「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第15回 *ゲヱセン上野さんに「オホーツクに消ゆ」のインタビューをするんダーッ!!! 後編*

  • 記事タイトル
    「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第15回 *ゲヱセン上野さんに「オホーツクに消ゆ」のインタビューをするんダーッ!!! 後編*
  • 公開日
    2021年09月24日
  • 記事番号
    5929
  • ライター
    イチハラ指揮者

元気ですか! 元気があれば何でもできる。元気があればロングインタビューも完結する!

イチハラ指揮者、渾身のロングインタビュー、最終回です。
今回はファミコン版(以下「FC版」)『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』(以下『オホーツク』)の楽曲毎のお話から伺っていきます。
それではどうぞ!

※前編は、こちらから。
※中編は、こちらから。

後述の「オホーツクツアー」で運行された特別列車。(写真提供:忍者増田氏)

「メジャーでもマイナーでもない感じの曲」という衝撃

イチハラ指揮者(以下「――」):では、ここからはFC版の詳細を伺っていきたいと思います。まず「Title」ですが、タイトルのみならず、最後のシーンでも使われています。最後に再度使うことで、とても印象的な場面になったのですが、これは意図した演出だったのでしょうか。

上野さん(以下「上野」):最後に使うことになった経緯ははっきり覚えていないんですが、事件を無事解決し、東京に戻ってきたことを印象付ける意味もあって、この曲にしたのかもしれません。

――:続く「Name Entry / Password」は、重苦しいタイトル画面、そしてゲームが始まると同時に死体が表示されるという衝撃的な場面の合間に挟まれる爽やかな音楽なのですが、これは意図したものだったのでしょうか。

上野:「ちょっと明るすぎるかな?」という気もしたのですが、実際にプレイしてみると、ゲーム開始時の重苦しさから解放されますよね。悲しげなBGMを聴きながら自分の名前を入れるのも気が滅入るでしょうから、これはこれでよいのでは? と思いました(笑)。

――:続く死体があがっている場面が、藪さんの曲ですね。すごく嫌なことが起こっているなという感じがします。

上野:作曲者が違うので他とは少し異質ですし、緊張感が漂うインパクトのある曲ですよね。この曲が流れると、「事件だ……」という嫌な感情と、「物語が先に進むぞ!」という期待が交錯して、何ともいえない気持ちになります。でもまあ、結局は遺体をぐりぐり調べたりしちゃうわけですけれども(笑)。

――:北海道に飛ぶ前に表示されるタイトルバックで流れる、8小節くらいの短い「始まり」は、まさにドラマのオープニングみたいな感じで。

上野:そうですね。テレビのサスペンス劇場のオープニングや、アイキャッチ的な曲をイメージして作りました。長すぎると待ち時間が多くなり、短すぎても物足りないので、間を取って8小節という感じですかね。

――:コロポックリで流れる「すすきの人生」は演歌ですね。

上野:昭和の酒場で有線放送から流れてきそうなエレジーですよね。あたかも歌詞があるようなメロディーを鼻歌で口ずさんで、伴奏をつけて……と、さほど苦労せずにできました。ただ、節回しには結構こだわって、調整に時間をかけました。演歌は子どもの頃から聴いていましたので、お任せください(笑)。

――:いいですね、歌詞付けたいですね(笑)。次に、ヒロインである「まきこ」のテーマですが、明るい曲ではない印象です。ストーリーありきで作られたのでしょうか。

上野:この曲に限らないのですが、塩崎さんから漠然としたリクエストをいただいたことが何度かあったんです。明確に「こういう曲」ではなくて、「メジャーでもマイナーでもない感じの曲」といった指示ですね。おそらく、塩崎さんの頭の中で鳴っている音があったのでしょうけど、それを言葉として引き出すことができなかったので、試行錯誤しながら何曲か作った覚えがあります。そんな曲の中の一つだったと思います。

