「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第9回 *「オホーツクに消ゆ」の音楽を紹介するんダーッ! 捜査2日目*

  • 記事タイトル
    「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第9回 *「オホーツクに消ゆ」の音楽を紹介するんダーッ! 捜査2日目*
  • 公開日
    2020年09月25日
  • 記事番号
    3698
  • ライター
    イチハラ指揮者

元気ですか! 元気があれば何でもできる。元気があれば全曲レビューできる!

突然ですが、皆さんは殺人事件を解決したことはありますか? 私はありません。だって警察官じゃないもの。

さあ二曲目から書くぞーっ! と思い、CDをふと見やると、一曲飛ばしていたことに気づいたのでした。そう、アレンジ版はメドレー形式になっており、1つのトラックに複数曲が含まれているのです。というわけで、一曲目の続き。
※前回の「オホーツクに消ゆ」の音楽を紹介するんダーッは、こちら

1.(続)オープニングテーマ

前回は「Title」の話をしましたが、続くのが「Name Entry」です。
これもまた原曲とは趣を異にするのですが、ありなアレンジだと思います。

途中に挟まれる、原曲にはないソロにはダブルギターが採用され、しかもハモりが上という、わかる人にはわかる気持ちよさ。
でもよく聴くとバッキングギターも聞こえるので、どうやらギターは3本のようです(多分)。
あまり実演には向かない感じですね。大抵のバンドではサポートメンバーが必要となるでしょう。でもこの曲を生のバンド演奏で聴いてみたい。そう思わせる説得力があります。
今度ライブやるときにやってみようかな。

ゲームでは、あの恐ろしい「Title」を抜けて、いきなり流れはじめるこの明るい曲に救われることとなります。
本作における癒やし系の曲です。
忙しげに動いている内声とベースに対して割とゆったりとした主旋律なのですが、ところどころで用いられる装飾音符、そして締めに細かい音符を持ってくるあたりが光ります。

アレンジ版と原曲との相違点ですが、何といってもテンポがまるで違います。
原曲は四分音符=100(*01)くらい(聞いた感じの概算ですよ)なのですが、アレンジ版は124くらいにまでアップしています。
さらに、これまた調が違う!!!
なぜだ!!!
何で調を変えちゃうんでしょうね。

2.ルブラン(晴海埠頭~繁華街~ルブラン)


「晴海埠頭」

ぎゃああああああぁぁぁ!!!
出たあああぁぁぁ!!!
「Title」があまりにも怖いので、なるべく聴かないようにと即スタートボタンを押し、「名前登録」で気持ちを落ち着かせたところに来るのがこの曲です。
しかもゲームがはじまっているので飛ばせない!

こんな曲が流れているだけでも怖いのに、それに輪をかけて画面には死体が映っているわけです!
もう勘弁してくれぇヒィ~となって、オホーツクを挫折するのでありました。

アレンジ版ですが、いや、これはダメでしょう。
違う曲ですよこれ。
主旋律のアルペジオも違うし。しかも、ベースが恐ろしさの一端であったのに、どういうわけかクラリネットの低音域に置き換えられています。
ここはクラリネットじゃないだろうと思ってしまいます。恐怖の曲だったのが、何やら神秘的な曲になってしまっている感があります。
これは「殺人のテーマ」ではないなぁと思います。

とにかく恐怖!!!


「繁華街」

オイオイ、捜査はじまったぜェ!?
犯人見つけちゃうぜェ!?
そんな風にワクワクさせてくれる一曲です。まさに夜の街の捜査。ピッタリな曲調です。
素晴らしい。大人な雰囲気を持った良曲と言えましょう。

アレンジ版については、調が違うのはもはや今後何も言わないことにします。
全体としては悪くないと思うのですが、原曲の特徴的なドラムパターンを何故崩してしまったのかが気になります。
Aメロもそうですし、特にサビ(Bメロ?)に入ってからのハイハットのオープン、クローズのコンビネーションはなくしてほしくなかったです。

また、ループ終わりの展開がまるで違っているのが本当に残念です。
ラストのsus4からの解決は残さねばならない部分ではないでしょうか。ドラムパターンとコード進行の相違により、本曲の持つ良さがかなり失われています。うーん……。

  
「ルブラン」

ルブランってゲーム最序盤しか立ち寄らないので、記憶に残りづらい曲なのではと思います。
かくいう私もあまり覚えていませんでした。
なぜなら、ルブランではホステスのアケミちゃんの「そこを調べろ」ばかr……まぁそれはいいとして、改めてじっくり聴いてみますと、とても平和な曲ですね。
キャバレーというより、平穏な日常という感じを受けます。
そういう雰囲気のキャバレーなのだと思えば納得ですが、ホステスの態度はあまり良くなかったような……。

アレンジ版は繋ぎがいいです。
「高田馬場」から自然に繋がっています。
っていうか、これ調が同じだ! 何でだ!!!

