西谷 亮インタビュー Part4

  • 記事タイトル
    西谷 亮インタビュー Part4
  • 公開日
    2020年01月31日
  • 記事番号
    2628
  • ライター
    IGCCメディア編集部

対戦格闘ゲームの扉を開いた男 特別編

全三回に渡りお届けしてきた西谷 亮氏のインタビュー。ゲーマーからゲームクリエイターへの突然の転身ながらも、デビュー直後から氏が傑作を作り続けることができたのは、いったいなぜなのか。その理由の一端でも垣間見ることができたのだとしたら、これに勝る喜びはない。
さて50,000文字を超える超特大インタビューの最後を飾る今回は「特別編」と題して、カプコンを退社してアリカを設立し、さらなる傑作を作り上げようと燃える西谷氏の「今」を語っていただいた。

「対戦格闘ゲームの扉を開いた男 前編」は、こちら。
「対戦格闘ゲームの扉を開いた男 中編」は、こちら。
「対戦格闘ゲームの扉を開いた男 後編」は、こちら。

【聞き手】
大堀康祐(ゲーム文化保存研究所 所長)
【聞き手・資料提供】
石黒憲一(娯楽産業研究家)

独立後の第一作目

―― カプコンから独立されて、『ストリートファイターEX』(1996年/カプコン 開発:アリカ)を開発されるわけですが……。

西谷 これは最初から『ストリートファイター』で、というのではなく、オリジナルの対戦格闘ゲームとして開発していました。

―― どういったコンセプトで?

西谷 ざっくり言うと、ポリゴンで2Dの対戦格闘ゲームを作ったらおもしろいんじゃないかな、という部分ですね。

―― どうしてポリゴンなんですか?

西谷 え……やってみたかったので。ポリゴンって当時、流行ってたじゃないですか(笑)。

大堀 そういう理由(笑)?

西谷 あの頃、カプコンはあんまりポリゴンのほうは向いてなかったんじゃないかな。もちろんずっと研究はしてましたけど。まだ早くない?みたいな感じで。逆に私は新しいこと大好きなので、ポリゴンやりたいポリゴンやりたい……という状態で(笑)。

―― そこで対戦格闘を選んだのが興味深いです。普通にアクションゲームとかシューティングを作るといった選択肢はなかったんですか?

西谷 当時、すでに『鉄拳』(1994年/ナムコ)とかありましたけど、2Dのゲーム性にポリゴンを持ち込むところに自分なりの新規性を見出していた、と言えばいいんでしょうか。とにかくやってみたかったのが第一ですね。

『ストリートファイターEX』のインストラクションカード(plus)とチラシ。カードブレイクが使用できるようになった(石黒憲一氏提供)

石黒 今にしてみればローポリゴンと言われてしまうでしょうけど、当時は相当苦労なさったんじゃないかなと思います。

西谷 いやぁ、本当に苦労しました。とにかく大変でしたね。弾(波動拳のようなもの)を出してと言うだけで、プログラマーに文句言われましたからね(笑)。

―― (一同爆笑)

西谷 こっちは2D格闘ゲームの感覚で「波動拳、出せるようにしてよ」とごくごく当たり前のことを頼んだつもりなんですけど、プログラマーからは「ダメです、無理です、できません」と(笑)。まあ、確かに考えてみれば当時のポリゴンのゲームで人間が弾を飛ばしているゲームってあんまりなかったでしょうし……。「波動拳というのは、手のどこからどのように出ているんですか?」なんて訊き返されたりして(笑)。

大堀 それは説明できない(笑)。

―― こちらのゲームは、最初からPS(プレイステーション)と互換性のある基板「ZN-1」で動かすことを念頭に置いて作られていたんですか?

西谷 そうですね。

―― では、プレイステーションでの展開も……?

西谷 いえ、そっちは最初は考えていなかったと思います。アーケードありきで開発してましたね。さっきも言ったように、そもそも最初は『ストリートファイター』とはまったく関係ないゲームとして開発していたこともあって、どこでどうやって売るとか、そういったことさえも考えていなかった。

―― どのような経緯で『ストリートファイター』に?

