見城こうじが訊く ハイスコアラー、お気に入りの一作を大いに語る 第1回「メタルホーク」後編

  • 記事タイトル
    見城こうじが訊く ハイスコアラー、お気に入りの一作を大いに語る 第1回「メタルホーク」後編
  • 公開日
    2020年07月24日
  • 記事番号
    3181
  • ライター
    見城 こうじ

G.M.C.えるす氏 おしむら氏 ダブルインタビュー

前回は、ボスクラスをはじめとする個性的なキャラクターの挙動や、可動筐体の魅力などについて話をお聞きしました。今回はついに最終回!
※インタビュー前編は、こちら。
※インタビュー中編は、こちら。

【聞き手】
見城こうじ

“ゾーン”に入る瞬間

―― 毎回同じパターンのプレイにならないという話ですが、それは開発側が意図して入れた乱数要素などではなく、あくまでアナログ操作ゆえに結果的に起きているということなんですよね?

えるす はい、たぶんこのゲームに乱数要素はないと思うんです。

―― 基本的には固定のデータで成り立っていて、プレイにセオリーはあるけど、どうしてもアドリブが入るわけですね。

えるす そうです、そうです。アドリブです。

―― ステージをどの順番でプレイするかでもゲーム内容が変わるわけですけど、それも乱数ということではなく、自分で選んでいるわけですものね。

えるす だから、レースゲームですよ。あとは当時のゲームでいうと『マーブルマッドネス』(1984年/アタリ)、『サンダーセプター』(1986年/ナムコ)にも近い。ただ、行動の内容がすごく複雑というのが特徴ですね。

―― どれもアナログ操作のゲームで、タイムの要素が重要ということですね。ただ、他のゲームは基本的に自由になる移動軸が平面のみだけど、これは三次元に動ける分、複雑であると。

えるす そういうことですね。

『メタルホーク』フライヤー(裏面)

―― またすごく基本的な質問です。操縦桿を横方向に入力すると旋回になるわけですが、斜め方向に入れると角度によって細かく旋回半径は変わるんですか?

えるす 変わります。それをちゃんと理解するまでに半年……は言いすぎかもしれないけど、それに近いぐらいかかりました。
当時のいろいろなゲームに慣れているプレイヤーの感覚からすると、右に行きたいと思ったら右にスティックを倒すじゃないですか。でも、実際は右斜め後ろに倒した方が早いんですよ。これがわかるまで時間がかかりましたね。

おしむら 本当に思いどおり乗りこなしたって言えるまでに、かなり時間のかかるゲームかもしれないですね。

―― おしむらさんはそう思えるまでにどれぐらいかかりました?

おしむら 自分はブランクがあって、最初は1988~89年にやり込んでいたんですけど、そのときは結局ものにならなかった気がするんですよね。
で、しばらく間が空いてから、当時新宿にあったゲームセンターの「ミカド」に行ったら設置されてて「おお、また遊べる!」ってプレイ再開して……それなりにわかってきたのは、本当にここ最近かもしれないですね。

えるす 個人差はあると思うんですけど、スコアラーの中で上位の人にとっては、全面クリアが始まりなんですよ。ぼくはいまだに『メタルホーク』は乗りこなしてないって認識なんですよ。

―― なるほど。

えるす じつは『メタルホーク』ファンが集う「メタルホーク友の会」というのがあるんですけど、そこで何年か振りでおしむら氏と一緒に高田馬場の「ミカド」に一週間ぐらい通ってプレイしたんです。それこそ毎日2~3千円ずつ使って。それで最後の2日間ぐらいでやっと“憑依”が始まったんですよ。

おしむら ああ、確かに。

―― “憑依”というと?

