に実現しています。

敵を倒したときに加算される得点には、「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」を用いた工夫がいろいろあります。本作では、敵を倒す方法は「ピストルで撃つ」(100点)、「ジャンプキックを当てる」(150点)、「エレベーターで押しつぶす」(300点)、「ランプを撃ち落として頭上に当てる」(300点)の4種類があり、倒し方が難しいほど得点が高くなっています。

また、ランプを撃ち落とすと画面全体が一定時間暗くなり、この間に敵を倒したときの得点は通常よりもさらにアップします。暗くなると敵の姿が見えにくくなりますので、より攻略が難しい状況で敵を倒したことによる報酬が上乗せされた、実によく考えられた得点システムですね。
  

『ちゃっくんぽっぷ』(1984年)

主人公のちゃっくんを、敵のもんすた(モンスター)に捕まらないように操作して、ハートが閉じ込められた檻を爆弾ですべて破壊し、制限時間内に画面右上のゴール地点に到達するとステージクリアとなるアクションゲームです。

本作の白眉は、「原則4-A-①:スタート時のつかみ」にあたる、「敵キャラに盗まれたハートを取り戻して!」とガールフレンドから頼まれるオープニングの演出と、1面が「原則2-B-①:基本的な操作方法を最初に提示する」で解説した手法のひとつでもある、チュートリアル(練習)ステージになっていることです。

1面は一本道なので迷うことが一切なく、また敵のもんすたが比較的簡単に倒しやすい位置に出現(※もんすたも爆弾で倒せます)し、爆弾を使えば檻や一部の壁が壊せることをプレイヤーが自然と学ぶことができます。さらに、画面下部にはひらがなで基本ルールまでも表示する懇切丁寧なステージ構成は、当時のアーケードゲームとしては極めて珍しかったように思います。

得点システムも大きな注目ポイント。1個の爆弾で複数のもんすたをまとめて倒すと、リンゴやトマトなどの得点アイテムが出現するのがその一例です。また、ステージごとに決まった発射弾数の爆弾で複数のもんすたを倒すと、取ると2000点のボーナス得点に加え、一定時間無敵になる「ちゃっくんハート」が出現する裏技も盛り込まれています。

ほかにも、もんすたを全滅させてからクリアすると、プレイヤーを祝福するジングルが鳴り5000点が加算されたり、逆に1匹も倒さずにクリアすると、さらに特別なジングルが流れて2万点とちゃっくんのストックが増えたりするボーナス得点システムもあります。

これらのボーナス獲得時に特別なジングルを流すのは、「原則3-B-④:快感要素の基本事項」で「コンテンツにハマってもらうための基本となるのは『褒め要素』である」と解説した、まさにそのものズバリの演出です。また、ボーナスの獲得はとても難しいことから、「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」にあたるアイデアであるとも言えるでしょう。

制限時間が迫ると、BGMが変化するとともに、画面上部にいる敵の「まいた」の数が徐々に増え、タイムアップになるとステージ内に岩を突き落とす演出があります。こちらは「原則3-A-⑥:音楽でテンポを調整」と、「原則3-E-①:状況によって音楽をインタラクティブに変化する」にまさに該当する、プレイヤーにスリル感を演出するおもしろいアイデアです。

3面をクリアするごとに登場する、軽快なBGMが流れるとともに、ちゃっくんたちが可愛らしいパフォーマンスを披露する、「原則3-A-⑧:ブレイクを準備する」にあたる演出、いわゆる「コーヒーブレイク」も必見です。
  

『フェアリーランドストーリー』(1985年)

主人公の魔法使いであるトレミーを操作して、敵に魔法をかけてケーキの姿に変え、さらに魔法を繰り返し当てるか、ケーキを左右いずれかに押して床に落下させて倒していくアクションゲーム。トレミーも敵キャラも、ポップで可愛らしく描かれているのが特徴です。

ケーキの姿に変えた敵を、別の敵の頭上に落とすことで複数の敵をまとめて倒すこともできます。敵を近くにおびき寄せ、いっぺんに多くの敵を倒すほど高得点が獲得できるので、ここでもやはり「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」の得点システムが導入されていることがわかります。

ケーキをぶつけて敵を倒すと、さらに得点アイテムのコインが出現します。敵を多く倒すほど高得点のコインが出現し、さらにコインをノーミスで取り続けると、得点倍率が2倍、3倍とどんどんアップしていきますが、途中でミスをすると倍率がリセットされます。つまり本作では、上手なプレイヤーほど高得点が稼げる二重、三重のボーナス得点システムが導入されているのです。

もうひとつ、本作で注目したいポイントは、敵を全滅させてステージクリア条件を満たしたときに、もし画面内に得点アイテムが残っていた場合は、次のステージに切り替わるまでに数秒間の「猶予期間」が用意されていることです。

ほんのわずかな「猶予期間」によって、プレイヤーが得点アイテム取りたいのに取ることができず、ストレスがためてしまうリスクを軽減する、実に素晴らしいアイデアですね。このような配慮は、後の『バブルボブル』をはじめとする、多くのタイトー作品にも継承されています。
  

『ハレーズコメット』(1986年)

