見城こうじが訊く ハイスコアラー、お気に入りの一作を大いに語る 第四回「グラディウスII」後編
目次
まんサマ氏、花岡氏、TZW氏 トリプルインタビュー
一本のゲームに絞って、当時遊び込んだ、もしくは今なおプレイし続けているプレイヤーの話をお訊きすることで、そのゲームを深く掘り下げるとともに、昔のゲームセンター事情も振り返っていく企画、第四回は『グラディウスII』(1988年/コナミ)です。
前回は4種類の装備の難易度の違いや、個々の武器の特徴などについてお訊きしました。最終回である今回は、2周目以降の怒涛の撃ち返し弾への対処、裸の状態からの復活パターン、そして『グラディウスII』の現在まで、徹底的に語っていただきます!
前編は、こちらから。
中編は、こちらから。
【聞き手】
見城こうじ
3周クリアできれば『グラディウスII』の魅力がわかる?
―― このゲームは、2周目以降、何周目まで難易度が上がり続けるのでしょうか?
TZW 厳密にはわからないですが、一般的には7周目といわれてます。それでアーケードアーカイブス版でも「7周目キャラバン」になってます。
―― 弾が猛烈に増えていくのは、はたから見ていてもわかるのですが、細かくいうとどう変化していくのですか?
TZW まず、正直いうと、5周目ぐらいからもう差がわからないです。
まんサマ ごめん、俺は3周目からわからない(笑)。
TZW 撃ち返しは2周目から始まって、3周目から7周目は撃ち返しの弾が少しずつ増えていくだけです。3周目から1機あたりの撃ち返しが数珠つなぎになっていきます。
花岡 その際、敵の2機につき1機が撃ち返してくるんです。そのルールはずっと変わりません。
まんサマ あと、このゲームの特徴として、倒してからちょっと遅れたタイミングで時間差で撃ち返してくるというのがあるんです。数珠つなぎになってないからわかりにくいんだけど、2周目から発生します。
TZW 敵を倒したときの撃ち返し弾、それから爆発パターンが消えた後にそこから出てくる撃ち返し弾の2種類があるんですよ。『パロディウス』なども露骨にそうなんですが。
―― やはりプレイしてて時間差の撃ち返しは嫌でしたか?
まんサマ 意識してないと、ちょっと癖があるので死にます。
TZW 2周目と3周目のところに、ちょっと難易度の壁がありますよね。まず2周目は撃ち返しが来るのと、4面の地形が変わるじゃないですか。それもあって2周目はやりがいがあるんですけど、3周目に入って撃ち返しが連なってくると、そこで心折れるんです。あの時間差は慣れないうちは大変でした。いつまで出るんだってぐらい弾が出てきて。
まんサマ 撃ち返しのあるゲーム自体は当時からけっこうあって、初代『グラディウス』もそうだったわけです。でも、それが1テンポずれてくるので、避けたつもりが当たっちゃうんですよ。出た当時はやりづらかったな。
―― 1、2、3周目まではかなり難易度が違うけれど、そこを超えると大きな違いはないので、一千万点が見えてくる感じですね。
まんサマ 後はメンタルの問題。どこまで心を強くできるか。
花岡 そうだね(笑)。
まんサマ 3面でときどき出てくる理不尽な氷と、あと最終面のハッチのところでオプション張って弾撃ってるのに、なぜだか敵が抜けてくるときがあったり。そういうのに怯えながら(笑)。
TZW これから『グラディウスII』をやる人がいるとすれば、最初は1周クリアが目標だと思うんですけど、もうちょっとやってくれるなら2-4(2周目4面)を超えて、さらにいうと2周クリア。そして3周クリアすれば『グラディウスII』の魅力というか要素が大体理解できるかと思います。
自分はそこから目標スコアを300万点にしてみよう、一千万点達成した、じゃあ他の装備もやってみようという感じで、懲りずにずっとやってました。
まんサマ 2-4は一千万点への登竜門ですね。敵の配置を知らないと死にますから。
