餅月あんこのゲーセンに行きたい!

  • 記事タイトル
    餅月あんこのゲーセンに行きたい!
  • 公開日
    2021年04月09日
  • 記事番号
    5063
  • ライター
    餅月あんこ

第24回「坂本慎一さんの作曲の話を聞きたい!(後編)」

IGCCでは「アーケードゲームが輝いていた時代を駆け抜けた男! 坂本慎一氏インタビュー」という記事もすでに掲載させていただいていますが、その、現在はあまた株式会社のプロデューサーであり、サウンドコンポーザーとして多くの名作を残してきている坂本慎一さんに、「アーケードゲームの作曲」というテーマでお話をうかがわせていただきました。
前編、テーカン時代のいろいろなエピソードをガッツリお話していただいた中編に引き続き、いよいよ最後の後編です! お話はNMK時代に突入!

~ NMK時代 ~

坂本慎一さん(以下「坂」):そうそう。テーカン時代はAY-3-8910っていうのを使ってたんですけど、SN76489っていうのも使ってたんです。『SENJYO』はSN76489でできてて、『ラブリーポーカー』はAY-3-8910です。

――― SN76489! AY-3-8910!(とりあえず復唱している)

坂:(笑)で、転職をして、NMKっていう会社に入ったのが1985年。ハードウェアが刷新されて、ここで初めてFM音源と出会ったんですよ。

――― ふんふん。

坂:で、どうやって鳴らすのかサッパリわかんなくて(笑)。今度は音色を自分で作らなくちゃいけないんですよね、ベースっぽい音とか、ピアノっぽい音とか。自分でやらなきゃいけないから、そのために基板で使われているYM2203っていう、FM音源チップと同じ動作原理で動いている民生品を探したんですよ。

――― 2203!

坂:で、民生品であったのが、ヤマハのCX5っていうMSXパソコン。これにSFG-01っていうサウンドモジュールがあって、それをブッ差すとFMが出ますよっていう。で、それを使って、まずそのシステムにプリセットで入っているエレクトリックベースの音色は、どうやったらエレクトリックベースになってんだろう? っていうのを研究し始めたんです。

――― へぇ~!(何でアルファベットとか数字の羅列をスラスラ喋れるんだろう、と思いながら) FMが……出る……!

坂:最初はFM音源が全然わからないので、いろんなパラメーターをいじると、音色エディターなので音色が変わるんですけど、「あ、さっきはベースっぽかったけど、今度はナイロンギターみたいな音になったぞ」みたいな感じで、適当にいじりながら音色を作るみたいなことを始めたんですね。だから作曲をしつつ、音色を作るっていう二足のわらじみたいな感じだったんですよ。

――― ふむふむ。

坂:その前までは、矩形波しか出ないからピコピコした音だけだったんですが、FM音源の出現によって、ちょっとずつだけど本物の楽器の音に似せられるようになったんです。オルガンぽい音や、ギターっぽい音、ピアノっぽい音が出せて、「これはリアリティがある!」って、こぞってみんながリアルな方向にいったんです。『アウトラン』もFM音源を使ってるんですけど、やっぱりフュージョンじゃないですか、『アウトラン』って。

――― フュージョンっていうのはどういう音楽なんですか?

坂:電子楽器も入ってるジャズみたいな感じかな。ときにはクラシックも混ざったりしてまさに「融合」。『アウトラン』はゲームギアにも移植されてるんですけど、ゲームギアはSN76489。つまりFM音源じゃないんですよ。そうするとどうなるかっていうと、同じ音楽なのに、ハードによって違う曲(の雰囲気)になるんです。その美学というか。

――― なるほど~!

坂:『ファンタジーゾーン』(アーケード)もFM音源ですよね。システム16という基板で。この基板を使って僕は『ワンダー・ボーイIII・モンスター・レア』(※音楽・効果音・サウンドドライバを坂本さんが担当)をやってるんですね。で、余談なんですけど、ハドソンさんからもPCエンジンで移植作の『ワンダーボーイIII モンスター・レアー』が出てるんですが、この頃CD-ROM2だったんですよ。つまり、BGMはメディアが変わってチップではなくCDで鳴らしてるんです。

――― じゃあ、録り直したというか……録音したんですか?