えるす 何ていうのだろう、「この弾はあの地上物に当たる(のがわかる)から、もう向きを先に変えていい」ってなった状態というか。

おしむら 個人的に思っているのが、オリンピックのスポーツと一緒で“ゾーン”があるんですよ。

―― “ゾーン”というのは、集中しているときにだけ体験できる特別な精神状態のことですね。

おしむら プレイしているとゾーンに入る瞬間があって、そこに入るとおもしろいように地上物に弾が当たるし、本当に「俺は『メタルホーク』を乗りこなしてる!」って感覚になる瞬間があるんです。ただ、それは10ゲームに1回あればいい方。

えるす あのゲームの複雑な処理体系に自分が接続された感覚になるんですよ。

おしむら そうそうそう! 同化しちゃう瞬間があるんですよ。

えるす ものすごくデリケートな操作で、この角度でこの操作をやるみたいなのを頭で考えなくても、目から入った情報で体が反射的に動くみたいな。通学路を体が無意識に覚えているみたいな……。それがおもしろいように、思ったタイミングで体が動くときがあるんですね。

―― ああ……それは理解できる話ですね。お二人が仰っていることと同じレベルかはわかりませんが、アドリブが求められるスピーディなゲームだと起こる現象だと思います。たとえば最近の対戦系のアクションゲームを遊んでいても、そういう瞬間ってある気がしますし、もう少しシンプルなゲームでいうと、『テトリス』(アーケード版:1988年/セガ)を延々プレイしていると、あるとき何も考えずにプレイするようになって、トリップしたような感覚が続くようになりますよね。
アニメの「ガンダム」でいう「ニュータイプになったような感覚」的なことは昔からゲームの世界でも言われていた気がします。

えるす その『テトリス』のもっとスペシャル複雑なやつだと思います。先ほども話したとおり、とくに地上物に弾を当てるというのがものすごくデリケートなゲームなんです。基本的に当たらないんですよ。
他のゲームの例でいうと、『ゼビウス』のブラスターってヒットの範囲がデカいじゃないですか。うまく狙うと2つとか4つの地上物をまとめて壊せますよね。でも『メタルホーク』の弾は本当に一か所にしか当たらないんですよ。当たり判定が本当に小さい。

おしむら あと、攻略上、常に爆撃が当たるか当たらないかギリギリの高さを飛んでいるから、それで弾が届かなくて失敗することもよくありますね。

『メタルホーク』をプレイし続けていると、プロスポーツ選手のごとく“ゾーン”に入る瞬間があるという(画像提供:おしむら氏)

マニアックすぎる……だがそこがいい!

―― このゲームって上昇/下降をするたびに地表のBG(背景)と自ヘリのスプライトの見た目のサイズ比が変わるわけですけど、その際、爆撃座標はどのようなルールで処理されているんですか?

えるす 地上攻撃の弾を発射した時点では、着弾点が決まってないんです。で、スロットルを上下すると、ある程度ですが、着弾点が近くや遠くになるよう制御できるんです。より遠くまで飛ばしたいときは上昇して、近くに落としたいときは下降するんです。

―― 自ヘリや爆撃弾の見た目のサイズや軌道は常に固定で、背景のスケール感だけが変化するから、結果的に当たる位置が変わるということですね。一見3Dっぽいけど2Dで処理しているがゆえに起きるトリックですね。

えるす たぶん、そういうことだと思うんです。3D的にマジメに弾を飛ばしてないってことですよね。もちろん、デフォルメされた方がおもしろいから、おもしろくなるよう作ったら、ああなったんだと思いますよ。

おしむら でも、遊んでいて全然理不尽さは感じないし、すごい絶妙なゲームバランスだと思いますね。

えるす 左手のスロットルで着弾点の調整を必死に行ないながら、同時に右手の操縦桿で旋回しながら次のターゲットを見てるんですよ。
このとき、地上物への着弾が外れて、かつ既に自ヘリの向きを変えてしまっていると、もうすべてが台無しなので、そこにすごく神経を使うんです。

おしむら すみません、ぼくはまだその域まで行ってないです(笑)。

―― ちなみに『メタルホーク』をこんなにガチで遊んでいたプレイヤーって当時何人ぐらいいたんでしょうね?

