ウェアハウス川崎店レトロゲーム急増の裏側で活躍した「レトゲ部」とは?

  • 記事タイトル
    ウェアハウス川崎店レトロゲーム急増の裏側で活躍した「レトゲ部」とは?
  • 公開日
    2019年11月08日
  • 記事番号
    2206
  • ライター
    外山雄一

ウェアハウス川崎店は、2005年のオープン以来「電脳九龍城」として、その独特な外装・内装はもちろん、様々な遊びを提供する大型アミューズメント施設として神奈川県川崎駅近くで営業を続けてきた。しかし2019年11月17日をもって、惜しまれながらその14年の歴史に幕を降ろすこととなった。

当ウェブサイトでは、2018年2月に同店を取材、紹介させていただいたので、店舗の紹介はそちらを参照いただきたい。
川崎にそびえ立つ電脳九龍城「アミューズメントパーク ウェアハウス川崎店」

2018年~2019年にかけて、ウェアハウス川崎店に足を運んだプレイヤーの方はお気づきかもしれないが、この期間にビデオゲームの稼働筐体数が大きく増えている。時を同じくして、「WH川崎レトゲ部」(以下「レトゲ部」)というTwitterアカウントが活動を開始、同店のビデオゲーム稼働状況を呟くようになった。

レトゲ部の登場以前にも、『スペースハリアー』(1985年/セガ)などの大型筐体をはじめとした旧作ビデオゲームは多数稼働しており、多くのゲームファンが足を運んでいた。しかし、ここ最近の筐体の増え方は尋常ではない。一体、レトゲ部とは何者なのか? そして彼らはウェアハウス川崎店にとって、どのような存在なのか?

今回はレトゲ部代表のH氏にお話を伺った。
タイトル画像は、ウェアハウス川崎店3Fの様子。(2019/10/27撮影)

【取材・構成】
外山雄一

発足のきっかけは当ウェブサイト「ゲーム文化保存研究所」!?

元々、趣味でゲーム基板や筐体を収集していたH氏は、某県某所にそれらを保管していた。
2017年前後から収集活動が加速し、さらに所有筐体の数が増えて20台ほどになった。
保管場所は戸建ゆえ、筐体は分解して押し入れに入れていたが、ただ筐体を所有していても、動かさなければ意味はない。

自宅で筐体を稼働させる、いわゆる「自宅ゲーセン」や、倉庫を借りて稼働させ、友人を招いてクローズドで遊ぶ「倉庫ゲーセン」などの形態を考えたこともあり、実際に倉庫は借りる寸前まで検討を進めた。

そんな時にH氏が目にしたのが、前述の当ウェブサイト記事だったという。
そこには、ウェアハウス川崎店で個人持ち込みのゲームが稼働していること、持ち込みたい場合は店舗に問い合わせてほしい旨が記述されていたのだ。
H氏は「その手があったのか!」と驚き、早速店舗に問い合わせ、当時の店長と面談、当初は基板だけで、筐体まで預けることは考えていなかったが、話を進めると筐体を持ち込める可能性も出てきた。

こうしてH氏はこれらの筐体を店舗で稼働させるべく、仲間と共に活動を開始。元々交流があった「三条CUEレトゲ部」(*01)の承諾を得て「WH川崎レトゲ部」を名乗ることとした。 ウェアハウス川崎店は2F~4Fまでがゲームセンター/ダーツなど、5Fがネットカフェとなっているが、レトゲ部は、バックヤードの一画を作業場所として使わせてもらえることになった。

筐体整備中の様子。(写真提供H氏)

「東亜プランのシューティングを全作並べたかった」

レトゲ部の活動にあたって、店舗側からの条件や要望には以下ものがあった。

・店舗の雰囲気は損なわないでほしい。
・1プレイは50円設定。
・話題性がほしい。

 この他にも、レトゲ部発足以前からのローカルルールもあり、それらをすべて踏まえた上で、レトゲ部がウェアハウス川崎店で実現を目指したのは以下の目標だ。

・ゲームプレイに集中できる環境。
・基板入れ替え、メンテナンスがしやすい環境。
・他店舗とは違った独自要素。
・東亜プランのシューティングを全作並べる。
・ゆったりソファに座って、遠くから稼働ゲームを眺められる。