西谷 ゲームがだんだん完成形が見えてきて、カプコンさんで売ってもらえないかなと思ったとき、『ストリートファイター』のIPもお借りできないかと、いろいろ考えが膨らんで……。それでゲームの内容をVHSのビデオテープに録画して岡本さんのところに見せに行ったら、「うん、いいよ」と言ってくださって、それで『ストリートファイターEX』になったわけです。今、思うと、岡本さんよくOK出してくれたなぁって思いますよ(笑)。

―― あまり自信はなかったんですか?

西谷 じつは最近、岡本さんのところに持って行ったビデオテープを見返す機会があって……岡本さん、なぜこれにお金を出してくれたんだ、と(笑)。

―― 西谷さんの最後の「調整」を信じていたんでしょうね。

西谷 そうかもしれませんね、だからものすごく本気で頑張りましたよ。岡本さんの期待を絶対に裏切っちゃいけない、と。

石黒 コンシューマに持っていくのは、そこから自然な流れだったんですか? 西谷さんはスーファミ版の『ストII』も手掛けていますし。

西谷 いや、じつはまだその頃は「コンシューマ嫌い説」が完全になくなっていたわけじゃなく、くすぶった状態だったんですよ。

―― あれだけの大ヒット作を手掛けたのに、まだ家庭用ゲームを敵視してたんですか(笑)。

西谷 ただ、あの頃ぐらいからアーケードではなく家庭用に軸足を移すメーカーは確かに増えてきていたんですよね。でも、私は昔からアーケードゲームが大好きで、その気持ちは全然衰えることなく、それどころかアリカを作ったときはアーケードを作りたい気持ちがMAXで。アリカのほかの仲間たちも、同じような感じだったと思います。

―― では、本気でアーケードゲームのメーカーとして進んでいこうと?

西谷 そうですね、そのつもりでした。将来のこととか、あんまり考えたりしないんで(笑)。いや、笑っちゃいけないんですけど。ただ、ビジネス的なことも考慮しないと、社員に迷惑かけちゃいますから……そういうこともあって、家庭用でも展開すべきかなと思うようになったと。

石黒 『EX』シリーズは、2Dと3Dの間を行くようなゲーム性で、ポリゴンなのに2Dのゲームみたいにキビキビ動くのがすごく気持ちよかったですね。

大堀 そうだね。2Dの『ストII』とかと比べても違和感なかったし。

西谷 そう言っていただけるとうれしいですね。でも、そこってすごく悩んだ部分なんです。社内でも意見が割れましたし。

―― 2D的にすることに反対意見があったわけですか?

西谷 2Dのゲーム性を追求すると、技のモーションをばんばんキャンセルすることになるわけです。移動のためにフォロースルーを切ったり。それに、もともとスーパーキャンセルという概念が入っているので、モーションの途中、1フレームのところで移動しちゃったり。そういうのを見ると、これってどうなの?と意見が出てくるのも当然なんですよね。

―― ポリゴンの売りはモーションという側面もありますよね。

西谷 そうです。ポリゴンだから2Dよりも違和感が出てしまうんじゃないかとか、いろいろ考えました。でも、そこはおもしろさとか操作性重視かな、と。もっとあとのことになりますけど、当時『鉄拳』を作ってた方と昔の話をすることがあったんですけど、やっぱりモーションをきれいに見せるために少しぐらいならゲーム性を犠牲にするのも場合によっては厭わない、と。そういう考え方もあったそうです。でも、それはそれぞれのゲームの個性なのかなとも思います。

大堀 俺はやってて楽しいのがいいなぁ。

西谷 私もそうですね。やっぱりゲーマーなのかなと思います。
 

予備知識ゼロで『ウィザードリィ』

―― さて、そうしているうちにカプコンから『ストリートファイターIII』(1997年/カプコン)がついにリリースされます。『ストII』の正式な続編が出るというのを、外側から見てどのような感想を持ちましたか?

西谷 私がカプコンを辞める前から作っていたので、ようやく発売するのか、と思いましたね。とにかく大変だったと思います。

―― どのあたりが大変そうだと感じましたか?

西谷 ある程度名前のある『ストII』という存在を超えなくてはならない、というハードルですね。そういったプレッシャーだけじゃなく、キャラの技のモーションも恐ろしいほどのパターンを用意したりとか、物理的な作業量も、私が『ストII』を作ってた頃の比じゃないんです。それをちゃんと作り上げたのは、さすがだなと思います。ただ私はブロッキングのシステムについていけなくて、すぐに蹴落とされました(笑)。

―― 西谷さんともあろうお方が!

