マイ・ベスト・アーケードゲーム Vol.12 海道賢仁

  • 記事タイトル
    マイ・ベスト・アーケードゲーム Vol.12 海道賢仁
  • 公開日
    2020年02月21日
  • 記事番号
    2683
  • ライター
    IGCCメディア編集部

日本のアーケードゲームの礎を築いた重鎮やゲーム情報通でもあるゲームライターといった業界関係者が、個人的に好きだったアーケードゲームをランキング形式で選ぶ「マイ・ベスト・アーケードゲーム」。
第12回目となる今回は、ゲームデザイナー・ぱぱら快刀こと海道賢仁氏にご登場いただきました。『ナイトストライカー』(1989年/タイトー)などの傑作の源泉がここにあります。ぜひお読みください!

海道賢仁

1969年、石川県出身。幼少のころからビデオゲームで遊ぶだけにとどまらず、ゲーム制作に没頭。高校卒業後にタイトーに入社。『地獄めぐり』でデビューしたのち、『ナイトストライカー』や『チャンピオンレスラー』、『キャメルトライ』、『ソニックブラストマン』(いずれもタイトー)などを開発後に退社。『ドラゴンクエストモンスターパレード』(スクウェア・エニックス)などを手がけて今に至る。株式会社ツェナワークスに所属。

No.10『ロードブラスター』(1985年/データイースト)

これはいわゆる「LDゲーム」と呼ばれたカテゴリのゲームになります。このカテゴリは名作が多いですが、その中でも一つだけ選ぶとすればこのゲーム。
改造車に乗って悪の暴走車たちとスリルあるカーチェイスで戦うという内容ですが、ゲーム画面の大部分は、レーザーディスクに収録されたセルアニメーションを再生することで表現されます。
アイデア満載のカーアクションとシチュエーションの数々。それを見事に描ききった超絶技巧のアニメーション作画が素晴しすぎます。
現代の最新ゲームでもこれだけのカーアクション体験はできないんじゃないでしょうか、と思わせる一品です。

『ロードブラスター』チラシ (石黒憲一氏提供)

No.09『リブルラブル』(1983年/ナムコ)

このゲームは凄い。プレイ画面を一見しただけでは何をやっているのか(囲んでいるのはわかる)、何がゲーム目的なのか、ルールがさっぱりわからない!
操作はレバー2本のみ。しかもなぜかテーブル筐体のモニター上に百円玉が散らばってたりする(一瞬だけ画面上に表示される隠しアイテムの位置を覚えておくためのマーカー代わりです)。
しかしそんなハテナだらけのゲームでも、ルールが理解できるとそのゲームプレイの奥深さに二度驚くことになります。
類似ゲームがほとんどない、まったく突然変異的な作品です。どうやったらこんなゲームが思いつくのか! 凄すぎる!
ただ地面を囲むというだけなのに、推理要素や植物栽培をうまく取り回すマネジメント要素も巧みに織り込まれた、ほんとに驚きのゲームデザインです。

ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

No.08『オペレーションウルフ』(1987年/タイトー)

ゲーム画面を使ったガンシューティング初期のころの超大ヒット作です。売れすぎでもう世界中に設置されていたと聞いています。ぼくもタイトー入社直後でしたのでバグチェックがんばりました。
マシンガンの連射の反動がまず単純に気持よかったですよね。あとオープニングのアトラクトデモで、主人公がナイフやロケット弾など戦いの準備をするシーンのカット割りが渋くてかっこよすぎて痺れました。オレ=カッコイイという刷り込みをプレイヤーに施すための重要なゲーム開発テクニックです。

それ以外でこのゲームでぼくが気に入っていたのは、戦略性です。
ガンシューティングというと反射神経勝負というイメージがありますが、このゲームの場合、反射神経でカバーできるところももちろんあるのですが、弾薬の無駄遣いを防ぐマネジメントが重要になっています。
あとロケット弾(ボム)の使いどころね。どちらも残弾数があり、弾薬切れになると敵の捕虜となりゲームオーバーですので、ステージ中にときどき現れる弾薬マガジンを忘れず撃って取得し、補給をしながら戦わなければなりません。

さらに、ステージは選択方式で、クリアすることでちょっとしたエピソードが流れ、ゲームを補助するボーナスがもらえます。たとえば集落ステージでは最後、村人が傷の手当てをしてくれてダメージ回復したり、弾薬庫ステージなら弾薬追加取得などですね。
なので、どの順でステージを回るか自分のプレイスタイルやゲーム状況を考えて選択する楽しさがありました。この仕組みはすごく好きだったので、『ウォリアーブレード』(1992年/タイトー)を作るときにマネさせてもらいましたよ。
なお海外版ではステージ選択がなく、ステージ進行は一定順に決まっているんですね。まあマシンガンぶっ放すっていうのに難しいこととか考えたくないですからね!

