さあにん@山本直人の我が青春のテレビゲーム
目次
第十六回:あの頃「ニチブツ」は輝いていた(『ムーンクレスタ』1980年6月/日本物産)
なかなか年代が進まないこの連載ではありますが、まぁそれくらいあの当時は、現在進行形で生きている人間としては濃かったと思っていただけると幸いであります。
現状まだ、1980年(当時、高校2年生)の話が、月の前後はありながら続いているのですが、今回は1980年の総決算をお話ししたいと思います。
1980年のベストメーカーは「日本物産」だ!
レトロゲームというと何となく、大手の会社だったり、極端なマイナーな会社だったりが盛り上がることが多いんですが、実はこの1980年。個人的に、一番「スゴかった」会社というのは「ニチブツ(日本物産株式会社)」だと思うのであります。
とはいえ、その挙げられるタイトルは二つ。
みなさんご存知の『ムーンクレスタ』『クレイジークライマー』であります。
こう記すと「その2タイトルが同じ年!?」みたいな印象があるかもなのですが、はい。同じ年なのであります。
13の「マイコンがやって来た!」の画像にありますとおり、1981年のプログラム投稿時に、すでに自力で『クレイジークライマー』のようなものを私自身も作っておりました(だいぶアレンジして、けっこう良い出来に<自画自賛>してましたが)。
これもその時期のゲームとして堪能していた証でもあります。
このあたりを遊んでいた舞台は、現在も建物は残っているらしい、高知市の潮江中学校のすぐ近くにあった場所になります。
語り済みですが、なぜか「ニチブツ」のタイトルがメインで置かれていた場所で。テーブル筐体が5台くらいあったかなかったかの場所。
海賊基板も時にありました。『クレイジーコング』とかあったんじゃなかったかな。
ニチブツのものは純正だったんですがね。
マンガマニア(当時はまだオタクって言葉がないです)だった私は、交差点斜向かいの「西村書店」(だったと思う)が、追手前高校から自宅(南の丸町)に帰る際の立ち寄り場所でした。
西村書店さんには、定期購読的な取り置きでかなりお世話になり、書店店舗向けの「日販速報」(書店向けの新刊案内誌。よく書店に貼ってあるコミックスの月刊発売案内なんかが綴じ込まれていました。週刊。当然一般は購入できません)を購入させていただいていたり、「ぱふ」をはじめ、コミック新刊の取り置きをお願いしたり(そのうち勝手に取り置きしてくれるようになりましたが)で毎日立ち寄っていましたので、お店ができた当時は、本を買って、はす向かいでゲームを楽しむ。そんな感じだったのであります。
開店当初は『ギャラクシアン』の時代だったと記憶しております。
そのため『ムーンエイリアン』『ムーンエイリアンPart2』なんかで遊んでいました。
『ムーンエイリアンPart2』は、何のかんので『ギャラクシアン』のコピー系の中では好きだったタイトルなんですが、エネルギー制に辟易として、少し経ってからは遊ばなくなりました。
むしろ飛行軌跡が極端なコピー版のほうが遊んでいたと思います。
秀逸的アイデアが光る『ムーンクレスタ』
さて、そんな感じで、当初はそれほど気にしていなかったニチブツでありますが、その評価が大きく変わることになったタイトル、それが『ムーンクレスタ』なのであります。
『ギャラクシアン』の基板を使って開発されているので、色味やサウンドのイメージは似ているのですが、特徴的な点は3つ。
特徴的な点、1つ目。
ゲームの流れ(1ループ)が、敵キャラクタのリスト構成になっている
『ムーンクレスタ』に出現する敵は5種×2色の構成なのですが、その敵が決められた順に出現。
これを一巡させることで、1ステージがクリアという構成になっていました。
同じ仕組みのシューティングに『アストロファイター』(データイースト)がありましたが、『アストロファイター』の敵は、種類が違えど攻撃パターンが単調。地味であまり人気が出ませんでした(ただしフルカラーで、美しい画面だった)。
特徴的な点、2つ目。
途中、自機がドッキングしてパワーアップする
『ムーンクレスタ』はスタート時、3体の自機を所持しているのですが、これが1号機、2号機、3号機とそれぞれ異なるフォルムを持っています。
1号機は小型で敵の攻撃を受けにくいですが、単発のショット。3号機は大型で敵の攻撃を避けにくいものの、ツインショット。2号機は両方の良さを持っており、一番使い勝手が良いという特徴がありました。