花岡 難しいよね。
TZW 4面って逆火山の陰にハッチがあるんですよ。
まんサマ ただ、④番装備が楽なのは、もうすぐハッチが来るなというときに、ちょっと前に行ってオプションを前に置いて後ろに下がるだけで、2-WAYミサイルで上のハッチがリスクなしに壊せますからね。
それに対して③はあらかじめ右上にオプションをめり込ませるように置いて、そこから軸をずらさないようにキープしないといけないから大変なんですよ。
花岡 そのためにも3速がないと厳しいんです。
まんサマ ハッチを残すとザコがどんどん弾を吐きながら攻撃してきて、そのザコを撃つとさらに撃ち返しが来るし。しかも、そのザコはスコアが0点だという(笑)。
―― 皆さんにお訊きするのは変かもしれませんが、何で2周目以降で4面だけまるまる地形まで違うんでしょうね? 私が知らないだけかもしれませんが、大抵の場合、2周目といえば敵や弾が速くなるとか、弾の数が増えるとかじゃないですか。
花岡 まあ、難易度を上げた、ということだとは思うんですけどね。
―― わざわざ地形まで変えるって、ただ難しくしようってこと以上に、すごく真面目に手間をかけてるように感じるんですよね。2周目以降への向き合いかたが真摯というか。もしかしたら2周目の地形を先に作って、少し難しいと思って後から1周目用の地形を設計したのかもしれませんが。
TZW 今となってはすごくいいアレンジだと思いますね。
―― 弾の数以外の変化でいうと、1面ボスの火の鳥は2周目以降で弾が速くなっていますよね?
一同 あー、そうですね。
まんサマ ただ、2周目で速さは打ち止めですね。それ以上は速くならない。
花岡 他にもガウの弾も速くなってますね。
TZW ガウは他にも上下の動きがちょっと速くなって、途中から3発ずつレーザーを撃ってくるんですけど、その間隔が短くなりますね。
まんサマ ボスの中でもカバードコア辺りはまったく変わってなかったりしますね。強いていうと、コアまでの蓋に撃ち返しがあるぐらいで。
―― すべての敵の弾速をいじってるわけではなく、そうやって個別にいじってるのは興味深いですね。
TZW それでいうと、同じ『グラディウス』シリーズでも、それぞれでどういう難度の上がりかたをするかが違ってておもしろいですね。
―― どう違うのでしょうか?
TZW まず初代は3周目で難度の上昇が打ち止めになります。『グラディウスII』は先ほどもお話したとおり、7周目ぐらいまで上がり続けます。
『グラディウスIII』の場合は、敵の移動速度も上がるんですよ。かなり処理落ちがかかるゲームだからわかりにくいのですが、5周目のダッカーなんてとんでもない速度で移動してます。撃ち返しはそんなに激しくないし、弾の速度もそんなに気にならないのですが、とにかく敵の移動速度が速いんです。作品ごとにそうやって手が加わってるのが楽しいんです。
―― たぶん、毎回同じスタッフというわけではないから、そういう細かいさじ加減が変わるんでしょうね。
TZW ああ、たしかに仰るとおりかもしれませんね。
―― 企画的な印象でいうと、『グラディウス』シリーズのおもしろさって、あらかじめゲーム仕様書ですべてを設計するのが大変な感じもして、プログラマのセンスで詰めていった部分が多い気がするんです。当時の双璧ともいえる『R-TYPE』のほうは、かなりしっかりした仕様書に基づいて制作されたそうですが。
TZW 当時、ゲーメストに『グラディウスII』の開発者インタビューが掲載されたんですけど、驚いたのが開発期間が6カ月と書いてあってすごいなと。今考えても早いですよね。だから、プログラマさんのセンスで一発で決め打ちで作った部分が多々あるのかもしれないですね。
『グラディウスII』の弾は、自機も敵も遅い
―― 撃ち返し弾はどうやってかわせばいいのでしょうか?