――:そういうリクエスト、難しいですよね(笑)。今のお話を聞いて、メジャーでもマイナーでもない曲というのは、まさにそのような印象を受けたのでびっくりしました。リクエストに完璧に応えていてすごいです。

上野:下手な鉄砲を数打って当たっただけ……という気もしますが、そう言っていただけるとうれしいです。ありがとうございます。

――:「ブラックジャック」の場面で流れる曲はジャズ系のイメージですね。息抜きと思わせておいて、やらなければ先へ進めないという落とし穴が待っていました

上野:ブラックジャックは一気に最後まで進むのを阻止するストッパーでもあるのですが、本来の意図としては「行き詰まったときに他にやることがない状況」を回避するためのフィーチャーだったと思うんですよね。いずれにしても、物語の本筋からは少し離れるものなので、音楽も他の曲とは雰囲気を変えてあります。

――:多分、全体の中で、この曲を聴く機会はあまり多くはないと思うんです。余程ブラックジャックが好きな人でなければ(笑)。それでいながら、非常に頭に残りやすい曲ではないかなと。「ネームエントリー」とで、「二大明るい曲」みたいな位置づけで。

上野:確かにそうですね。物語のテーマがテーマだけに、ところどころに息抜きできる曲が欲しいなあ、と思いながら作っていたのかもしれません。特に意識していたわけではないんですが。

――:菊奴が出てくる場面の「芸者」は非常にシンプルです。

上野:矩形波2声のみを使って、ちょっとお琴っぽい曲になっています。できれば三角波も加えて厚みを出したかったのですが、三角波の「ポー」という音色が入ると雰囲気が変わってしまって、うまくいかなかったんですよ。

――:捜査第3部から流れる「追跡」ですが、フレッシュな気持ちでゲームを続行できて、とても良かったです。人気があるのがわかる曲です。

上野:『オホーツク』の中では特に、この曲を気に入ってくださっているかたが多いみたいですね。「追跡」やエンディング曲は、『オホーツク』ファンの方々がいろいろなアレンジでカヴァーしていて興味深いです。そういえば昔、餅月あんこさんから、『オホーツク』のカセットテープを買ったことと、「追跡」はイイ! という話を力説されたことを思い出しました(笑)。

――:力説!(笑)。この「追跡」は、制作段階のどのあたりで作られたのでしょうか。

上野:終盤あたり、曲が足りなくなってきたときに作ったと思います。ただ、すでに何曲も作った後に、さらに新しい曲を作ろう……といっても出尽くしてしまっていて、悩みながら作った記憶がありますね。アイディアが枯渇する中、何とか絞り出して作ったという意味で思い出深い曲です。

――:苦労した曲だったんですね。でも、そういう曲の人気が高いというのは、やはりユーザーに伝わる何かがあるんでしょうね。

上野:過度なプレッシャーによって、火事場の馬鹿力的な何かが覚醒したのかもしれません(笑)。でも、原稿などでも、締め切りギリギリに冒頭3行ぐらいの書き出しがひらめいて、そこから一気に書けてしまうことってあるじゃないですか。それに近い感じでしょう、たぶん。

――:ゲームの佳境で流れる「真紀子さん救出」ですが、真紀子の救出から炭鉱脱出までの短い期間でしか流れません。ここ一番のために一曲使おうという要望があったのでしょうか。容量が限られている中、思い切った決断であるように感じます。

上野:そういった要望は特になかった気がしますが、不安や焦りを感じさせる曲調なので、この場面に使ったのでしょうね。とはいえ、あまりおどろおろどしい場面でもないので、木管アンサンブルをイメージして、淡々とした曲にしたつもりです。

――:木管アンサンブルとなると、吹奏楽の経験が活かされた曲といえるかもしれませんね。次に、私個人的に問題の「真相」ですが、この曲怖すぎませんか?(笑)