西谷 結構頑張ったんですけどね。あれは難しかった。

―― 『ストIII』をご覧になって、久々にナンバリングタイトルをやってみたい……というお気持ちにはなりませんでしたか?

西谷 いやぁ、飽きっぽい理論が(笑)。

大堀 やっぱり、それですか!

西谷 さっきも言いましたけど、「続きもの」って違う人が作ったほうが絶対にいいと思ってるんですよ。そうすれば違う視点のものが作れますし。まあ、個人的な意見ですけど。ただユーザーとしても、似たようなものになると新鮮味が感じられないと思うんじゃないかなと思ったりもします。

―― では『EX』シリーズは……。

西谷 いや、これも次からは私、あんまり関わってないんで(笑)。

―― ここでも飽きっぽい理論が発動!

西谷 こればっかりは性格なのでどうしようもないですよね……。あ、もちろん全然関わっていないわけじゃないですよ。ちゃんと見るべきところは見てます。

石黒 『EX』シリーズといえば、スカロマニアとかダラン・マイスター(インドラ橋)などのキャラは絶対はずせないと思うんですが、あのへんのキャラはどなたが考えたものなんですか?

西谷 誰の案というわけではなく、最初にどんなキャラを出したらいいだろうと、アイデアとかラフスケッチとかを持ち寄ってああだこうだを繰り返した感じですね。

―― スカロマニアの人気は、海外でも凄まじいものがありますね。

西谷 そうなんですよ。どうしてなんですかね(笑)。私的には、あんまり自分から離れていないキャラというか、等身大のヒーローっぽいところが受けたのかな、とは思ってるんですけど。

―― 西谷さんがこの次に携わったゲームというと『エバーブルー』になるんでしょうか。

西谷 そうですね。あのゲームはかなり……というか、メインでといってもいいぐらいの位置づけで関わってます。

―― 西谷さんにとって、開発に携わったはじめてのRPGということに……。

西谷 そうなりますね。光と陰の表現って、これを活かすとゲームになるんじゃないかというところからスタートした企画だったと思います。

―― ポリゴンならでは、ですね。

西谷 はい。最初は懐中電灯で前方を照らす、といった感じのものを考えていましたね。それならお化け屋敷っぽいものはどうか……とか、いろいろ議論を重ねていくうちに、海の中だと描画の都合がいいな、と。それでそのアイデアを使ったRPGになっていったといった経緯があります。

―― 西谷さんとRPGという組み合わせは新鮮というか、不思議な感じがあります。

西谷 私、最初はRPGが嫌いでしたけど、好きになりましたから(笑)!

大堀 ホントですか(笑)?

西谷 あ、RPGで昔のことを思い出しました。カプコン時代、岡本さんが『ウィザードリィ』を持ってきてくださって、「これ海外で流行ってるらしいからやってみろ」と。

『ウィザードリィ』のパソコン版とファミコン版のチラシ。ファミコン版のチラシのキャッチコピーには『国際的なゲームです。』とある(石黒憲一氏提供)

―― 予備知識ゼロで、いきなり『ウィザードリィ』は荷が重いですね。

西谷 今、思えば結構むちゃですよね(笑)。よくわからないままキャラを作って、ダンジョンに潜ったら、速攻で墓が並んだんですよ(笑)。

―― いきなり全滅しましたか!

西谷 もう、何が起こったのかわからなくて。こうやってどんどん墓を作っていくゲームなのか、とか思いましたもん(笑)。

大堀 そんなわけがない(笑)。

西谷 そんなことがあって、それ以降は『ウィザードリィ』に触らなくなりましたよ。

―― となると『ウィザードリィ』は今でもトラウマですか?

西谷 そのあと『ドラクエ』にハマり、RPGというものにだんだん抵抗がなくなってきて、それで……『ストII』を作ってるあたりだったかな。プログラマーの子が持っていたパソコンを手放すといっていて、それなら私に売ってよ、と安く譲ってもらって。それで改めて『ウィザードリィ』を遊びはじめたら、これはすごくおもしろい、と(笑)。

―― ファミコン版は遊びませんでしたか?

西谷 やりましたよ。ただ、それからすごいあとになってからですけど(笑)。それで1、2、3と順番にすべてクリアしましたよ。

―― もうそのときはRPG嫌いは……?