まんサマ 撃ち返し弾は、自機を基準にしているけど、自機以外の方向に撃ってくる感じですね。わざとそう作っている。そうじゃないと抜けられない場所がいっぱいあるので。
TZW それに対して『パロディウス』は撃ち返し弾が自機狙いなんですよ。だから、動きが読めるので、慣れちゃえばニュータイプみたいな動きができる(笑)。
まんサマ あと、『グラディウスII』の特徴としては、たぶんシリーズで敵弾の速度が一番遅いんじゃないかな。
TZW そう。固まりでワッと来るけど遅いから、撃たれたのを見て隙間を見て避けられる。
まんサマ 初代も『グラディウスIII』ももっと速いです。
TZW それと、『グラディウスII』は自機のショットも遅い。初代同様、画面上2発なんですけど全然違う。
花岡 遅いよねえ(笑)。
―― 続編で全体に速度が落とされてるというのは興味深いです。どちらかというと、シリーズを追うごとにスピード感が上がっていくゲームのほうが多いものですが。
まんサマ だから、敵を倒すのに「目押し」が必要。まあ、『グラディウス』シリーズはどれも必要ではあるんですけど、『グラディウスII』はとくに異色かもしれませんね。
―― 「目押し」とは、ショットボタンを常に連打するのではなく、タイミングを見て押す必要があるということですね。
TZW 目押しに関しては、他社のゲームですが『ダライアス』がわかりやすいですよね。あんなに横に長いゲームなのに画面上の弾数が限られているから、目押しが必要になる。
―― たしかに『ダライアス』は正確に狙ってボタンを押さないといけないゲームですね。
TZW 『グラディウスII』の弾避けの話にもどりますが、テクニックとしては、自機を動かさず止まって前衛ザコを撃つと、2周目以降では撃ち返しが来るわけですけど、決まった何種類かの角度にきれいに飛んでくるので、必ず隙間ができるんです。だから、止まって撃って、一編隊ごとに敵が全滅してから弾の隙間に避けに行くというのがセオリーになります。
―― なるほど。
TZW ちなみに、初代『グラディウス』は自機を移動させるゲームなので敵弾が散るんです。レーザーはほぼほぼ動いてないといけないんです。
それに対して、『グラディウスII』は止まって撃つゲームなので、敵弾が(あちこちに散らず)固まりやすいんです。レーザーよりリップルのほうが有利なのは、フォーメーションを組んで止まって撃てるから、ということもあるわけです。
まんサマ たしかにあの角度制限がないと、8面の中ボスとか抜けられないよね。
TZW 角度的には16方向ぐらいあると思うんです。(半端な)きわどい角度というのはないですね。『雷電』(1990年/セイブ開発)辺りは角度がわからないぐらい細かく撃ってきますけど。
だから、ある程度敵と座標を合わせて“腹撃ち”をすれば、真横方向に撃たれて自機には当たらないです。
―― 腹撃ちというのは、敵とほんの少し縦座標をずらして撃つということですね。
TZW はい、真横よりちょっと上に行って撃つ感じです。
後はガウで、止まって撃つと一定の角度しか撃ってこないことを利用した安全地帯があったりしますね。
処理落ちを意図的に制御することはあるのか?
―― 『グラディウス』シリーズといえば、処理落ちが前提というイメージがありますが、攻略上、処理落ちを意図的に制御するようなことはあるのでしょうか?