上野:ことさら怖くしたつもりはないんですけど、怖がってもらえてよかったです(笑)。この曲は確か、短すぎるとか、単調だからとか、そんな理由でボツにされかけたんですよ。でも、自分では気に入っていて、無理を通して使ってもらった覚えがあります。使ってみたら意外とマッチするぞ、という感じで。

――:それで言うと、浦田甚五郎が真相を語るときはマッチしているなと思ったんです。でも、奥村の家で流れるのはどうしても怖くて……(笑) ここに当てはめたのは誰だあっ! と(笑)

上野:奥村の家で使った経緯はあまり覚えていないんですよね。事件現場の曲と少し曲調が似ていたり、奥村の家のちょっと暗めな雰囲気との相乗効果でより怖く感じるのかもしれませんね。

――:ではこれは塩崎さん案件ということで(笑) クライマックスで流れる「ファイティング シュンスケ」ですが、不協和音と変拍子が多用された、大胆な曲だと思いました。流れる場面はごくわずかですが、印象に残っています。

上野:物語の山場ともいえる印象的な場面なので、ちょっと実験的な曲になっています。もともと、ジャズやプログレッシブロックなどの変拍子の曲はわりと好きなんですけどね。完成した曲を聴いたら何となくパンクっぽさもあって、本来変拍子の曲じゃないのに演奏がヘタで変拍子に聞こえちゃうような(笑)。

――:すごいですね。仰るとおりに聞こえます。何かちょっと演奏やらかしてるなぁみたいな。

上野:最初からそこまで狙ったわけではないんです。でも、偶然の産物というか、出来上がったものを聴いたらそんな雰囲気になっていて、おもしろかったのでそのまま使いました。あと、部活のときに変拍子の小難しい曲を演奏していたので、自分でも変拍子の曲を作ってみたいと思ったんでしょうね。

――:お話を聞いていますと、上野さんは頭で漠然とイメージしたものを音楽として落とし込む力がすごいなという印象です。

上野:ありがとうございます。ただ、曲作りをして実機で鳴らすまでの間に、データを手作業で結構いじっていますからね。段階を踏んで完成データにする過程で、結果的にいい感じに落とし込めたということだと思います。

――:(やっぱり謙虚なかただ……)

上野:先ほど、MIDIシーケンサーで作ったデータを実機用に変換するという話をしましたが、本当はコンバーターを作って、自動でデータ変換するのが一番楽なんです。でも、このときはシーケンサーのデータを見ながら、実機用のデータを手で打ち込んでいたんですよ。それで何が起こるかいうと、手作業なので誤入力したりするんですよね。

――:打ち込みあるあるですね。

上野:明らかなミスの場合は直しましたが、意図しない意外な効果が出たりすると、そのまま残したりもしていました。「ファイティング シュンスケ」も変拍子は変拍子なんですけど、厳密にはちょっとずれた変拍子の可能性もあって、そういうズレもおもしろみに繋がっているのかもしれません。

――:そのあたりも実験的だったと。

上野:そうですね。1声がギュイーンと上がって、もう一方が下がるような効果も、ファミコン音源が持っている機能を使っています。効果音でよく使われる機能ですが、BGMで使っても楽しいかも、と思ったんですよ。いろいろと変わったことを試していますが、意外と場面に合っていてよかったです。

――:最後の「エンディングテーマ~新たなる旅立ち」のイントロについてなんですが……。

上野:はいはい、市原さんの記事読ませていただきました。(*01)イントロの音ズレのことですよね? あれは、ズレているように聴こえるかもしれませんが、データ上は合っているんです。8小節目までは2声使って、擬似ディレイっぽくアルペジオを鳴らしているんですが、9小節目からは1声に集約しているんですよ。それでズレているように感じてしまったのでしょうね。

――:ちょっと聴き直しますので、お待ちください……はい、おっしゃるとおりずれていませんでした、完全に思い込みでした! 連載記事に訂正を入れておきます! 失礼いたしました!