えるす いや、わからないですけど(笑)。あまり多くはないかもしれないですね。

おしむら でも「ベーマガ」や「ゲーメスト」でハイスコア集計されていたから、けっこういたんじゃないかなあ。

えるす たぶん、設置されていたのはナムコ直営店の一部と、その他の店に少しという感じだったと思うんですね。「モンキーハウス本館」は、ぼくがメチャクチャプレイしてたから流行っていた方だと思うんですけど、「モンキーハウス本館」全体でも十人ぐらいかな。ハマってる人が少ない店だと2~3人とかそんな感じでは。

おしむら 店によっては1プレイ200円だったでしょうしね。

当時の『メタルホーク』のハイスコアが掲載されている「マイコンBASICマガジン誌」(1989年12月号)。G.M.C.えるす氏の名前が確認できる

―― お二方がこれほど熱く語る『メタルホーク』ですが、残念ながら大ヒットとまでは行かなかったわけですよね。やはり、ここまでにお聞きしてきたような操作の難しさや、自由度の高さがネックになった感じでしょうか。

えるす 全部がマニアックですよね。

―― 『メタルホーク』って、疑似ではあるけれど、3D空間を自由に動き回れる会心の一作だった気がするんです。でも、この後、アーケードでこういうゲームってあまり出てこなかったですよね。
もちろん、えるす氏と私はアーケード畑の開発者出身ですし、そうなっていった経緯はよくわかった上で、あえてこういう話をしているのですけれど。

えるす まったく仰るとおりなんですけど、でも、あれがいいんですよ。一本道RPGに対してたとえば『ウルティマオンライン』って、そのワールドにいる感覚があって、どこにでも行けるし、いつ何をやってもいい。『メタルホーク』にはその感覚があるんです。

―― 魅力ととっつきにくさが、同じところにあるゲームだったということですね。

えるす 逆にいうと、「難しくないところがない」ですよね、このゲーム。

おしむら まず操縦桿の使い方がわからないと思うんですよね。あれで避ける感覚をつかむのが最初の壁なのかなあ。

えるす まずまっすぐ飛べない。初めてプレイしたとき、どうなるかというと、一番下まで降りちゃって、地表が近すぎて画面がどうなってるのかわからなくなって、空中物に突っ込まれて死ぬわけですよ。でも、ぼくはナムコファンだったから、きっとおもしろいはずと信じて遊び続けたら、おもしろかったという。

おしむら ぼくもナムコブランドというのと、あとは大型筐体ものだったということと、細江慎治さんの曲だったからという、この3つの理由で遊び始めました。

えるす 連射装置もついてないから、かなりがんばって連射する必要があるし、狙った場所にうまく飛ばないし、避けようと思っても避けられないし、できるわけない要素の塊(苦笑)。

おしむら 確かに。

えるす 竹馬乗りながら、サッカーやりながら、サーカスやるみたいな、そんなゲームなんですよね。

サウンドも素晴らしい!

―― サウンドについても、その想いをお聞かせいただけますでしょうか。

おしむら 自分は今、「O.T.K.」というゲームのコピーバンドをやってるんですけど、当時からゲームの曲の打ち込みもすごくやってて、中でも細江さんの曲が大好きだったんです。
それで地元に『メタルホーク』が入荷されたとき、1面の頭の「タカタターン!」ってところを聴いた瞬間に「ああ、これは絶対細江さんの曲だ!」ってわかって。ぼくは曲で遊ぶゲームを決めることもあって、そういう理由でも『メタルホーク』をやろうって思ったんです。

えるす 音楽最高ですよ。今、おしむら氏が口ずさんだ「タカタターン!」を聞いただけで鳥肌が立ちますから(笑)。

おしむら もっというと、最初のドラムのフィルインで、もうゾクッとしちゃいますもの。

えるす あれいいよねえ。

おしむら 細江さんに「あのドラムソロから入るの、どういうことですか!?」ってお聞きしたいですよ。

―― 使われている基板はシステムIIベースですよね。回転面が2面あったりして、厳密には同じものではないですが。

おしむら システムIIが最高なんですよ。FM音源がYM2151で、PCMがC140で24chでしたっけ? とにかくシステムIIはPCMがいいんです。あれで胸キュンですよ。

えるす あの音源の響き方、1面頭の「ぺララパ~」の「パ~」のところの響き……あれがよくて。

おしむら ビブラートのところね。

えるす ステージごとにおそらくテーマがあって、「ここは忍び寄るんだ」とか「ここは急襲するんだ」みたいなことを想起させるサウンドになってるんですよ。

おしむら サウンドのご担当は野口さんという方と細江さんのお二人なんですが、細江さんが作られた「タカタターン」の曲と、あと、マップでいうとど真ん中のタンクバスターのステージ、あの二つが好きで。