花岡 装備を持ってて弾を撃っていれば、もう処理落ちしますね。
TZW 初代と『グラディウスII』は演出の一部として受け取れる範囲の処理落ちかなと思います。1面の人工太陽のドラゴンがいっぱいいるところで、リップルをバリバリ撃ってるとすごい処理落ちがかかるんですけど、それは「すげえ勢いで撃ち込んでるぜ!」というような演出にも感じますし、多少処理落ちがかかることでやりやすくなるというのもあって、不便さは感じないですね。
まんサマ プレイしていて「お得な処理落ち」とか「不快な処理落ち」というのは、とくに感じないゲームなんですよね。
TZW わかりやすいところでいうと、5面のボスの稼ぎで、ちっちゃいモアイから、さらにちっちゃいイオンリングがワーッと吐かれてくるところがあって、ここはけっこう処理落ちがかかります。
まんサマ あそこはフルに敵を出すと、とんでもなく重くなるんだけど、「これはこういうものだから」って感じでプレイしてましたね(笑)。
TZW その処理落ち具合を自分で調整できるかというと、たぶんできないと思うんです。毎回同じぐらい遅くなりますよね。
―― プレイヤーが意識して処理落ちの度合いを制御するようなことはないのですね。
TZW ただ、これが『グラディウスIII』になると、普通にプレイすると処理落ちがかかり過ぎというのはあって、当初1周1時間かかっていたのを「時間がかかり過ぎだ」と、処理落ちがかからないプレイを心がけて1周40分まで縮めるような努力をされてましたね。
でも、単に攻略という意味では、スローがかかったほうがやりやすいので、わざと処理落ちをかけるというのはありますね。
―― あー、そういうのもあるのですね。
TZW それから、『グラディウスIII』は最終面に回転レーザーというのがあるんですけど、処理落ちをかけ過ぎると周期がずれて抜けられなくなるんですよ。だから、そこは処理落ちをかけないようにして動きを安定させるというのが攻略になります。具体的にどうするかというと、ショットとミサイルを同時に出すと処理落ちがかかるので、交互にどちらか出すようにするんです。
―― それはすごい。バグを起こさないために処理落ちを回避するわけですね。
『グラディウス』シリーズといえば“復活”――上手ではないからこそ復活パターンを覚える
―― 2周目以降の復活技についてお訊かせください。先ほども話に出ましたが、やはり難しいのは4面(火山)と8面(敵本拠地)でしょうか?
まんサマ そうですね。「4面の中盤」と「8面のオープニング」ですね。
TZW 4面の最後の火山も難しいといわれてましたね。4面のボスで死んだときにもどされる地点です。
―― なぜ4面の最後の火山は復活が難しいのでしょうか?
花岡 敵の弾も多いですし、あと火山灰がいっぱい降ってくるんですけど、装備がないとそれを破壊するのに連射力がかなり必要なんです。
まんサマ その連射もくせ者で、『グラディウスII』のショットってそんなに速くないので、とくにその地点はミスショットが許されないんですよ。無駄弾が1発出てる間、次のショットが撃てないわけじゃないですか。
―― 8面のオープニングはどんな風に大変ですか?
まんサマ もう始まった瞬間終わってます(笑)。ザコが4~5匹並んでやってきて、そこで殺されますからね。それを抜けてもハッチがあって。
―― それでも最終的には、どこで死んでも復活できるようになったわけですね。
花岡 一応、できることはできる……という感じです。
まんサマ ぼくは(前述の地点は)できた「ことは」あります(笑)。
―― 開発側はどこまで切り抜けられるものとして作ってたのでしょうね。
まんサマ ぼくは抜けられないように作ってたんじゃないかと思います。もしくは、抜けられるかどうかは考えてなくて、結果として抜けられたんじゃないかと。
―― 当時のループゲームの中には、途中で詰んでしまってそれ以上誰も進めなくなるようなものも少なくなかったですものね。ひたすら難易度を上げて周回させるというのは、この時代を特徴づけるユニークな仕組みだったと思います。
まんサマ 2面とか3面とかカプセルが本当に出ないんですよね。それでも2面はまだ出るんですけど、フル装備に程遠い数しか出なくて。
2面の網があるところで死んじゃうと、その装備で3面を耐え抜かないといけなくて、そこを何とか抜けてオプションを何個かつけて4面で“アチョー”するわけです。高次周の4面逆火山は上にハッチがついてるところが最大の山場で、そこをどうやって抜けるのかという話になるんです。
―― “アチョー”ってどういう意味でしょうか?