上野:いえいえ大丈夫です。何しろ3声(+ノイズ)しか使えないので、いろいろトリッキーなこともしているんです。人によって聴こえかたは様々だと思います(笑)。

「オホーツクツアー」に参加した忍者増田氏。私服なのに忍者っぽいのは流石としか言いようがない。(写真提供:忍者増田氏)

ゲーム外でも展開されていく『オホーツク』ミュージック

――:このエンディング曲は、桃井はるこさんが詞を付けてカヴァーされていますね。(*02)元々、バンドサウンドをイメージしたものだったのでしょうか?

上野:バンド感は特にイメージしていませんでした。だから、桃井さんがカヴァーされるというお話をレコード会社のかたからお聞きしたときに、どんな曲になるのか楽しみだったんですよ。で、完成版のCDを聴いてみたら、イカすバンドサウンドにアレンジされているし、自分の曲に桃井さんの詞が乗っているしで、何か嬉しかったですね。歌詞カードを縦読みすると、隠しメッセージも仕込まれていましたしね。

――:そんな隠し要素が! 要チェックですね。

上野:ぜひ、CDをゲットして確認してみてください。曲だけなら音楽配信サービスでも聴けるようです。

――:それではCD繋がりで、アレンジアルバムのお話を伺います。制作の経緯は覚えていらっしゃいますでしょうか。また、企画コンセプトや、「サウンドアドベンチャー」という命名の意図は……。

上野:「サウンドアドベンチャー 北海道連鎖殺人オホーツクに消ゆ」(アポロン音楽工業/1987年発売)のことですよね。それが何というか、制作決定後に知ったので、くわしい経緯はよくわからないんです。まあ、作曲者だからといって特別扱いされるわけでもなかったですし、そもそも作曲者という自覚もなかったですし(笑)。「サウンドアドベンチャー」というネーミングは、レコード会社のほうでつけたものだったと思います。

――:アレンジ版の編曲は上野さんもチェックのうえ、OKやNGの権限はあったのでしょうか。

上野:自分にそんな権限があるとは当時まったく考えてなくて、ほぼほぼお任せです。プリプロ(*03)やポスプロ(*04)も関わっていません。曲はアレンジャーのかたが耳コピで採譜して、編曲されたはずです。というのも、曲はすべてシーケンサーに直接打ち込みながら作っていたので、譜面が存在しなかったんですよ。だから、お渡しできるものが何もなくて……しかも、メドレーにする必要もあったでしょうから大変だったろうなあと、今思えば申し訳ないです。

――:そうですね。メドレーにするのも大変そうですよね。収録には立ち会われたのでしょうか。

上野:収録時のみ立ち会いまして、どうしても、というところだけ直していただきました。例えば、メロディーやコードが原曲と違っている箇所があったりしたのですが、現場ですべて直していただくのは無理なので、メロディーだけでもオリジナルに近づけてもらったり……といったことはありましたね。

――:そういう見えない部分でのご苦労があってのアルバムだということですね。サウンドトラック制作について、記憶に残っているエピソードはありますか?

上野:収録スタジオでは、PC-8001でシンセ等を制御してレコーディングしていたように記憶しているのですが、サンプリングのストリングス(*05)が当時としてはかなりハイクオリティーだったのが印象的でした。あと、エレキギターのソロ演奏を間近で見られたのも感激でしたね。余談ですが、このアルバムはLP、CD、カセットテープの3メディアで発売されたんですよ。ゲーム音楽の音源がこの3メディアで発売されたのは、結構珍しいかもしれません。ちょうどレコードからCDへの移行期で、アポロンさんがカセットにも力を入れていた会社だったからでしょうけど。