『オペレーションウルフ』チラシ (石黒憲一氏提供)

No.07『テーカンワールドカップ』(1985年/テーカン)

トラックボールで選手を操作するサッカーゲームです。ちょうど日本でもW杯の人気が出てきたころに、同調するように発売された記憶があります。
サッカーゲームとしてギリギリまでルールをそぎ落としたソリッドなゲームデザインの割り切りが素晴しい。ミニマル設計のお手本です。

トラックボールを力任せにぶん回し、早く走る! 強く蹴る! サッカーは力じゃない、パワーだ!! という基本?を見事に体感することができます。汗かくゲームです。
ステージごとにイングランドやイタリア、ブラジル、アルゼンチンなどの強豪国と戦って勝ち上がり、優勝を目指すというゲーム展開ですが、最終面の決勝戦はもちろんドイツです。サッカーファンなら「なるほど、わかってるな……」とニヤリとすることでしょう。

昔のゲームですから、選手名とかは出てきません。キャラクターも全員同じで色違い表現です。
ただし、このゲームのすごいところは、強豪国の国ごとの特徴や、有名選手の存在などを、キャラクターのスプライトの動きだけで(アニメーションではない!)、いわゆる挙動プログラムで表現している点。

無料で配られたゲームのガイド小冊子?では、たとえば「固い守りのイタリア、その鉄壁のGKは『水色のクモ』と呼ばれる」「ブラジルはドリブル速度が速い。黄金の三人衆のパスワークには気をつけろ」などとなっています(記憶はあやふやですが、内容は合っているはず。いろんなサッカーネタが合わさったものもありました)。

ゲーム画面ではまさにそんな感じでキャラクターが動く、個性付けされてる選手たちがいるのですよ! 各国の特徴がちゃんと表現されていて、難易度付けにもちゃんとなっている! すごい作り込みだ! と感動したものであります。
なお決勝戦までプレイするとすごく疲れますので、決勝を見据えたゲーム序盤でのスタミナ配分も重要です。W杯ですねえ!

『テーカンワールドカップ』チラシ とインストラクションカード(石黒憲一氏提供)

No.06『ボーダーブレイク』(2009年/セガ)

わりと最近のゲームタイトルですが、アーケードゲームでの新しいビジネスモデルの展開にも貢献した名作ゲームとして挙げさせていただきました。
SFメカものロボットたちが集団で対戦するTPSです。ゲームルール設計が非常に秀逸で、ぼくのお気に入りのゲームでした。
特に優れていたと感じたのは、両軍が戦う集団対戦用マップのレベルデザインです。
非対称形状のマップで所属陣営ごとに微妙に異なる戦術やムーブを必要とさせながらも、勝敗バランスを破綻させてないなど、練られた構成が見事でした。

『ボーダーブレイク』ポスター (石黒憲一氏提供)

No.05『パックランド』(1984年/ナムコ)

レバー1本のみの操作だった「パックマン」が、ボタン3個のみで操作する横スクロールジャンプアクションゲームに。なんと『スーパーマリオブラザーズ』より早い時期の作品です。
ポップでスタイリッシュなグラフィックとアニメーションもオシャレでしたね。
行きは大変、帰りはスイスイという、ステージを再利用する往復展開はストーリー性も兼ね備えたナイスなゲームデザインでした。
障害物を押すことで隠しアイテムが出るなど、様々な隠しフィーチャーがあちこちに仕掛けられてた点も当時としては革新的でした。

プレイステーション『ナムコ・ミュージアム Vol.4』にて撮影。ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

No.04『スターウォーズ』(1983年/アタリ)

映画「スターウォーズ エピソードIV」をテーマに、ゲーム画面をベクタースキャン方式で表現した、3Dシューティングゲームです。コクピット型の筐体デザインもかっこよかったですね。

戦闘機「X-ウイング」に乗りこみ、宇宙空間でのドッグファイトを経てデススター表面にとりつき、砲台の攻撃を躱して側溝に侵入、最終目的地の排気口に爆弾を投下してデススターを破壊する! という、映画のクライマックスシーンを途切れることなく見事にゲームで再現した、その切り取り方のセンスが秀逸です。