まんサマ 「アドリブ」という意味です(笑)。
TZW ハイスコア集計でよくあったのですけど、みんな「〇周目の4面」とか「〇周目の8面」で終わってたんです。8面はそれ自体が難しいんですけど、何で4面かというと、3面の氷で殺されて、何とか(装備が足りない状態で)4面にたどり着いて、逆火山でボッコボコにされるという。逆火山では普通は死なないんですけどね。
まんサマ 3面の中間にアドリブ要素の出てくる箇所があって、そこで理不尽な形が来ることがあるんです。壊せない氷が出てくるんですけど、それらがときどきズレて隙間なく迫ってくるという不幸な事故が……。
TZW そこも慣れてくると何となく回避方法はわかってきて、道中の氷の破片を逃さないとか、そういうことに気をつけると発生率は下がるんですけど。
―― なるほど。4面の難しさはそこまでの流れによるところも大きいと。
TZW 4面は前半で死んだ場合に抜けるのも大変だし、後半がとくに当時は抜けられないといわれてました。
まんサマ ぼくはあのころは4面で死んだら終わりという認識でした。だから死なずに行こうと(笑)。最終面の敵本拠地のところも同じで、たぶん、あそこが一番復活が難しいところですよね。ぼくは当時、死んだら抜けられなかったです。あそこを十何周か死なないで耐えれば一千万点行きます(笑)。
―― 復活パターン自体は、何周目かによって変わるものなのですか?
TZW 2周目でも3周目でもそんなに変わらなくて、3周目である程度きっちりパターンを作ってしまえば高次周でも通用します。全地点で復活は可能です。
まんサマ これも先人たちの研究のおかげで、ありがとうございますって思います(笑)。
TZW スコア狙いでうまい人は一千万点を出してそこでゴールしちゃうんですけど、自分のように中途半端で腕がないと死ぬんで、だから復活を覚えるんですよ。
ちなみに、今となっては、シリーズの中で『グラディウスII』は簡単なほうだといわれてますね。
―― あー、そうなんですね。
TZW 癖が少ないから入門編としてはいいんじゃないかという人も多いです。この言いかたは自分も好きで、「シリーズの中でどれが一番“グラディウス”か?」とか「どれが一番いいか?」っていっちゃうと揉めるんですけど(笑)、「とっつきやすいよ」「癖がないよ」という意味では『グラディウスII』ですよ、という言いかたはありかなと。
まんサマ それはぼくもそう思う。
TZW 1作目の『グラディウス』は間違いなく名作なんですけど、レーザーワインダーとか敵の当たり判定とか、いくつかの箇所でちょっと癖があると思うんです。
そういう意味で、もしこれからシリーズに興味を持って始める人がいれば、『グラディウスII』なら基本も押さえられるし、癖もないし、シリーズってこういうものだよって理解してもらえるんじゃないかと。
パワーアップ状態によって変化する難易度を逆手に取る?
―― 復活のときはどういう順序でパワーアップさせていくのでしょうか?