坂:こちらは僕がやったんじゃなくて、『ボンバーマン』の作曲家の竹間ジュンさんがアレンジし直したんですよ。

――― そうなんですね~!

坂:その頃ウエストンでは、まだ機材もなくてチップの音を鳴らすことしかできなくて、CDを作る環境はなかったんです。

――― そのPCエンジン移植版のアレンジは、生演奏になったんですか?

坂:これは部分的に生演奏もしてるんじゃないかな、基本はシンセとサンプラーですね。高級なシンセを使用してて、めちゃくちゃ良い音で収録されてました。アレンジも深みがあって素敵でした。

――― へぇ~! 移植のときにハードによってそうやってアレンジが変わるの、おもしろいですね。

~ ウエストン時代 ~

坂:NMK時代はFM音源で作ってたんですけど、環境はヤマハのMSXでした。なのに、その後ウエストンに転職するんですけど、そこは何かね、僕が入ったとき、サウンドの機材がひとつもなかったんですよ(笑)。

――― え~!

坂:それで、しょうがないから、またトイシンセを持ってきて、テーカン時代でやってたみたいな、それを弾いて、譜面を書いて、譜面を見ながらデータを打ち込んで、っていうやりかたに戻って。『モンスターランド』の音楽はそういうふうに作ったんです(笑)。

――― 何と、衝撃!!

坂:サウンドドライバに打ち込んで、鳴らしては確認、を繰り返して作っていく感じです。思ったとおりの曲になってるかな~って、やりかたが戻っちゃったんです(笑)。音色も作らなくて良くなっちゃって、再びSN76489っていう。セガのシステム2っていうアーケード基板だったんですけど、当時セガはシステム16っていう基板も出してて、そっちはFM音源を搭載してたんですよ。あ、この「システム」っていうのはどういうことかっていうと、ROMを差し替えると違うゲームになる、っていう仕組みでして。基板を買わなくても。基板だと10万円とか20万円とかするのを、ROMセットだけだったら半額以下とか安価に交換できるわけです。新しいゲームを入れたいときに、ROMだけ交換で安く済むので、そのほうがゲーセンとしてはありがたいんですね。それがシステム基板っていうやつなんです。システム2はシステム16より安価で、そのぶん普及もしたと思います。でもFM音源は載ってない(笑)。

――― へぇ~、同じセガでもシステム2とシステム16は音源が違うんですね。

坂:システム2とシステム16のリリース時期ってけっこう重なってるんですけど、システム16のほうが性能が上なので、先にシステム2のほうが新作ゲームが出なくなったんですが、『モンスターランド』はシステム2最後のほうにリリースされた作品でした。同じ頃、システム16では『ファンタジーゾーン』とか『忍 SHINOBI』とかがバリバリFM音源を奏でてましたが(笑)。

――― なるほどー、ハード事情で音源も変わってたんですね……!

坂:そうですね~。でも『モンスターランド』は名前が残る作品になったから、良かったと思います。その後『ワンダー・ボーイIII モンスター・レア』をシステム16で作るんですけど、当時はあまり注目されませんでしたね。『モンスターランド』のほうは駄菓子屋さんにも置かれてたんですが、システム2だったからこそだったかもしれないから、結果的にはお客さんの目に触れることが増える絶妙なタイミングだったかもしれない。

――― あ~なるほど、システム2のほうが街に筐体が多く置かれてたんですね。そうかー、ヒットにはタイミングとか運の要素も影響するかもってことですね。

音楽はどういうふうに思いつくの?

――― ハードとか技術面の話をけっこう教えていただきましたが、メロディーラインとか、作曲の……何ていうか、音楽っていうのはどういうふうに思いつくんですか?

坂:どうするんですかね~。いろんな人とこういう会話は繰り返してて……(笑)。

――― あ、よく聞かれます?