――:全曲レビューでは、アレンジ版についてなかなか辛辣なレビューになってしまって大変恐縮です。

上野:はい、拝読しました。当時はゲーム音楽のアレンジに最適解がなくて、模索していた時代だったのかもしれませんね。原曲とキーが異なることについては、使う音色の音域や、メドレーにする都合で移調した可能性もあるので、私自身はさほど違和感はなかったんです。そもそも、スコアをお渡しできずにお手数おかけしているので、私からはとやかく言えません(笑)。

――:(やっぱり謙虚なかただと感動)2002年に復刊ドットコムで再販が決まった復刻盤CDでは、FC版オリジナル音源が1ループだったり、オリジナル音源1曲目の「Title」の開始位置が間違っていたのがちょっと残念だったのですが、何か理由や事情等はあったのでしょうか。

上野:復刻盤についても制作されていることをまったく知らなくて、気づいたら発売されていました(笑)。廃盤になったゲーム音楽CDが、発売から15年も経って復刻されるなんて思いもよらなかったもので……といったわけで、ご質問についてのくわしい事情は分からないんです。ちなみに、先着で貰えたらしいCD購入特典のニポポ人形ももらい損ねました。

――:復刻も知らないうちに決まっていたのですね。私もこの再販のときにCDを手に入れましたが、ニポポ人形はもらい損ねました。上野さんにはニポポ人形付きで進呈してほしかったです(笑)。

持つべきものは友と忍者だ!――今後の展望について

上野:そのニポポ人形ですが、何と、ようやくゲットできたんです。今年、JR北海道「流氷物語号」×『オホーツクに消ゆ』という企画があったのですが、そこで販売された「涙彫ニポポ」という人形を、ライターの忍者増田くんが買って送ってくれたんです。宅配便の伝票に手書きで「木彫りの人形」と書かれていて、ちょっとオカルト感ありましたけど……持つべきものは友と忍者ですね(笑)。

これがツアーで限定販売された「涙彫ニポポ」だ! ありがとうござい増田(さん)!(写真提供:忍者増田)

――:それ、私も頂いたんですよ!!! 嬉しかったなぁ。2月末にツアーで開催されたファンミーティングのイベントですよね。持つべきものは友と忍者だなぁと思いました(笑)。で、増田さんがアップされていた動画を見ると、JRの駅員さんがホームで『オホーツク』の曲を演奏して迎えてくれていたんですよ。それがまたトロンボーンだったのが、今回こうしてお話を聞いて、なんたる偶然だと。

上野:その動画、私も観ました。トロンボーンで演奏なさっているのを聴いて、奇遇というか、不思議な縁があるもんだなぁと思いました。

――:今回のツアーは音楽面での関わりはなかったようなのですが、こうして駅員さんが曲を覚えていらして、耳コピして演奏されていると。やはり愛されている曲なんだなと思います。演奏している横で、人間の大きさのニポポ人形が動いているというのがまたすごかったです(笑)

これが実際の写真。オホーツク愛を感じます。向かって一番左にいらっしゃるのは……!?(写真提供:忍者増田氏)

上野:気合い入ってますよね(笑)。子どもの頃に夢中で遊んで、思い出に残っているゲームというのは、みなさんたくさんあると思うんです。それを今回のようなイベントとして実現してくださったことは本当にありがたいことで、関係者や参加者の方々には感謝です。

――:こうして、ツアーが開催されたりと再評価されている『オホーツク』ですが、音楽の面からも何かやりたいという気持ちはございますか?

上野:あまりストーリーにとらわれない形で、再構築したアレンジ版があってもおもしろいかなーとは思います。ただ、ファンのみなさんが公開されている様々なアレンジ版を聴くと、どれも「正解!」に思えてしまうんですよね。となると、下手に自分でアレンジしても納得してもらえないのでは!? という気もしたりして……。それとは別に、まったく新しい作品を作ってみたいなぁ、という気持ちもありますけど。

――:上野さんのアレンジなら納得するほかないと思いますけどね(笑)。上野さんの新曲も、ぜひ聴いてみたいです!