まんサマ いかんせん、カプセルの数が限られているので……。
花岡 スピードアップしかできないですね。
TZW 大体、難しい場所ってカプセルが少ないんです。
まあ、1速、2速と上げていって、そのまま抜けられたらミサイルを取って、その次はオプションを取るか、もしくはリップルなら裸(オプションなし)でもシーンによっては強いので、そこは人それぞれかと思います。
あと、復活時の特有の操作というのがあるんです。初代『グラディウス』にもあったのですが、たとえば、このラインに合わせて何発目の弾が来たら右にレバーを入れれば当たらない、みたいな。他にも、4面のハッチはここにいれば当たりにくいとか、火山だったらここが当たらないとか、そういう技を使って抜けてましたね。
―― 安全地帯というか、タイミングによってそうした死角が生まれるわけですね。
TZW 本当に『グラディウスII』って復活だけ取り上げても、ずっとIGCCさんで連載できちゃうと思いますよ。かつてライターのじーぶーさんもゲーメストで初代『グラディウス』の「今さら一千万点」という記事を書かれてたぐらいですし(笑)。
―― お訊きしてると、初代『グラディウス』よりも復活が大変そうという印象を持ちました。
TZW 初代『グラディウス』はガチガチのパターンを作って、毎回それをトレースしていれば一応復活できるらしいんですけど、それに対して『グラディウスII』は敵の動きにちょっとランダムが入ってるっぽいなど、方針はあってもそのとおりにできないことが多いんです。
―― 最終的には、皆さんおおよそ同じ復活パターンに収束していくものなのですか?
TZW 同じになるところもあれば、人それぞれのところもあります。みんな独自に研究してて、照らし合わせてみたらお互い違ってることもあって。
それはフル装備のときの最終面のパターンでもいえて、照らし合わせてみたら「あれ? そんなパターンやってるんだ」みたいなこともあって、おもしろいですよ。クラブの右下パターンなんて、全国共通で最終的に一緒になったと思うんですけど、最終面の前半の細い道を抜けた先の攻略は、もう何パターンもあるんです。たとえば「九州パターン」だったか「熊本パターン」だったか、そう呼ばれてたパターンがあるんですけど、ザブを出してから前へ抜けて、下へ行ってぐるっと回ってワインダーで全滅させるんですけど、見ててすごくきれいなんですよ。
まんサマ あれは大道芸だね。すごいよ!
TZW (ゲーメスト誌を広げながら)ちなみに九州の話でいうと、自分もゲーメストの読者コーナーに「グラIIで情報交換しましょう」というお便りが掲載されたことがあったんですけど、そこで葉書のやり取りをした九州の人とはいまだにつながりがあったりします。
―― 当時のハイスコアラーだったりアーケードゲーマーのつながりって長いですよね。この連載は今回で4回目なんですが、皆さんいろんな地方と連絡を取り合っていて、各都道府県にまたがって今も付き合いが続いてたり。
まんサマ 電話したり手紙書いたりしてましたね。
花岡 埼玉から熊本はすごいなあ(笑)。
まんサマ パワーアップの順番の話で、1面に関していうと、リップル派とオプション派にわかれるんですよね。自分は気分次第でどっちもやってましたが。
TZW オプションを取ると、ドラゴンがやたらいっぱい出てくるんです。
―― パワーアップの状態を見て、オート難易度がはたらくのですね?
まんサマ 大幅に変わります。
TZW それに対してリップルを取ると、ドラゴンが硬くなってるのか、とにかく破壊に時間がかかるようになるんです。
まんサマ あれは一定ランク上がると、硬くなってると思うんです。あくまでプレイした感覚なので、違うんじゃないかって意見の人もいるかもしれませんけれど。
―― オプションかリップルかで、難易度が別系統に変化するのは、非常におもしろいですね。オプションは1個でも取ると難易度が変わるのですか?
花岡 1個で変わります。
TZW 安全第一で行くならリップル、点数を稼ぐならオプションになりますね。
まんサマ でも、ランクで耐久値が変わるのって、このドラゴンぐらいじゃないかな。
TZW 後は最終面の中ボスも、リップルだと硬くなってるんじゃないかな。
―― オプションやレーザー系以外の装備でも、難易度は変化するのでしょうか?