西谷 完全に克服しました!

―― では、そのときの経験が『エバーブルー』の制作に……。

西谷 きっと活かされていると思いますね。

『ファイティングEXレイヤー』は苦労しました

―― さてその西谷さんの最新作……といっても、リリースされたのは去年(2018年)ですが、インタビューの冒頭で大堀所長と対戦していただいた対戦格闘ゲーム『ファイティングEXレイヤー』ということになります。

大堀 ぼくが一番感動したのは、自社で作ったってところですね。すごいことするなぁってビックリしました。

西谷 持ち出しですよ(笑)。でも、もう無理ですよ(笑)。

―― ご苦労なさったところは……いえ、たくさんおありになると思いますが。

西谷 大変なことばっかりな上に予想外なこともありましたね。たとえば、昔は日本のソニーさんにマスターを渡せば海外でも全部売ってくださったのに、それがいつの間にか変わってて。今は海外のソニーもアメリカとかヨーロッパとか分かれてて、日本だけじゃなくその全部とやり取りをしなくちゃならなくて、これは正直死ぬかと思いましたよ(笑)。いや、笑い事じゃないんですけど。

―― ご苦労なさった海外版ですが、反響のほうはいかがでしたか?

西谷 よかったですよ。日本よりも海外のファンのほうが喜んでくれたと思います。ただ日本で支持されなかったというわけではなく、日本の中でもものすごく楽しんでくださっているとある団体があって、今でも大会を開いてその模様を配信してもらえて……めちゃくちゃうれしいし、感謝してます。

―― それは開発者冥利に尽きますね。

西谷 しかもレベルが高い。少なくともこのゲームに関していうと世界一うまいんじゃないかな、と思います。開発者の私たち視点から見ても、思わずうなってしまうようなプレイをしていて……。

―― 『ファイティングEXレイヤー』は見た目もグッときますよね。

西谷 ああ、そう言ってくださるとうれしいですね。うちがこれまで手がけてきたゲームの中で、間違いなく一番頑張ったタイトルですから。

大堀 他の格闘ゲームと比べても全然見劣りしてないよね。

西谷 プレイヤーの視点で見ると、うちがリソースが少ないとかまったく関係ないことじゃないですか。プレイヤーからしたら、どうしても同じ対戦格闘ということで『ストV』とか『鉄拳7』とかと見比べちゃいますよね。なので、そこで差が出て、遊んでいないのに「このゲームは遊ばなくていいや」なんて思われないようにしました。

―― 特別な対策は何か立てたのでしょうか?

西谷 ビジュアルに関していうと、私はそこから離れて、専任の担当者をつけました。うちの三原なんですけど。彼にはビジュアルに特化した形で関わってもらうようにして、それで現在のクオリティが実現できた感じですね。

―― ちょっとでも粗が見つかると、すぐに叩かれたりしますよね。

西谷 そうなんですよ。今って、いくらでも比較対象がいますから、とにかくこの部分はいいやと妥協することがなかなかできない。

大堀 繰り返しになりますけど、やっぱり自社でやれるのはすごい。その一言に尽きますよ。

西谷 いや、もう無理。これ以上はできない(笑)。

―― 三原さんがいる限り、できそうな気がしますが……。

西谷 いやぁ、お金が何とかなっても、もうこれ以上、海外を相手に交渉したりとか無理。絶対にやりたくない(笑)。

―― いえ、もしかしたらRPGと一緒で、もうちょっと海外とやり取りすると、それが楽しくなっていく可能性も……。

西谷 絶対にないです(笑)。

―― 様々なご苦労の末、ゲームが完成したわけですが、社員の皆さんはどんな反応でしたか?

西谷 久しぶりにオリジナルIPができてよかった!ってすごく喜んでましたね。それを見て、大変だったけどやっぱりやってよかったんだなぁと思いました。

石黒 『ストII』を作った西谷さんに、ぜひ聞きたいと思っていたことがあって。対戦格闘ゲームって、続編が出るたびに使用できるキャラがどんどん増えていく傾向にありますよね。あれってどう感じてますか?

西谷 ゲーム性ってことだけを考えたら6キャラもいれば十分かな、とも思います。もしかしたら4キャラでもいける……かもしれませんね。

―― あとは、その亜流というかバリエーションという感じでしょうか?