えるす 全部いいよね。ダメなところがないんですよ。

おしむら 野口さんの曲もいいですし。

えるす 『メタルホーク』ってロマンなんですよ。すごいロマンティックなんですよ、いろんな意味で。

おしむら ロマンティックの塊ですよね。

えるす 『メタルホーク』ってモビルスーツが出てくるわけでもない、地味な世界観なんですよ。でも、操縦桿を握って敵を倒しに行く男のロマンみたいなものが詰まっているゲームで、単身敵地に乗り込んで生き延びながら敵を倒していく哀愁みたいなものが曲からも出ているんですよね。

おしむら うんうん。

えるす 「ここに踏み込んではいけない」「こいつを倒さねばならない」みたいな感じのBGMになってて。

おしむら 野口さんの曲は特にそうだよね。

えるす 空中戦艦の曲がすごくいいんですよ。

おしむら 野口さんの曲ね。BGM3。

えるす ゲームって体験のメディアであるにもかかわらず、「暇な」ゲームが多いんですよ。ムービーがスキップできないとか、ステージクリアの演出時間が長いとか……。でも、『メタルホーク』って待たされる時間が本当に少ないし、いったんステージが始まってから、終わって操作ができなくなる瞬間までの密度の濃いこと。そして、それをBGMがものすごく盛り上げてくれるんです。本当に「ここは不要」ってところがないゲームなんですよ。

おしむら ホントに奇跡のゲームですよ。

えるす 全ゲーマーに勧めたいんですよ。何でやらないのと。

おしむら 全面クリアできるようになってからの点稼ぎがおもしろいよーって。

―― とはいえ、30年前ならともかく、近隣に遊べる環境のある人はもう本当に少ないですからね。いまだにリアルタイムで楽しまれているというのは本当にすごいです。

『メタルホーク』の音楽は「細江慎治 WORKS VOL.2~オーダイン~」に収録されています。くわしくは、こちらを

今なお多くの人に遊んでほしいゲーム『メタルホーク』

―― さて、長く熱いインタビューになりましたが、最後にまとめの一言をお願いできますでしょうか。

えるす 自分はですね、ロマンとカタルシスを一生味わえるゲーム、という締めでお願いします。その具体的な説明はここまでに散々しました(笑)。

おしむら もちろん、好きなゲームではあるんですけど、何だろう……自分にとってはゲームを超えている感じはありますね。たぶん、生涯で一番お金を使ってるゲームだと思いますし。
で、本来なら今、都内で唯一『メタルホーク』が遊べるのは「ミカド」さんだったんですけど、こういう状況の中で休業されているじゃないですか(※2020年4月14日現在)。なので、やりたくてもできないのですが、復活の暁には「メタルホーク友の会」として、またやりに行きましょうよ、えるすパイセン(先輩)。

えるす ねえ。

おしむら 本当にどこのお店でも、『メタルホーク』を見かけることがあったら、ぜひともみなさんにもやっていただきたいですね。

―― 本日はありがとうございました。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

神江豊(G.M.C.えるす)氏
幼稚園児のころから毎日アーケードゲームをデパート屋上やボーリング場で遊び倒し、学生時代は福岡のゲームセンター「モンキーハウス」を根城にG.M.C(ゲームメイトクラブ)というサークルを運営。各地のゲーセンゲーマーと電話で連絡を取りつつサークル会報を編集・発行し交流を広げた。
株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に就職後、ビデオゲーム企画開発を手掛けつつ、日吉のゲームセンター常連となる。現在は独立し企画会社を経営しつつ、学生時代のゲームセンターとコミュニティを懐かしんでいる。

おしむら氏
学生時代を岡山~山口で過ごし、ゲームとゲームミュージックにハマる人生を過ごす。株式会社タイトー勤務後、現在はフリーに。ゲームミュージック&テクノコピーバンド「O.T.K.」のKey担当。今年結成25年目を迎える。

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