TZW この攻略は当時のゲーメストにも載ってたんですけど、最終面の前半がとにかく難しいので、あえてフォースフィールドを取らないで行くやりかたがありましたね。そうすると、撃ち返しが少なくなるんです。
まんサマ ぼくも最終面でよくやってた。細いところを抜けて上下にハッチがあってザブが来るところなんですけど、そこはかなりの修羅場なので、わざとフォースフィールドをつけないことが多かったです。
TZW 実力でやっててたまたまフォースフィールドがはがれてしまって、ピンチなんだけど、おかげで弾があまり来なくてセーフみたいなこともあります。
―― なるほど。ちょっと運で展開が変わるようなところもあっておもしろいですね。
TZW あと、3面もフォースフィールドをつけると氷の動きが速くなるので、なしでやってる人もいましたね。自分はつける派でしたけど。
まんサマ 俺、それ知らなかったわ……。
花岡 でも、やっぱりそこは保険でつけておくでしょ(笑)。
―― どの装備をつけると、とくに大きく難易度が上がるのでしょうか?
花岡 レーザーとフォースフィールドが、一番大きくランクが上がる要素だと思います。
TZW ただ、『パロディウス』などになるとランク調整をする人もいるんですけど、『グラディウスII』だと気にせずフル装備にしたほうがよほど安全だと思います。
『グラディウスII』は一千万点狙いのみにあらず。限定スコアアタックもおもしろい!
―― 『グラディウスII』の現在についてお訊きしたいのですが、今でも何らかの形で記録に挑戦されてる人はいるのですか?
TZW 先ほども話に出た「最低何周で一千万点達成できるかアタック」をやってるかたはいますし、あと高次周の1面が楽しくて「1面だけで何点出せるか」を検証したり。
まんサマ うん、「高次周の1面アタック」は非常におもしろい。
TZW アーケードアーカイブス版『グラディウスII』の話になってしまうのですが、「キャラバンモード」がついていて、これは5分間で何点出せるかというモードなんです。1周目の1面もドラゴン稼ぎで熱いんですけど、7周目キャラバンという、高次周で何点取れるかというモードがついてて、これがとにかく熱いんです。
まんサマ あれは気がついたら平気で1、2時間遊んでるものね。謎の中毒性がある。
TZW それ以外の最近の遊びかたとしては、ガンガン周回を回してというよりは、いかに時間をかけずに一千万点出すかとか、他にも1周で何点出せるか挑戦してる人もいて、1周目もアツいですが、2周目以降で周100万点以上を狙うのもおもしろいです。あとは細かなネタを探す人とか。いろんな遊びかたをしてる人がいるようです。
―― どれもおもしろそうですね。
TZW ちなみに、1周目の1面で最高何点取れるかって、たぶん誰もが一度は挑戦すると思うんですけど、いまだに限界点がわからないんです。
記録として15万1千点というのが知られてるんですけど、ごくまれに出てくるドラゴンがいて、これを倒すとあと3千点行くよねとか、ザコの処理がもう少しうまく行けば末尾が上がるよねっていわれてるんです。
もっと謎なのは2周目以降で、本当に限界点がわからないんです。何で出てくるのかわからない1匹とかいたりして。昔、その攻略をまとめた本まで作りました。
まんサマ 1周目はある程度解析されてて限界のイメージがつくんだけど、2周目以降はわからないよねえ。
TZW 27万点という記録は確認しましたが、もっと行く可能性はあって、自分でも挑戦したいと思ってるんですけど、忙しくてなかなかできなくて。
まんサマ これはぼくの独り言のようなものですが、『グラディウス』シリーズって、コンボボーナスとかチップ回収みたいな点稼ぎ要素がないですよね。それをずっと純粋に貫いてるシリーズって少ないんじゃないでしょうか。
―― 仕組みとして用意されたスペシャルボーナスの類いが一切ないということですね。
まんサマ そうです、そうです。
TZW 他だと、『R-TYPE』や『ダライアス』もそうじゃないですかね。
まんサマ 『ダライアス』も最近だと「バースト」のような要素も入ってきてますよね。
昔、ある雑誌で、点稼ぎ要素のないゲームを否定する文章を読んだことがあるんです。それだと熱い要素がないじゃないかみたいな感じで。『グラディウス』はそういう要素がなくても許されてるというか、市民権を得てるように思うんです。
TZW 実際のところ『グラディウス』シリーズは稼ぎもおもしろかったですよ。
―― 凝った得点システムが組み込まれてるかどうかと、点稼ぎがおもしろいかはまた別の話ではありますよね。
未プレイのかたも是非一度『グラディウスII』を遊んでみてください!