ただ、これもまた調が同じだけの別曲に思えて仕方がありません。
まず、「ルブラン店内」がはじまった直後のオルガンの技巧的な動き。これは原曲にはまったく見られないものです。初っ端から、何だこの曲!? となってしまいます。

それから、原曲ではベースが高めの音域なのですが、アレンジ版は重低音。原曲ドラムはあまり主張しないのですが、アレンジ版ではバスドラムの主張が強い。
色々と差異が認められます。

そして突然挟まれる「殺人のテーマ」!
レコードの針が飛んだのかと思ったのですが、これは演出なのでしょう。
さすが、サウンドアドベンチャーと銘打っているだけあります。
事件をチラチラとフラッシュバックさせているのだと見受けました。

3.北の出逢い(はじまり~北の出逢い)

  
「はじまり」

この曲もまた流れる箇所が極端に少ない(というか一度だけ)なので、強く記憶に残っている人は多くはないかもしれません。
いわゆるジングルに該当するかと思われます。

ですが、この演出がサスペンスのはじまりとしてはドンピシャで、当時のプレイヤーはみな、ファミコンをプレイしながら、まるでドラマを見ているかのような気分になったことでしょう。
欠かせない一曲です。

アレンジ版はメロディに口笛(なのか?)を使った着眼点が流石だと感じました。
刑事コロンボのテーマがヒントだったりするでしょうか。
ただ、テンポが上っており、伴奏が異なる形になっているため、オープニング曲としての重みとサスペンス感が損なわれてしまっているように思います。
無理にメドレーにせず、ジングルとして完結した一曲に仕上げてほしかったかな。

  
「北の出逢い」

オホーツクにおけるメイン曲の1つと言っても差し支えないでしょう。
舞台を北海道に移し、いよいよ本格的な捜査がはじまるぞと気分が引き締まったところで流れてくる、
明るく爽やかな名曲ですね。
しばらくの間、多くの時間を一緒に過ごすことになる曲です。

アレンジは原曲の良さを大きく損なうことなく、爽やかにまとめられています。
やはりテンポに違和感が。この曲の爽快さを出すにはもう少しアップテンポでないと厳しいように思います。

ドラムのビート自体はそのままなのですが、ハイハットのパターンがまるで異なるもの……というかそれ以前にダトダトダトダトという単純なパターンになってしまっているので、さらに重さが増してしまっているのが残念です。
テンポとドラムの二点を除けば良いアレンジではないでしょうか!

曲の途中で「はじまり」が挿入されますが、別に関連のある曲同士でもないので、果たして必要だったかなぁと。
この辺りからは、元々短い曲同士をある程度の長さの一曲としてまとめなければならないという編曲の苦労が伝わってきます。

いよいよ北の大地で捜査がはじまる。ゲームはここから。

ここまで書いてきまして、多くのアレンジで原曲とテンポが異なっているのは、メドレーとして複数曲を繋ぐ際、途中でテンポチェンジをしたくないばかりに、すべての曲が違和感なく聴けるギリギリの最大公約数的テンポを採用したのではという仮説に行き着きました。

4.グッド ラック

  
「グッドラック」

捜査メモ、いわゆるパスワードを取った時の曲です。
ゲームタイトルに「つづく」と表示され、捜査は中断となります。
この演出も、とてもにくいものがあります。

三拍子の哀愁を帯びた小品で、この曲を聴くと、どうも秋を思い描いてしまいます。
冬の北海道なのに。

アレンジ版は少しテンポがアップしているものの、曲調には合っていると言えるでしょう。
追加されたタンバリンの用法もはまっています。
ここに来て、ついにこれといった不満のない編曲が出ましたね!

パスワードを取った後。この画面になると、リセットする以外なくなります(でも実は裏技を使えばそのまま復帰可能)。

  
「ブラックジャック」

オホーツクでは、部下のシュンスケとトランプ(ブラックジャック)で勝負をすることができます。
単なるミニゲームかと思いきや、トランプをしないと捜査が進まない(しかもノーヒント)というプレイヤー泣かせの局面があるので(私はそうと知らずに進んでしまっていました)、必ず一度は耳にする機会がある曲です。

まさしく、ギャンブラーっぽい! といったジャジーな雰囲気を持った本曲は、ブラックジャックにはまらない限りゲーム中で聞いている時間は短いものの、とても記憶に残りやすい曲なのではないかと思います。

アレンジ版は、テンポが若干アップしているものの、王道な編曲と言えるのではないでしょうか。
惜しむらくは、ブラスが生音ではないことです。
予算とか色々仕方がない部分があったと想像しますが、生で聴いてみたいですね。

それから、ドラムのオープンハイハットが削除されていること。
テンポアップと相まって、どうも威勢のよい子どもみたいになってしまったので、アダルティな雰囲気がもう少し欲しい気がしました。

総合しますと、トラック4「グッドラック」に関しては、全体的に原曲の雰囲気を損なわず、良さを引き出しており、原曲ファンでも違和感がなく楽しめるのではないでしょうか。

でもこのトラックはテンポチェンジが入っているので、上記の仮説は早速否定されてしまったのでした。
悲しい。

さて、トラック4までご紹介いたしましたが、今回はこの辺で。

   
    

編集長! 全曲やると言ってしまった手前、なかなか終わりません!
が、残り二回以内で終えてみせますぞ!

それではまた次回!
読めばわかるさ、ありがとーっ!

脚注

脚注
01 1分間に四分音符をいくつ刻むのかという、テンポの概念です。音ゲー等をやるかたには、BPMと言えばわかりやすいかもしれません。”Beat Per Minute”つまり、1分間にいくつのビートを刻むのかということです。数が多ければ多いほど(基本的には)速いということになります。

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