坂:いや、僕が聞くこともあるんですよ。気になりますから。「ゲームに音をつけてください」っていう業務じゃないですか。それと「自分の気分で作曲をしよう」みたいな自分のペースでやれる音楽っていうのはだいぶ違うのかな、って思いますね、根本的には。あんこさんもそうだと思うけど、締め切りがある仕事があるでしょ。そうすると自分で絵を描こうっていうのと全然違うじゃないですか。僕はよく言ってたんですけど、「お金をもらわないと曲は書けないです」って(笑)。別に嫌味とかでなくて、すごい真実で、モチベーションにならないんですよ。お金をもらう、イコール「仕事をしなきゃいけない」って気持ちを持っていって、やっと書けるっていう感じで。確実にゲームをとおして聴いて頂ける。つまり発表の場があるってことも大事だったり。

――― なるほど、何か、わからんでもないです。

坂:「時間があるからちょっと自分の気分で曲を書いてみよう」っていうのは、僕はできないんです。

――― あっ、坂本さんは趣味でお休みの日とか、まったくプライベートのときにオリジナルの曲を作ったりするタイプではないんですね。

坂:ゼロです。今までそういうのは1曲もないです。

――― そうなんだ~。

坂:それこそ中学ぐらいのときは、長渕剛とかシンガーソングライターに憧れて一生懸命デモテープを作って友だちと一緒に送ってみたり、っていうのはありましたけど、働き始めてからは、仕事でないと音楽作れないです(笑)。

――― ああ~、坂本さんって私は作曲家としてのイメージが強くて、プログラマーもやられてたんだ、っていうのがビックリしたんですけど。

坂:プログラマーは、ほんとに凄い人をたくさん見てきたので、僕はそんなに向いてないなぁと(笑)。

――― そんなことないと思いますけど、ファンとしてはやっぱり坂本さんには音楽を作ってもらって、聴きたいですよね。今は音楽制作以外の業務をけっこうされてる感じなんでしょうか。

坂: 2000年以降は、音楽はもうメインにやってないんですよ。アーケードがメインでなくなって、コンシューマーでCDで音が鳴らせるようになってからは曲を作ってないんですよ。その頃は自分で音楽を作らないで作曲家に発注してたので。プロデュースですね。

――― プロデュースっていうのは音楽のですか? ゲーム全体の?

坂:両方ですね。こういう音楽がほしい、ってなったらサンプルの曲を紹介して、「もうちょっと暗いほうがいいかな」とかそういう感じで指示をしたりして。

――― 最近すごく作曲の活動をされてる感じがするんですけど。

坂:ココ2年ぐらいですね、作曲の仕事をまたやるようになったのは。ふだんはプロデューサーなので、お金の計算をしたりとか、アライアンスをしたり、開発のスタッフィングをしたり、スケジュールを立てたり(笑)。あと、中でも大事な仕事はクオリティチェックですね。うち(あまた株式会社)の高橋(代表の高橋宏典さん)も言ってましたが、ゲーム業界も会社によって、どこからがプロデューサーの仕事でどこからがディレクターの仕事か、っていう線引きが異なるんですよね。うちはディレクターが現場に深くコミットしているので、「ここの動きはこうしてほしい」とか「こういう順番で作りましょう」っていうような細かい指示はディレクターがやるんです。僕は、人、もの、お金、時間、の心配です。それがほとんどなんですけど、最近サウンドもやらせてもらってて。

――― そんなお忙しい中、音楽を作られてるわけですね。

坂:僕自身にはそんなに数ないので、オファーがあるものはお引き受けして、あとは伯林青(ベレンス、あまた株式会社のサウンドチーム)でやってる感じですね。

――― また新作も色々と。

坂:そうですね(笑)。発表があった『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』は、4月22日発売です(Switch/PS4 ※Steam版は2021年予定)。楽曲はうちの伯林青がやってます。僕は今回は全曲プロデュースはしてますが3曲しか書いてないんですけど。

相棒のペペログゥがとにかく可愛いし、大活躍するっぽい! 『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』より
でもペペログゥは寒さに弱いみたいでこんなことに……え、これを使って……? 『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』より

――― でも3曲! 楽しみ!