店舗からのオーダーと、自らの目標を両立させるべく、レトゲ部は準備作業を開始した。

まず考えたのが筐体配置の間隔だ。

筐体を隙間なく横に並べて、ペアベンチを使い、2人プレイが可能な配置にすると、どうしても隣のプレイヤーとの距離が近く、プレイに支障が出る。

しかし対面積比では多くのタイトルを稼働させたい……このため、大半の筐体を2in1対応に改造、筐体間の幅を確保しながら、稼働タイトル数を倍近くに増やすことにした。

2in1のハーネスが大量に必要となったが、これらはほとんどを自作した。

汚し加工を施したメタルラックを室内に運び込んだところ。(写真提供H氏)

筐体間のスペースを確保したことで、筐体上にメタルラックの棚を組み、機材が置けるようになった。

このメタルラックは、そのままの銀色では店舗の雰囲気と合わないため、わざと錆びたイメージの汚し加工を施している。

この塗装作業を屋内で行うのは危険なため、屋外で行った。

この棚にはそれぞれ専用のPCを置き、プレイ動画を録画/配信できるようにした。

配信の回線は独自にレトゲ部が契約したモバイルルーターを使用、店舗の回線とは独立させた。

棚は汚し加工をしたのと対照的に、筐体は水洗いを含む洗浄を行った。

筐体水洗いの様子。H氏は筐体収集と共に洗浄も趣味だという。(写真提供H氏)

それぞれの筐体には、ヘッドフォン端子、連射装置、連射速度切り替えスイッチ、スピーカー/ヘッドフォンの音量調節つまみを追加した。

各ゲームにはタイトルに合った連射速度があり、プレイヤーの好みや攻略スタイルによっても違うため、ゲームを入れ替える毎に筐体のセッティングを変更する手間が省けるよう、連射速度調整はプレイヤーに委ねた形だ。

この端子類を付けるにあたっては、筐体のエスカッション(*02)に孔をあける必要があり、最初はかなり悩んだが、プレイヤーの利便性のために決心して改造に踏み切った。

こうした設置作業は閉店後の深夜に行われた。(写真提供H氏)

レトゲ部は、自らの目標とお店側のオーダーを達成させるべく、数か月に渡って作業を続けた。

当初は2Fのビデオゲームコーナーの一部からスタートしたが、2019年6月30日からは3Fの一画を専用スペースとして使えることとなり、休憩用の椅子やソファも店舗側から提供された。

レトゲ部では東亜プランの基板をすべて所有していたわけではなかったため、一部タイトルは友人から借用し、2019年7月にはついに東亜プランのシューティング全タイトル稼働も実現させた。

同時稼働のため、それぞれのタイトルは2in1筐体に1タイトルずつ入れた。

こうして、とうとうレトゲ部が掲げた目標がすべて達成された。

H氏のお話を総合すると「15kHzのブラウン管に映し出されたゲーム映像を見ながら、ソファに座ってニヤニヤしたかった」というのが目的だったようである。

ピーク時の筐体配置図。(画像提供WH川崎レトゲ部)

「バトルガレッガ」からはじまり、スコアラー御用達店舗となる未来も………?

あるとき『バトルガレッガ』(1996年/エイティング 開発:ライジング)のトッププレイヤーであるT³-神威氏と知り合ったH氏は、同作プレイヤーのための環境整備について話し合った。

まず、ほぼ貸し切り状態でやり込むために、神威氏自前の「バトルガレッガ」基板を持ち込んだ。これにより同作は2台同時稼働ができる状態になった。

また、神威氏のプレイスタイルに合わせ、レバー交換や連射装置の調整などを行った。

神威氏は2014年10月に出した自己ベストの記録を更新すべく、2019年9月からウェアハウス川崎店でのスコアアタックを開始。

そして1か月も経たない9月30日、早くも自らが持つ全一スコアを塗り替えることに成功した。

同日の神威氏のTweet が、こちら。
自前のバトルガレッガ基板でプレイする神威氏、左奥は作業中のH氏。

ハイスコア集計店舗でよく見られる店内のハイスコアボード設置に関して、一部プレイヤーから要望が出ていた。

これに関して店舗側の許可は一旦出ていたが、人員不足のため実現には至っていなかった。

以前、当ウェブサイトの別記事「Game in えびせん」で紹介したように、スコアアタック文化を盛り上げ、ハイスコアラーが常連として通うような店舗となる環境、稼働タイトルを準備できれば、その先にウェアハウス川崎店が盛り上がる未来もあったかもしれない。

Game in えびせん、ハイスコアの「Field of Dreams」!

幻となった「ダライアスⅡ」自作筐体稼働計画とは……?

