さあにん@山本直人の我が青春のテレビゲーム
目次
第十一回:テレビゲーム体験での最高傑作に出会った日(『クレイジーバルーン』1980年3月/タイトー)
ボタン操作が生み出す独特の操作感
レバー(ジョイスティック)という便利なインターフェースにゲームプレイヤーが慣れ、基本、テレビゲームは「レバー」で操作し「ボタン」で何かを起こす。それが基本になっていた時期。
『クレイジーバルーン』は、『バリケード』を思い起こすような「4つボタン」のコンパネで登場しました。
※前出の『タイトーメモリーズ 下巻』(PS2)の画面写真を見ていただくとわかるのだが、イメージイラストはかなりシュールで、怖い。TT(テーブル筐体)版は平べったいボタンで扱いやすかったのだが、アップライト筐体は大型のボタンで、操作性が悪かった。
どんな感じのゲームだったかは、下の画面解説を見ていただくとしまして、簡単に言えば、左右に規則正しく揺れる風船をコントロールし(コントロールの起点は、風船の持ち手部分になる)、ゴールへと導く。
そういうルールのゲームであります。
上下左右の移動だけでなく、2つボタンを同時押しすることで斜めにも進むことができます。
ステージクリアをすることに目的を見い出すゲーム性と戦略性
前述のようなシステムですと、ここにおジャマキャラが登場したり、風船が大きくなったりなどといった、機械的コントロールによる難易度上昇をかましてくるわけなのですが、この『クレイジーバルーン』は、風船を進めるステージそのもののバリエーションが変化する。
48の「仕掛けを施した」「異種のステージ」(まぁ、コースの流用はあるんですが)を用意していたのであります。
インベーダー系のシューティングも、ドットイート系のゲームも、一瞬たりとも気が抜けない……というのは確かでありました。
しかしそう言っても同じアルゴリズム、同じステージ構成ですので、自己流のパターンによってプレイヤーの側もアルゴリズム的に攻略することができました。
しかしこの『クレイジーバルーン』、自分のわずかな油断がミスを招くという、まさに一瞬たりとも気が抜けない。そんなゲームだったのであります。
何より悔しいのは「誰でもきちんとクリアできる」というところでした。
もちろん風船を進めるタイミング、ボタン操作の切り替え具合など、プレイヤーの腕や反射神経による部分はありますが、それでも「クリアできる」ようにステージが作られているところが、それまでのゲームとの違いとして特筆すべき点だったのであります。
つまりは「ゲーム開発者の視点」が、それまでとは真逆になったであろうということなのですな。
今でしたら写真や動画に撮って、ステージの研究をするところなのでありましょうが、当時はそれもなく。
プレイヤーは必死でステージ構成をメモに描き取り、自宅に持ち帰って研究を重ねる……。
そういった感じでプレイしておりました。
惜しむらくは、インターフェースのせいもあるのか、あまり人気が大きくは上がらなかったことであります。
私自身が高知で見かけたのも駄菓子屋ゲーセンを含む2、3軒でだけ。
しかも割と早く撤去されてしまいました。
考えてみれば当然のことで、プレイヤーを「ゲームオーバー」に追い込んではいないのですから、プレイ時間が必然的に長くなる。
いわゆるインカムが上がらないことに加え、マニアックなファンがついているので、腕も上がる。
さらにインカムが下がる。
まぁ、そんな感じの、お店にとっては負のスパイラルでした。
巧妙に施されたステージの仕掛けと緊張感
スコア競争についてもよく考えられていて、ステージの造りの基礎となっている「イバラ」(アスタリスクマーク)に、コースの難易度に応じた色づけがされており、通るコースによって進んだ時の得点が変わるようになっていました。
また、カウントダウン制のクリアボーナスも用意されておりました。
仕掛けも多く、「イバラが左右、上下に往復する」「浮島になっているコース上のイバラの塊が動く」「顔がステージ上に設置されており、風船(自機)が近づくと息を吹きかけて飛ばそうとしてくる」「ステージ全体が上下、左右に移動する」などなど、当時のテレビゲームの中ではバラエティに富んでおりました。
新しいステージに突入するたびに「次はどんな仕掛けが?」という楽しみを感じられたのであります。
「顔」が初めてステージに登場したのを見たときは
「何だ、これ?」
と思い、息を吹きつけられ、当然のミス。
ステージ全体の移動は、ゲーム開始と同時に動き始めるので、初めて目にしたときは驚いている間に、移動してきたイバラに触れてミス。
というように、かなり開発者の人の悪さが垣間見えるタイトルでもありました。
スタート地点にいても安全じゃないって……。
そしてこの『クレイジーバルーン』、私のテレビゲーム生涯の中で最も「心臓に悪いテレビゲーム」でありました。どこが心臓に悪いかというと、そう、ミスをして「風船が割れるときの音」であります。
一瞬たりとも気を抜けない、持続し続ける緊張感。
一応、休憩ポイントのような箇所もあるものの、わずかな操作ミスで風船はイバラに触れ、「パンッ!!」という音をたてて割れてしまうのであります。
プレイヤーに何の余韻も与えない、突然の出来事。
「しまった!」と思う間もなく、ただただ驚きと、唖然とするしかない。
で、その途切れた緊張感をあざ笑うかのように流れる「カルメン」の曲。
この頃のプレイヤーはどちらかというと「たったぁ~の3分、親子どん~」のCMのほうがなじみ深いでしょうな。
現行ゲーム機では遊べなく、また、遊べたとしてもコントローラーをかなり選ぶであろうタイトルでありますが、私の中ではナンバーワンのマイフェイバリットテレビゲームタイトル。
もし、遊ぶ機会がありましたら、心の臓に気をつけながらお楽しみいただきたいと思うのであります。
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