坂:『モンスターワールドIV』っていうもとのゲームがあってのリメイクなので、渡邉人さんが作られた楽曲のアレンジです。サウンドにレトロモードを搭載したので聴き比べていただく愉しみかたもあります!

■関連リンク:
『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』が4月22日発売決定。アートブックを同梱した“スペシャルパック”もSwitch限定で発売(ファミ通.com
Switch・PS4『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』ファミ通DXパックとサントラCD付セガストア限定品が予約開始(ファミ通.com

――― なるほど~。

坂:あと、『時計じかけのアクワリオ』(Switch/PS4 2021年予定)なんですけど、そっちは当時の音を使うので基本的に新しい楽曲はないんですよ。でもパッケージのバンドルでサントラをつけるんですが、もとの楽曲に、伯林青のみんながアレンジした楽曲を入れようと。アクワリオ自体はセガのシステム18っていう基板でできてたのでFM音源なんです。パーカッションはPCMで。それをみんなに独自解釈してもらって、今できる、制限のない制作環境で鳴らしたものをバンドルでつける、みたいな。サウンドのリメイク版を同梱するっていう作業をさせてもらってます。

大きなカニの中に、もう間違いなく悪そうな人がいますね……。 『時計じかけのアクワリオ』より
エル・ムーンちゃんが天使みたいな姿になっちゃってるけど大丈夫なのか~!? 『時計じかけのアクワリオ』より

■関連リンク:
『時計じかけのアクワリオ』幻のアーケードゲームは、27年の時を経てなぜ蘇ることができたのか? 西澤龍一氏らキーパーソンたちの証言からその真実に迫る(ファミ通.com

坂:サウンドの仕事、今年もまだまだ入ってます。おかげさまで。だからまた突然「これが出ますよ」って言い出します(笑)。

――― おぉ~、そういえば今までちゃんと言ってなかったけど、私、坂本さんの演奏もだけど作られる音楽、優しくて軽やかで大好きなんですよ~。楽しみにしております!

  
作曲のしかたについて、坂本さんから追記をいただきました!

ゲーム音楽を作る以前は、ギターで適当にコード進行をつくってから歌いながらメロディを後から付けてました(歌モノしか作ってなかった)。

テーカンに勤め始めた頃からゲーム音楽を作るようになり、またウエストンでの『モンスターランド』の環境では作曲環境はなく、トイシンセで作っていたので、やはりメロディーから作ることが多いです。
当時のPSG等では音数も少なくドラムの音にチャンネルを割くのが厳しいのでリズムは入れないことが多かったので。
今は、ドラムなどのパーカッションは最後に打ち込みます。
人によっては最初にリズムを適当に置いて、そこに軽くコードの伴奏をつけてメロディーを最後にという話も良く聞きますが、僕はそれと逆です。

メロディーの着想を得るのは、実際に音を当てるシーンを見ると浮かびやすいですが、それがダメなときは散歩をしたりすると出てきたりしますよ(笑)。
  

とのことでした!
メロディーが浮かぶのが一番謎なんですが、やっぱり世界の七不思議ですね……。世界三大スープですね……(あっ、今回まったく触れる余裕がありませんでしたが、坂本さんはTwitterに時々お料理の写真をアップされてますがすごく美味しそうなのです! お料理も上手!)。

というわけで、『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』の写真を提供してくださったスタジオアートディンクさま、『時計じかけのアクワリオ』の写真を提供してくださったStrictly Limited Gamesさま、原稿のチェックをしてくださった、あまた株式会社 鶴田さま、株式会社ラクシスエンタテインメント 栗原さま、そしてサントラの作業も大詰めでこの時期メチャメチャ大忙しだったにも関わらずインタビューを受けていただいた坂本さんと、最後まで読んでくださったみなさま! どうもありがとうございました!!

© 2020 Strictly Limited Games/United Games/LAT
Original game© SEGA / LAT

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]