また、レトゲ部の協力者には『ダライアスⅡ』(1989年/タイトー)の2画面版基板の所有者がいた。

なんとかこれを稼働させたいと考えたが、ハーフミラーを使ってふたつのブラウン管を繋げた横長のゲーム画面は、専用筐体なしでは再現が難しい。

秋葉原Heyでの大画面稼働の例もあるが、レトゲ部ではあくまでブラウン管での2画面稼働にこだわり、なんと自作の筐体の準備を進めていた。

これは、コントロールパネル部分は別のゲーム筐体から流用し、純正筐体同様にブラウン管とハーフミラーを配置することで、より大きな画面での2画面プレイを実現する計画だった。

機材の目途は立っており、筐体の外枠製作までは進んでいたのだが、この作業途中に閉店が決定、残念ながら作業が続けられなくなってしまった。

もしこれが実現していれば大きな話題になっただけに非常に残念でならない。

この筐体では、29インチブラウン管を2個使う計画だった。(写真提供H氏)

2019年10月15日、閉店発表

まだ活動は2年目、これから更なるプレイヤー(ハイスコアラー)向けの環境整備や、『ダライアスⅡ』を含む新筐体の投入も検討していた矢先、閉店の報せを受けたレトゲ部は、撤収計画づくりと実行に追われることとなった。

また、突然の閉店発表はネット上では大きな話題となり、閉店を惜しむファンや、ニュースでウェアハウス川崎店を知った一般のお客さんなど大勢が連日押し寄せ、1か月に渡って店内は大混雑となった。

初めて川崎店を訪れた多くのお客さんは、独特な内装を背景に写真を撮影していたが、久しぶりに目にしたであろうレトロゲームを楽しんで行く人々も多かった。

発表以前は、それほどお客さんも多くなかったレトゲ部コーナーにもプレイヤーが溢れ、H氏は「複雑な心境です」とこぼしていた。

閉店を惜しむ多くのプレイヤーで溢れた3Fレトゲ部コーナー。(2019/11/2撮影)

これからのウェアハウスと、レトゲ部

本稿で紹介したように、これまでのレトゲ部の活動は2年足らずだが、ウェアハウス川崎店には、開店当初から基板やゲーム筐体を持ち込んでいた複数の常連客もいる。

同店で数々の貴重なゲームが楽しめたのは、こういった方々の厚意と陰の努力やメンテナンスがあったからだ。あらためてここに感謝の意を表したい。

同店で稼働していたゲーム筐体は、所有者によって今後の行き先が違う。筐体の所有者情報は非公開なため、ここでは触れられない。

店舗所有の筐体は、他のウェアハウス店舗で稼働する可能性がある。しかし、川崎店の閉店にともなう各種作業で、店舗担当者は多忙なため、直接の問い合わせはお控えいただきたい。

稼働タイトルはウェアハウス各店舗のホームページで公開されているので、情報更新を待っていただくのがいいだろう。

個人持ち込みの筐体は、それぞれ所有者が違うため、一概には言えないが、以下3つのパターンに分かれる。

・他のウェアハウス店舗に移動。
・所有者引き上げ(撤去)。
・他のゲームセンターへ移動。

気になる、レトゲ部の筐体たちの行き先は現在調整中とのことだ。
それぞれのタイトルのファンはレトゲ部Twitterアカウントをフォローして、今後の発表をお待ちいただきたい。

また、ウェアハウスは他にも多くの店舗があり、特に三橋店や草加店は、川崎店にも匹敵する外装・内装とアーケードゲームの稼働数を誇る大型ゲームセンターだ。

川崎店の閉店後も、お近くのウェアハウス各店舗に、ぜひ足を運んでいただきたい。

■WH川崎レトゲ部
Twitterアカウント
・連絡先メールアドレス: whkretrogame@gmail.com

■店舗情報(2019年11月17日付で閉店)
アミューズメントパーク ウェアハウス川崎店
住所 : 神奈川県川崎市川崎区日進町3-7
電話 : 044-246-2360(アミューズフロア)
営業時間 : 月~金曜 9時~23時45分/土・日曜・祝日 7時~23時45分
休み:なし
駐車場(無料):平面(店舗1階)48台/立体駐車場(平面駐車場奥)102台
ホームページ ※ウェアハウス全店共通

脚注   [ + ]

01. 三条CUEレトゲ部
奈良県奈良市のゲームセンター「CUE奈良三条店」3階レトロゲームコーナーに関する情報を発信するTwitterアカウント。https://twitter.com/CueRetog
02. エスカッション
この場合はゲーム筐体のブラウン管周囲を覆って保護する黒いカバーの部分のこと。

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