TZW 自分の場合、人とのつながりが一気に広がったのが『グラディウスII』を通じてなんです。当時のゲームセンター仲間との交流もそうですし、その後、トライアミューズメントタワーの店員をしてたときに「グラディウス・コーナー」を設置して盛り上げのお手伝いをしたり。あと、ミカドのイベントで「グラII仮面」というのがいるんですけど、それはぼくがやらせていただきました(笑)。
ハムスターさんでも、アーケードアーカイブス版『グラディウスII』のときにお手伝いさせていただきました。Nintendo Switch版のテストプレイだったり、配信番組でプレイを披露させていただいたり。
それまでも、いくつかのゲームで一千万点とかカウンターストップとかやってはいたんですけど、『グラディウスII』はちゃんと取り組まないとそれができなかったので、本格的にゲームをやり込むきっかけになった作品ですね。
花岡 こんなにおもしろいゲームないんじゃないかって思います。もうこれが青春だってぐらい毎日やり込んでいましたね。『グラディウスII』にはただただ感謝です。
まんサマ 今の若い人で『グラディウスII』をプレイしたことがない人がいたら、すごくおもしろいから是非一度遊んでほしいです。
―― 本日は楽しいお話をありがとうございました。
プロフィール
まんサマ氏
(スコアネーム:AZUKI-CHE)
1970年代後半、まだゲームセンターと呼ばれていない時代からゲームにハマる。主に大宮~浦和(現さいたま市近郊)で活動。
「数年前に旧友ゲーマーと連絡をとったことをきっかけに、再びゲーマーたちのコミュニティに参加するようになりました」
花岡洋行氏
(スコアネーム:HAN)
当時は大宮を拠点に上尾、志木に遠征。ゲーム歴は40年以上で、初めてのゲーム体験は『スペースインベーダー』のアップライトタイプ。好きなゲームはシューティング。とくに『グラディウス』シリーズは初代~V、『沙羅曼蛇』は初代~2、『ライフフォース』と全種類プレイ。後はアクションゲームも少々。
「仕事はゲーム関係ではありませんが、陰ながら業界を応援しています」
TZW氏
(スコアネーム:TZW-ART?)
80年代は主に地元の上尾、大宮を中心にほぼ毎日ゲーセン通い。『グラディウスII』でK.K-ART?師匠に出会い、人のつながりが一気に増え、ゲームへの取り組みかたが変わる。『グラディウスII』は全装備1000万点達成&全地点復活。とくに好きな『グラディウスII』『ストリートファイターII』『パイプドリーム』は思い入れがありすぎて語りつくせないほど。ゲーム開発数社、トライ/トライアミューズメントタワーなどを経てフリーに。
「株式会社ハムスターの『アーケードアーカイブス』シリーズの外部検証など、現在もゲーム方面で活動中です」
『グラディウスII GOFERの野望』は「アーケードアーカイブス」にて絶賛配信中!
ハムスターさんの展開する「アーケードアーカイブス」で『グラディウスII GOFERの野望』が配信されています。
本作には国内版のみならず、海外版の「VULCAN VENTURE」も収録。難易度など、設定を自由に変更してプレイすることも可能です。
インタビュー中でも触れていますが「キャラバンモード」も是非!
PS4版は、こちら。
Nintendo Switch版は、こちら。
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Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.