現代のFPSでもおなじみの、コクピットに座ったパイロットの視界をそのまま再現したようなリアル画面構成を当時から採用。
ベクタースキャン方式ですから描画はすべて線画です。しかしそれでも滑らかで迫力あるアニメーションを表現できており、舞台が宇宙空間という利点もあり、しっかり3D空間の中に自分がいる! という臨場感が味わえます。

映画内で見たようなハンドル型スティックを握って動かすと、自機と照準が連動して動きます。
その滑らかなレスポンスはそれだけで気持ちイイのですが、トリガーを絞って敵機をレーザーで撃墜してヒャッホー! などとレッド5さん(端役っぽく出てきたX-ウイング部隊のパイロットさん)気分になる。そんな成り切り体験マシンでした。

『スターウォーズ』チラシ (石黒憲一氏提供)

No.03『マーブルマッドネス』(1984年/アタリ)

トラックボールを転がすと画面内のボールが転がる! というド直球な発想。球だけにな!
ポップでアメリカンなCGアニメーションっぽい雰囲気の立体迷路上で、見事なボールレースにまとめたというアクションゲームの一品です。
各ステージの凝ったギミックもアイデアに溢れています。
当時珍しかったFM音源を利用したゴージャスなBGMも名曲揃いでゲームに華を添えています。
ぼくがゲームデザインで多大な影響を受けたという意味で、特に重要なタイトルです。

北米PS3版『Midway Arcade Origins 』にて撮影。
Ⓒ Warner Bros. Entertainment Inc.

No.02『Mr.Do!』(1982年/ユニバーサル)

見た目は可愛げ。あとちょっとシュール。1画面固定もののアクションゲームとなっております。
地中を掘って進んでいく『ディグダグ』(1982年/ナムコ)系のゲームなのですが、ステージクリアのルールが数多く用意されているのが特徴ですね。
跳ね回るボールを飛ばし敵をすべて倒す、地中に埋まったリンゴの下を掘って落として追撃してきた敵を潰す、配置されてるチェリーアイテムをすべて取る、EXTENDの役物を揃える、などなど。
多彩なフィーチャーを把握・利用し、盤面状況に応じてどのクリア条件を満たすよう立ち回るか、そんな対応力の切り替えが試されるゲームデザインとなっております。
チェリーを連続で取る動作でメロディラインが奏でられ、BGMと連動する演出も楽しかったですね。

『Mr.Do!』チラシ (石黒憲一氏提供)

No.01『フェアリーランドストーリー』(1985年/タイトー)

愛らしいグラフィックで描かれたファンタジー世界が舞台の、1画面固定アクションパズルゲームの傑作です。
このゲームで特徴的なのは、敵キャラの倒し方。魔法をかけて敵をケーキに変身させ、そのまま押してフロアの縁から地面めがけて突き落とす!
ついでに他の敵の頭上に落として巻き込めば皆殺しで高得点! という実にファンシーな基本ルールとなっております。
ときどき出現するマジックアイテムを取得すれば、様々な大規模魔法が発動してチャンスが生まれ、場合によっては一発クリアもあったりなど、スペクタクル展開もばっちりです。
練り込まれた全101ステージのレベルデザインも多彩で秀逸。
敵の移動はキャラごとに特徴あるアルゴリズムを持ち、主人公の動きで意図的に誘導することが可能。そのステージをいかに高得点でクリアできるパターンを組み上げるか? というディープな攻略もアツい! という珠玉の一品といえるゲームです。

『フェアリーランドストーリー』インストラクションカード (石黒憲一氏提供)

おわりに

以上10作品をご紹介いたしました。何か特殊な操作系のゲームが多いですね。ぼくも作ったゲームは特殊操作系が多いですけど、たぶん、好きなんですね。
この10作品は、ぼくが特に感銘を受けたり影響を受けたりした好きなタイトルを僭越ながら選考させていただきました、この他にも素晴しいアーケードは数多く存在しております。10作品に絞るのは大変難航する作業でした。ふう。好きなゲームの話はほんと語り尽くせないですね。
それでは、最後までお読みくださったみなさん、ありがとうございました。
ゲームってホントにいいものですね。さよならさよなら!

惜しくも選外にせざるを得なかった10作品は以下のとおりです。

『忍者くん 魔城の冒険』(1984年/UPL)
『ガントレット』(1985年/アタリ)
『ストリートファイターII』(1991年/カプコン)
『ハイスピード』(1985年/ウィリアムス)
『ダライアス』(1986年/タイトー)
『アルカノイド』(1986年/タイトー)
『エレベーターアクション』(1983年/タイトー)
『アウトラン』(1986年/セガ)
『ファンタジーゾーン』(1986年/セガ)
『ソニックブラストマン』(1990年/タイトー)

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