上野:たまに気が向いたときに短い曲を作ったりはしていますが、腰を据えてじっくり作る根気が欠けているというか……。やるときはやりますが滅多にやらない性格なので、キチンと発表できるような曲がいつになるかはわかりません(笑)。

――:首を長くして待ちたいと思います(笑) それを待つ間、私が代表を務めております、新日本BGMフィルハーモニー管弦楽団にて、『オホーツク』の楽曲を管弦楽用にアレンジしてコンサートを開催させていただくというのは可能でしょうか。

上野:それはとてもうれしいお話ですし、演奏してくださるのはまったく問題ありません。むしろ大歓迎です。何なら飛び入りでトロンボーン吹きましょうか……すみません、ウソつきました。もう何十年も吹いてないので、吹けないと思います(笑)。会場でおとなしく聴かせていただきます。

――:ありがとうございます。開催を目指して頑張ります! それでは最後になりますが、『オホーツク』楽曲のファンの皆様にメッセージがあればお願いします。

上野:先程も少しお話しましたが、制作時はまさか30年以上も愛され続ける作品・楽曲になるとは思ってもみませんでした。ありがたいことです。これからも折々に、謎解きに頭を悩ませた当時を振り返りながら聴いていただければ幸いです。

――:本日はどうもありがとうございました。

【インタビューを終えて】

ゲヱセン上野さんこと、上野利幸さんロングインタビュー、いかがでしたでしょうか。
これまで(恐らく)存在しなかった、上野さんが『オホーツク』に関わるまでの歴史、そして『オホーツク』音楽インタビューの決定版にしたいと思い、気合を入れて伺いました。
事前に大まかな質問内容をお送りしていたのですが、「これはかなり濃いインタビューですね」と仰っしゃりつつ、嫌な顔一つせず、快くお受けくださいました。

30年も前のことですので、細かいところまで思い出すのが大変なところ、一つ一つ丁寧に記憶を辿ってくださいました。お陰様で、ほとんどが謎という状態にはならず、またこれまで明らかになっていなかったと思われる新事実がいくつも出てきたので、とても新鮮なお話として伺うことができました。

上野さんから受けた印象としては、聡明かつ温和。何より業界初期を知る重鎮的ポジションにいながら、大変謙虚なかたであることに驚きました。
さらに――今回の趣旨とは少し外れるのでインタビュー内には掲載していませんが――後進や業界の今後のことを真摯に考えていらっしゃる、尊敬すべきかたであると感じました。

このような素敵なかたにも関わらず、これまで音楽家としてのインタビューや記録のようなものがほぼ存在していなかったのが非常に不思議です。それだけに、今回こうして携われたことを光栄に思います。

この場を借りまして、インタビューを実現させてくださった編集長、そして、上野さんとのご縁をお繋ぎくださった餅月あんこさんに御礼申し上げます。
上野さん、今回はお忙しい中、本当にありがとうございました。
新曲、首を長くしてお待ちしております!

それではまた次回。読めばわかるさ、ありがとーっ!!!

脚注

脚注
01 「イチハラ指揮者の“カレー”なる日々」第12回 *「オホーツクに消ゆ」の音楽を紹介するんダーッ! 捜査5日目* https://igcc.jp/ichihara-12/ 私が間違っておりました! 申し訳ありませんでしたあああぁぁぁッ!!!
02 新たなる旅立ち~オホーツクに消ゆ エンディングテーマ~ 8BIT Studio Session/『ファミソン(R)8BIT SP~ゲームソング編』(高橋名人 × 桃井はるこ)に収録。
03 プリプロダクション。録音前の作業。
04 ポストプロダクション。録音後の作業。
05 弦楽器。ここでは弦楽器の音色のことを指す。『オホーツク』サウンドトラックはシンセサウンドなので、実際に奏者が弦楽器を弾いているわけではない。

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