マイシップ(自機)を操作し、ショットで敵を倒していく縦スクロールシューティングゲーム。太陽系の惑星が舞台に、ハレー彗星の大接近からすべての惑星を守るというストーリーで、3面をクリアするごとに次の惑星へと進みます。

本作のキモとなる演出は、画面右端に表示された惑星のダメージとハレー彗星の現在位置です。本作は、敵を倒さずに画面外に逃してしまうと、惑星が攻撃されてダメージを受け、ダメージが100%になると即ゲームオーバーとなってしまいます。「原則3-B-②:ミスとストレスの因果関係の明確化」を、まさに具現化した演出ですね。

さらに、ハレー彗星は時間とともに少しずつ惑星に接近し、ハレー彗星が惑星に衝突したときもやはりゲームオーバーとなります。いかにも太陽系の星々が滅亡の危機に瀕しているというスリル感を表現した、こちらも実におもしろいアイデアです。

3面をクリアするごとに加算される、ボーナス得点のシステムも注目ポイントです。ボーナスは惑星のダメージが少ないほど高得点となり、さらにダメージ0%でクリアすると、自機のストックが1機増えるご褒美も用意されています。

ダメージ0%でクリアするのは、どんなに手強い敵でも逃げることが許されず非常に難しいので、ここでもやはり「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」がなされていることになりますね。

また、隕石を破壊するとたまに出現するシップ型爆弾を装着すると、任意のタイミングで爆弾を爆発させることができるようになります。爆弾を使用すると、画面内の敵を瞬時に消し去り、同時に少し先の地点にワープする効果が発生します。

つまり、爆弾はピンチを回避する手段として大いに役立ち、同時に爆発の演出が非常に派手でプレイヤーの爽快感を高めることから、「原則3-A-⑨:シーンリズムの調整で快感を演出」と「原則3-B-⑥:一発逆転のチャンスを設定する」の両方を兼ね備えたシステムと言えるでしょう。
  

『ニンジャウォーリアーズ』(1987年)

忍者型サイボーグである、主人公のNINJA(※2P側はKUNOICHI)を操作して、苦無(くない。小刀のような武器)と手裏剣を使用して敵を倒し、制限時間内にゴール地点に到達するとステージクリアとなるアクションゲーム。元祖アーケード版はモニターを3台横に並べ、1台の巨大モニターとして遊べる専用筐体を使用していたことも有名です。

苦無は攻撃範囲こそ狭いものの、敵が放つ銃弾などを跳ね返す防具としても利用できます。手裏剣は射程が長いメリットがありますが、決まった数しか使えません(※ストック数は画面下部に表示されます)。前述の『フロントライン』とはまた違った形で、プレイヤーは状況に応じた武器の使い分けを考える必要があります。

各ステージをクリア後、手裏剣のストック数に応じたボーナス得点が加算されます。つまり、敵を倒すときに便利な手裏剣を節約するほど得点が稼げることから、やはり本作も「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」による得点システムを導入していることがわかります。

NINJAは敵の攻撃を浴びてダメージを受けるごとに、服がどんどん破れていくのもおもしろいアイデアです。主人公がサイボーグという設定を利用して、プレイヤーがミスをしたことを伝える、とても優れた「原則3-B-②:ミスとストレスの因果関係の明確化」のアイデアですね。本作は体力がゼロになるとゲームオーバーになってしまいますから、服が破れるごとにプレイヤーの緊張感をますます高める効果もありますよね。

本作は2人同時プレイにも対応しているので、「ゲームニクス理論」の「原則3-D-⑫:協力対戦プレイの導入」でも説明されている、「プレイヤー同士で力を合わせて共通の目標達成を目指す」遊び方も可能です。1人プレイだけでなく、ぜひ協力プレイでも全面クリアを目指してチャレンジしてください。
  

以上、『タイトーマイルストーン』の収録タイトルをご紹介しましたが、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?

今から30年も40年も前に、現在とは比較にならないほど性能が劣るハードあるいはソフトウェアを使って開発されたゲームであっても、当時の開発スタッフの創意工夫が随所に盛り込まれていることが、きっとおわかりになっていただけたのではないかと思います。

なお、「ゲームニクス理論」における「対戦プレイ」に関するくわしい解説は、筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則4-A-①:スタート時のつかみ」などのページに書いてありますので、ご興味のあるかたはぜひ御覧ください。

それでは、また次回!

『タイトーマイルストーン』発売中!

1980年代のタイトーの名作アーケードゲームを収録したNintendo Switch用ソフト『タイトーマイルストーン』が2022年2月24日に発売されました。

「アーケードアーカイブス」シリーズをリリースしているハムスター社の協力のもとに開発されたもので、『ニンジャウォーリアーズ』や『フェアリーランドストーリー』、『エレベーターアクション』といった名作に加え、今回初のコンシューマゲーム移植となる『スペースシーカー』など全10タイトルを収録しています。

【関連サイト】
『タイトーマイルストーン』公式HP :https://www.taito.co.jp/taitomilestones
『タイトーゲーム』 公式Twitter :https://twitter.com/TAITO_Apps
タイトーWEBサイト :https://www.taito.co.jp/

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