西谷 そうですね、そんな感じです。でもセールスのことを考えると、そこは絶対に無視できない部分だとも思います。8,000円のゲームを買って「え、15キャラしか入ってないの?」となりますよね、今は。「50キャラ? それならいいかな」とか。そういう部分をユーザーは結構見てるんですね。ですから、私がまた対戦格闘を作ることになったとしても、6キャラで十分です!とはならないと思います。

―― 今後も、西谷さんはこの手の対戦格闘ゲームをお作りになりたいと思ってますか?

西谷 うーーーーーん。一応、その気持ちはあります。長く生きていると、少しずつネタがたまっていくんですよね。で、作るとそれが消える。

―― 『ファイティングEXレイヤー』もそういった感じでしたか?

西谷 そうですね。対戦格闘について、何だかモヤモヤしたものがあって、それが日ごとに大きくなっていって。ちょうど時期もよかったし、たまたまプロジェクトが形になった、というような感じかな。なので、今すぐに新しい対戦格闘はないかな、と思います。

―― まだモヤモヤがたまってない、と。

西谷 そうですね。逆に今は……。

今、作りたいゲームは……

―― ……今は?

西谷 『ファイナルファイト』タイプのゲームが作りたいですね。

―― おおっ、西谷さんの新作ベルトスクロールアクション!

大堀 それ、めちゃくちゃ遊びたいんですけど。

西谷 自分の中で、ああしたほうがいいんじゃないかとか、そういうのがたまってきてるんですよ。

―― 西谷さんが『エイリアンVSプレデター』に携わっていたと伺ったのもあって、もう期待が膨れ上がってます!

西谷 あははは(笑)。『エイリアンVSプレデター』は楽しいゲームにできましたね。

『エイリアンVS.プレデター 』 のチラシ(石黒憲一氏提供)

―― 『エイリアンVSプレデター』といえば、先日イギリスのカプコンUKが発売した「CAPCOM HOME ARCADE」ってありますよね。「CAPCOM」のロゴがそのままコンパネになったプラグ&プレイ式のハードで……。

西谷 ああ、わかりますわかります! じつは私、我慢できなくてAmazonで倍の値段がつけられているのを注文してしまったんですよ……。

―― さすがだ!

西谷 そういえば昨日、Amazonからメールが来てたので、そろそろ発送してくれるのかもしれませんね。

―― うらやましい……。

大堀 あのハードには『エイリアンVSプレデター』だけじゃなく、他にも『パワードギア』や『キャプテンコマンドー』、そして『ファイナルファイト』というようにベルトスクロールアクションが山ほど収録されていますよね。そうなると、西谷さんのベルトスクロール作りたい衝動がさらにどんどん増幅される可能性も……。

西谷 あるかもしれませんね(笑)。

―― スコア稼ぎの熱いゲームになるといいなぁと個人的には思っています。

西谷 ハイスコア狙いというと、最近はシューティングや音ゲーばっかりで、アクションゲームでという話はあんまり聞かないですもんね。

―― そういえば、ハイスコアラーでもあった西谷さんが『ストII』というハイスコア狙いには適さない対戦格闘を作ったというのは、なかなか興味深いと思います。

西谷 じつは、自分の中にもそういった葛藤のようなものはあったんです。スコアを競わないビデオゲームということで。でも、やっぱり私は古くからのゲーマーなんでしょうね。だから不要かなとは思いつつも、『ストII』にスコアを入れたんです。まあ、私のちょっとしたこだわりのようなものだと思ってもらえれば。

―― そんな背景があったんですね。

西谷 当時は、もうハイスコア狙いというのは、時代遅れ……とまではいかないものの、一時ほど熱がなくなってきていた。でもハイスコアを狙ってゲームをするおもしろさって否定したくないんです。私自身がそうやって他のプレイヤーと腕を競ってゲームを楽しんできたのもありますし。それに、今でもスコアというものを基準にしてゲームを楽しんでいる人は少なからずいるはずだ、と。そういう人たちを切り捨てるようなことはしたくなかったんですね。

大堀 ぼくは、昔、某所で『ストII』のビデオを作る仕事をしたことがありまして。その当時、すごく悩んだんですよ。ハイスコアなのか、コンボ数なのか……。

西谷 あははは(笑)、何かわかりますね!