この3体の自機、やられると次が登場……というわけでなく、ステージ途中に発生する「ドッキングせよ」イベントでのドッキングに成功すると合体し、性能がプラスされるという仕組みとなっておりました。
ドッキングのようなことを行うタイトル(エネルギー補充とか)は他にもあるにはありましたが、これがガッツリとゲームシステムに関わるというものは基本、なかったと思います。
ドッキングはしても、自機の当たり判定はそれぞれ独立しているというのも『ムーンクレスタ』のポイント。
1~3号機まで合体すれば攻撃はアップするものの、当たり判定が大きくなりすぎ非常に使いづらい。
このためドッキングのボーナスポイントを獲得したら、3号機をわざと破壊させるというのが王道手段でありました。
しかしここで別の機に当たってしまうとさあ大変。
1号機が破壊されたならまだマシなんですが、2号機が破壊され、1+3号機の状態なんかになるともう涙目。
あろうことか3号機のみになってしまった日には、そのプレイは投げる……なんて判断まであり得ました。
で、特徴的な点、3つめ。これは「効果音」であります。
勝手に聞こえる! 効果音を言語化する遊び
例えば、最初の敵である「コールドアイ」。
こいつを倒した際の効果音は「ガンバレヨ」に聞こえます。
3番目に出現する「フォーディ」。こいつを倒した際の効果音は、そのまま「フォーディ」に聞こえます。
4番目に出現する「メテオ」。飛来する際の効果音は「メテオーーーーー」と聞こえます。
そんなわけない? いやいや、聞こえるのです。
こうした「効果音」を勝手に言葉化するというのは、当時も今も、人間の変わらぬ習性でありましょう。
ましてやそこから流行語が生まれたりもするのであります。
プレイヤー同士がつぶやくことで、周囲に拡がり、やがてそれが「当たり前」になる。
そんな感じに「効果音」が言語化されるのは、当時の当たり前でありました。
さてこの効果音の言語化、同じく1980年のニチブツのヒット作『クレイジークライマー』にも当てはまります。
「いや、『クレイジークライマー』は普通に音声合成使ってたし」というアナタ。
『クレイジークライマー』最大の難敵である「ハズレ看板」にそれはあります。
看板が落ちてくる音、こう聞こえるはずです。
「カン バン バン ババーン」
ほうら、そう聞こえる。絶対聞こえる。
当時、友人たちとこう言って笑っていたわけなのですが、ある日まったく別の場所で同じように「カン バン バン ババーン!」とみんなで言っている高校生集団に遭遇し、「まさかこれって、全国区の言葉!?」などと唸ったのでありました。
ともあれ1980年は、『ムーンクレスタ』『クレイジークライマー』(1980年11月)がゲームファンの心を掴んだベストゲーム。
やがて訪れるナムコ旋風などまだ知らず、やれ「おじゃまマンの頭が禿げているから、滑ってつかまれない」だの「落とした植木鉢は別の階のおじゃまマンがちゃんと回収している」だの、よくわからない逸話を語りながら、16歳のゲームライフは過ぎていったのであります。
ちなみに『クレイジークライマー』は、当時最もハマったタイトルで、マイコン雑誌「I/O」に掲載されたマシン語のプログラム(ダンプリストで、16KBほどあったと思う)を、数時間で打ち込み(エラーは2箇所しかなかった)、みんなで遊んだり、#13で紹介しました「GAME」言語にて、CBM3032でメモリいっぱいのオリジナルプログラムを作って遊んだりと、プレイだけでなく、マイコンでもハマりまくったのです。
さて、今回最後にお知らせであります。
この連載「我が青春のテレビゲーム」を、同人誌としてまとめて頒布することになりました。
11月21日、東京ビッグサイトで開催される自主制作漫画誌展示即売会「COMITIA138」(https://www.comitia.co.jp)に出展いたします。
連載の文章に、注釈などの加筆、書ききれなかったタイトルの補足などを加え制作いたします。
詳細などはまた追ってお知らせいたしますが、みなさまのお越しをお待ちしております。
※画面写真、動画はNintendo Switch版、株式会社ハムスター「アーケードアーカイブス」シリーズより撮影しました。
『ムーンクレスタ』 ©2019 HAMSTER Co.
『クレイジー・クライマー』 ©2018 HAMSTER Co.