「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十二回 逆転の発想 Part2
当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。
第六十二回のテーマは「逆転の発想 Part2」です。
筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著『ビジネスを変える「ゲームニクス」』では、「原則3:はまる演出」の一要素として「原則3-B-⑥:一発逆転のチャンスを設定する」を掲げています。
第三回の「逆転の発想」では、この原則の典型例として、往年の名作『パックマン』(ナムコ/1980年)の攻守が逆転するおもしろさや、『サムライスピリッツ』(SNK/1993年)などで劣勢になったプレイヤーの攻撃力がアップし、逆転の可能性を生み出していることを解説しました。
前回から長らくのブランクが空いてしまいましたが、今回は以前にお伝えし切れなかった、おもしろい「逆転の発想」を導入したタイトルを、筆者の思い付く限りではありますがいろいろとご紹介しましょう。どうぞ最後までご一読ください!
「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっと
した息抜きにぜひご一読を!
瞬時にピンチを脱出できる「全滅アイテム」
まずは、古い時代の「逆転の発想」導入例から見ていきましょう。
主にシューティング系のアクションゲームには、取ると画面内の敵や敵弾が瞬時に全滅する、強力なお助けアイテムを用意することで、一気に劣勢を挽回できるおもしろさを演出したタイトルがたくさんあります。
『1942』(カプコン/1984年)では、特定の位置に出現する敵編隊を全滅させると出現する白色の「Pow」アイテムを取ると、1000点のボーナス得点に加えて敵と敵弾を全滅させる効果が得られます。
『ツインビー』(コナミ/1985年)や『グラディウス』(コナミ/1985年)シリーズでは、敵をしばらく倒し続けていると前者はスター(星)、後者は青色カプセルの全滅アイテムが出現することがあります。
つまり、これらのタイトルでは、敵に囲まれたり、ミスをした直後に自機のパワーアップを失ったりして不利な状況に陥っても、諦めずに敵を倒し続ければ劣勢を挽回するチャンスが得られるわけですね。
第十一回「ボーナスステージ」などでも紹介した『エグゼドエグゼス』や『ソンソン』(カプコン/1984年)は、「Pow」アイテムを取ると敵を全滅させるだけでなく、すべての敵を得点アイテムのフーズ、またはジャンボフーズに変身させる効果があります。
敵を全滅させるだけでなく、得点稼ぎにも利用できることでプレイヤーの爽快感がさらに増す、こちらも実に素晴らしいアイデアです。


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敵や敵弾だけでなく、手強い「ボスキャラクター」をも一撃で倒す効果を持つ全滅アイテム、あるいはキャラクターが登場するタイトルもいくつかあります。ファミコン版の『ザナック』(ポニー/1986年)で、特定の位置に数発撃ち込むと出現するリオ(妖精)がその一例です。
また『ダライアスII』(タイトー)では、特定の場所で出現するトーチカを破壊すると、「ボスキャラクター」にあたる巨大戦艦をも瞬時に破壊する「スペシャル核攻撃」が発動します。その名のとおり、爆発中はビジュアル、サウンドともにひと際派手な演出が用意され、プレイヤーの快感をさらに高めてくれます。
ところで、敵を全滅する効果を持ったアイテムを最初に導入したタイトルは、いったい何だったのでしょうか? たいへん申し訳ないのですが、本稿に執筆にあたり調査したのですが、特定することができませんでした。
もしご存知のかたがいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!


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「対戦プレイ」における「逆転の発想」
第三回では、初期の対戦格闘ゲームで一発逆転の要素を盛り込んだ例として、『龍虎の拳』(SNK/1992年)の超必殺技や、『サムライスピリッツ』の「怒ゲージ」システムを採り上げました。本作以降に登場した対戦格闘ゲームにも、本作とはまた違った形で、さまざまな「逆転の発想」が盛り込まれています。
『鉄拳6』(バンダイナムコゲームス/2007年)以降の『鉄拳』シリーズに導入された、体力が一定値以下になる、すなわちピンチになると自動で攻撃力がアップする「レイジシステム」がその一例です。



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『龍虎の拳』などに登場する超必殺技の発展形とも言える、ちょっと変わった逆転システムを導入していたのが、その後継タイトルのひとつ『ART OF FIGHTING 龍虎の拳外伝』(SNK/1996年)です。
本作でも、元祖『龍虎の拳』同様に超必殺技が使えまずが、超必殺技で相手をKOし、かつ特定の条件を満たすと、それまでに獲得したラウンド数とは無関係に即勝利が確定する、その名も「アルティメットKO」のアイデアが取り入れられています。
つまり本作では、例えば1試合5ラウンド設定であれば、たとえ相手に2ラウンドを先取されても、「アルティメットKO」を狙うことで最後の最後まで大逆転の余地が残るというわけですね。