大堀 悩んだ末にハイスコアというものをメインに据えてビデオを作ったら、苦情のハガキがバンバン送られてきて(笑)。

西谷 苦情のハガキなんて来たんですか!?

大堀 来ましたよ~(笑)。「何でコンボにしないんだよ!」って。「俺らは、そんなの見たいんじゃない!」とかも送られてきたなぁ。

―― 話が、なぜか『ストII』に戻ってきてしまいましたが……。

『ストリートファイターⅡ´』と『ターボ』のインストラクションカード。キャラの顔イラストが味わい深い(石黒憲一氏提供)

石黒 ああ、もうひとつ聞いておきたかったことがあって。ダブルKOって、なぜ10回までなんですか?

西谷 私の個人的な感覚なんですけど、ゲームを強制的に終わられてしまうのって何だか納得がいかないんですね。

―― エンディングについても、最初は否定的だったというお話でしたよね。

西谷 そうですね。なので、相打ち、つまりダブルKOの回数は別に無限でもいいんじゃないかと思ってたんです。でも、さすがにそればかり狙われたらまずいかもしれない、ということで、じゃあ10回ぐらいにしよう、と。

―― わりと回数自体は適当に決めたんですね。

西谷 そうですね。でも、そうしたら発売後に営業から死ぬほど怒られて(笑)。「お前、そんな設定入れるな!」と(笑)。それで『ストII’』ではやめました。一回だけは認める形にしましたけど。

――さて、長い長いインタビューも、そろそろこのあたりで〆させていただきたいのですが……。

大堀 長かったね(笑)。

―― 最後にお聞きしたいのは、ゲームデザイナーを目指す人たちへのアドバイスと言いますか……。いくつかのゲーム会社さんで聞くのは、最近のゲーム開発志望の若い人は、以前ほどゲームで遊ばなくなった、ということなんです。

西谷 なるほど。

―― 確かに世の中にはゲーム以外にも楽しいことが溢れていて、時間を奪い合っている状態にあるとも言えるかもしれません。でも、ゲームを遊ばずに、ゲームを知らずにゲームを作ることができるのか? ゲームを死ぬほど遊んできた末にゲームデザイナーに転身した西谷さんは、どのようにお考えでしょうか?

西谷 ……うーん、むずかしいですね。

―― では、質問をちょっと変えますが、西谷さんはなぜゲームクリエイターに転身してすぐにご活躍できたのか……ご自身では、どのように分析していますか?

西谷 うーん。たぶん……ハイスコアを狙ったり、より長く遊ぼうとしたり……私の場合、そういう遊び方の工夫をしてきたことが関係しているのかもしれませんね。

石黒 誰よりも早くハイスコアを出そうとする人は、誰よりも先にゲームの仕組みを理解している必要がある、ということでしょうか?

西谷 そうですね。今、振り返ってみると、簡単な企画書みたいなものを頭に思い描いて遊んでいたように感じます。ゲームのフローのようなものを、ですね。このボスは、こう動くとか。プレイヤーがこうしてきたら、こう返してくるとか。そういうのをきちんと理解していないと点数を稼ぐにしても効率が悪くなっちゃうんですね。

―― なるほど……。

西谷 あとは……ゲームをずっと遊んできて学んだのは「相場感」とでもいえばいいんでしょうか。

―― 相場感?

西谷 たとえばスコア。単純に100点とか10万点とか、それぞれがどういった「重み」を持っているのか。適当に配点するだけじゃ、ゲームはおもしろくなるどころか、逆につまらなくなってしまうこともある。たかがスコアですけど、されどスコアなんですね。そういったことは、ゲームをちゃんと遊んできた人じゃないと、なかなか理解できない。そんな細々としたことを積み重ねていった結果、今の私がある……そんな感じでしょうか。

―― めちゃくちゃ説得力のある重い言葉です! 本日は長い時間どうもありがとうございました!

西谷 亮

1967年東京生まれ。
1986年株式会社カプコン入社。
業務用ビデオゲームソフトの企画職として『ストリートファイターII』『ストリートファイターII’』の開発に携わる。
カプコン在籍時には、『ロストワールド』『ファイナルファイト』『X-MEN』などの企画も担当。
1995年株式会社カプコンを退社。
同年株式会社アリカを設立、代表取締役社長に就任。 代表作は『ストリートファイターEX』シリーズ、『EVER BLUE』シリーズなど。

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