『メルヘンメイズ』レビュー 9つの国の向こうには……
名作ぞろいSYSTEM I(システムワン)の第9弾!
1988年にナムコ(現バンダイナムコアミューズメント)からリリースされた『メルヘンメイズ』は、高難易度のジャンプアクションゲームとして当時話題になった名作である。
同作は、1987年にナムコが開発したアーケードゲーム基板SYSTEM I(システムワン)を採用。
その第1弾は『妖怪道中記』(1987年)で、その後『ドラゴンスピリット』(1987年)や『プロ野球ワールドスタジアム』(1988年)など多くの名作がこの基板より生まれた。
今回紹介する『メルヘンメイズ』はその第9弾にあたる。
世界観はルイス・キャロルの「不思議な国のアリス」と「鏡の国のアリス」をモチーフとしていて、まるで絵本の中に入り込んでしまったような感覚になる。そんな中、プレイヤーは主人公のアリスになりきって不思議な国(ワールド)にチャレンジする。
1P専用(交互プレイ)で、操作はレバー1本とボタン2つとシンプルな設定。
「ジャンプボタン」で浮遊する床や障害物を飛び越えながら進んでいく。攻撃は「しゃぼん玉ボタン」を押すことにより吹き出されるしゃぼん玉で、これを敵に当てて倒したり、床下に落としたりする。他のゲームではなかなか見られない、不思議な国の世界が醸しだす何とも言えないカワイイ攻撃方法である。
また、「しゃぼん玉ボタン」は押しっぱなしにして「巨大しゃぼん玉」を作り、敵をより遠くまで飛ばしたり倒したりすることができる機能もある。
視点はアーケードゲームにはめずらしいクォータービュー(斜め上方向からの視点)。音楽も不思議な国ぴったりな雰囲気のBGMでその世界をより一層引き立てている。
各ワールド、ボスステージを目指してアリスを進ませていく。浮遊する床を踏み外して下に落ちるとミス。もしくは180秒の制限時間がなくなると無敵のキャラ(永久パターン防止キャラ)が襲ってきてミスとなる。
3人設定でエクステンド(1UP)はなし。そのかわりミスしても復活できる「ふうせんアイテム」があり、獲得していると1回だけ床に落ちても這い上がり助けてくれる(「ふうせんアイテム」がないステージもある)。
様々なアイテムは道中で緑色の「?ボックス」を開けると獲得できる。他にもしゃぼん玉が3方向になる「緑玉アイテム」やジャンプ力がアップする「靴アイテム」など、色々なパワーアップアイテムがアリスを助けてくれる。
アイテムの種類 | アイテムの効果 |
赤玉 | ボーナス得点が得られる。獲得する得点はランダム。 |
青玉 | 一定時間、最大サイズのじゃぼん玉攻撃ができる。 |
黄玉 | 一定時間、敵の動きが止まる。 |
緑玉 | 一定時間、じゃぼん玉が3方向になる。 |
紫玉 | 一定時間、移動速度が上がる。 |
ミニ時計 | 残り時間が30秒間、回復する。 |
風船 | 獲得していると一回だけ落下ミスしても這い上がれる(次の面へは持込めない)。 |
靴 | 一定時間、ジャンプ力がアップする(飛距離も伸びる)。 |
うさぎのぬいぐるみ | 一定時間、無敵状態(落下の場合はミスとなる)。 |
ワールドは全部で9つ。
「おかしの国」からはじまり、「おもちゃの国」→「つみきの国」→「きかいの国」→「そらの国」→「びっくりの国」→「むしの国」→「へいたいの国」と続き、最後に「女王の国」でラスボスの魔女がアリスを待ち受けている。
ナムコのゲームのなかでは比較的短いステージ設定でお手軽に遊べる感がある。しかし難易度がとても高くクリアするのは至難の業である。
特に最後の2ステージ「へいたいの国」と「女王の国」に至っては本当に激ムズで、敵の最終攻撃とばかりに、すさまじい手数でアリスを追い詰め苦しめてくる(この面は「ふうせんアイテム」も出ない)。
運も実力のうち!
ハイスコアを目指すスコアラーたちも例外なく、この高難易度に悩まされた。
各面クリアするとクリアボーナスと残タイムボーナスが入るので、道中は最速でより多くの敵を倒しながらボスまでを攻略しなくてはならない。
最終面の「女王の国」は、クリアすると「残アリス×5万点」が残タイムボーナスの他に加算されるのでノーミスクリアは必須(REST TIME BONUSにプラスされる)。
さらにスコアの決め手となるのが「赤玉アイテム(以下、赤玉)」で、このアイテムは「?ボックス」の中に入っている。
赤玉は獲得すると500点、1,000点、2,000点、4,000点、7,650点の何れかがボーナス得点としてランダムで入る。
全9ワールド中に赤玉の数は「62個」も存在する(「びっくりの国」には16個もある)。獲得点数がランダムだが、スコアを狙う上で重要なボーナス得点アイテムなるのである。
こういったスコアにランダム要素が強いゲームといえば、同じナムコの『ドラゴンスピリット』(1987年)なども有名で、このようなゲームを「運ゲー」と言う人もいる。
しかし7,650点を引くたびに「ここでミスしたら……」という緊張感が凄まじく、単に運が良いだけではハイスコアを出せないゲームに仕上がっているのは、さすがナムコといったところだ。
究極のスコアを目指すには、最高ボーナスの7,650点をいかに多く引いて敵を倒しまくりノーミスでクリアするかが、勝負の決め手となるのである。
ハイスコアを目指した思い出
実は、私自身も『メルヘンメイズ』のハイスコアを目指したプレイヤーの一人であった。
当時、大学へ通っていた頃、講義にも出席せずゲームセンターで『メルヘンメイズ』のスコアアタック三昧。その甲斐(?)もあってか単位と引換に780,510点という高得点を出し「不思議な国大学」を首席で卒業と目論んでいた。
いざスコア申請して「チャレンジハイスコア」(マイコンBASICマガジン 1988年12月号)で全国二位となり首席の夢が砕け散った(トップは791,370点)。そのショックで大学へ行かなくなったのはスコアラー仲間の間では有名な話である(その後は、何度やってもハイスコアは更新は出来ず……)。
ちなみに最終スコアはVMT-ABU氏が叩き出した811,120点(ゲーメスト 1989年1月号掲載)で、この偉大な記録は何十年にも渡り更新されていない。
ゲーセン風景の移り変わりの時代に
当時、ゲームセンターの筐体がテーブルからアップライトに変わる時代であった。
『メルヘンメイズ』のリリース当初は、テーブル筐体だったが、やり込みがピークに達した時期にはアップライト筐体でプレイしていたことをよく覚えている。
たまたま、筐体チェンジの時期にやり込んでいたゲームがあったからこそその変化を記憶していたのであろう。
当然、人によって、この時期にプレイしていたゲームが違うので、思い出は十人十色。
長年に渡りテーブル筐体でプレイしてきたゲームが、突然アップライト筐体になって戸惑ったプレイヤーも私以外にもいたのではないだろうか(特にシューティングプレイヤーは……)。
『メルヘンメイズ』のスコアアタックとともに感じたゲーセン風景の移り変わる様を、今も昨日のことのように思い出される。
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.