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第十九回の「対戦プレイ」では、『ファイナルラップ』(ナムコ/1987年)などのレースゲームで、2位以下を走る車が1位の車よりも最高速度がアップする「ラバーバンドシステム」をご紹介しました。
レースゲームのような個人戦ではなく、チーム対戦方式のゲームにおいても、逆転を演出するシステムを取り入れた例もあります。そのひとつが、アーケード用アクションゲームの『ボンバーガール』(コナミ/2018年)です。
本作では、チーム間の「勢力ゲージ」(※チーム全体のHPにあたるゲージのこと。これがゼロになると負けとなる)の差が大きく開くとバトル中に1回だけ、劣勢のチーム側に発動する「ラッシュタイム」が発動します。
「ラッシュタイム」が発動すると、チーム全員のHPが全回復するとともに能力が一時的に大幅にアップし、加えて特殊能力(スキル)を発動するために必要なチャージタイムが短縮されることで逆転のチャンスが生まれます。


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「逆転の発想」を利用した戦略性と爽快感の向上
さらに時代が進むと、RPGやシミュレーション系のゲームにも、一発逆転の効果を持つアイテムやスキルがどんどん登場するようになりました。
アイテムなどに逆転の要素を取り入れることで、プレイヤーはそれを使用するか否かを自由に決められる、つまり戦略のバリエーションが広がる効果ももたらしています。
例えば『ファイナルファンタジーIX』(スクウェア/2000年)ではミネルバビスチェ、ブレイブスーツ、プロミストリングなどを装備してバトルを繰り返すと、アビリティ「瀕死HP回復」を習得することができます。
このアビリティを覚えたキャラクターは、バトル中にピンチになると自動でHPが回復する効果が発動することで、逆転勝利を目指すことができます。同様に『ファイナルファンタジータクティクス』(スクウェア/1997年)でも、特定のジョブのキャラクターを育てると「瀕死HP回復」や「瀕死MP回復」などのピンチ時に有効なアビリティをマスターします。
最新タイトルの『ゼルダ無双 封印戦記』(コーエーテクモゲームス/2025年)にも、ピンチの際に自動で発動する逆転要素があります。
本作では、宝箱やバトルに勝利すると入手できるアイテム「ゾナニウム鋼」を使用することで武器のレベルアップ、および刻印(追加効果)をセットすることができます。
刻印には「必殺技ダメージアップ」「敵を100体撃破ごとにハート回復」などのさまざまな種類があり、プレイヤーは「ゾナニウム鋼」を集めることで、武器を自由にカスタマイズしながら楽しめます。
「ゾナニウム鋼」の中には、「ハート30%以下時ダメージアップ」「ハート30%以下時に必殺技ゲージがたまりやすくなる」など、ピンチを脱出する可能性を高める刻印もありますので、プレイヤーはこれらの逆転要素を使うか否か、その時々で自由に選べます。


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最後に、プレイヤーに逆転のチャンスが到来すると画面だけでなく、UIも含めたゲーム機全体で特別な演出を用意し、プレイヤー楽しませた秀逸な作品をご紹介しましょう。
そのタイトルとは、アーケード用キッズ向けカードゲームの『ドラゴンクエストモンスターバトルロード』(スクウェア・エニックス/2007年)シリーズです。
本作シリーズの対戦モードでは、カード(デッキ)の組み方によって、短期決戦を目指す攻撃型、持久戦重視の補助型などのチームを作れる特徴があります。
デッキを補助型にした場合は、特に攻撃型の相手には真っ向勝負を挑んでもなかなか勝てません。そこで、序盤は相手の攻撃にひたすら耐えて「オーブゲージ」がたまるのを待ち、ゲージが満タンになると使用できる、超強力な技「とどめの一撃」で逆転勝ちを狙うことになります。
加えて本シリーズでは「とどめの一撃」が使用可能になると、筐体の中央部にある「天空の剣」がせり上がり、これを押し込むと技が発動する仕組みになっています。「とどめの一撃」使用時に限り特別な操作を用意することで、相手の猛攻を受け切ったプレイヤーのテンションをさらに高める効果を生み出しています。
本シリーズはすでにサービスを終了しており、残念ながら今では遊ぶことはできません。ですが、筐体に独自のUIを搭載することで、逆転チャンスが到来したときのワクワク感を高めるアイデアは特筆に値すると筆者は思います。

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以上、今回は「逆転の発想Part2」をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?
勝敗を競うゲームにおける逆転システムは、プレイヤーが途中でモチベーションを落とさないための大事な要素であると、筆者は本稿の執筆を通じ改めて実感した次第です。
繰り返しになりますが、「逆転の発想」に関するくわしい解説は「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3-B-⑥:一発逆転のチャンスを設定する」の項で解説していますので、興味のある人は本書をぜひご覧ください。
それでは、また次回!
